Occult Ludic Company2

れをん

1

 世界情勢の悪化から、武器の輸出による経済成長と共に、企業の財閥化が進んだ。武器だけでなく、傭兵も各戦場へと派遣される中、PMC(民間軍事会社)が爆発的に増えた日本。「自分の身は自分で守る」民衆の誰もが当たり前に考える世界となり数十年が経つ。財閥お抱えのPMCが自宅警備や要人警護、ホームセキュリティをするのが一般的となる。また、試験的ではあるが、ナノマシンの普及に伴い、医療技術や産業が著しく発展し始めている。


『――ナノドラッグの流通により、薬物対策係は相変わらず成果を出すことができていません。――宗教法人「友愛の会」の巨大な施設が完成しました――夢から覚めない奇病に迫ります――』

 天井のファンが空を切る音は、無機質なAIアナウンサーの音声がかき消す。世界各地のアンティークの装飾品は混沌としたようで、調和の取れた雰囲気を醸し出している。クラシックな雰囲気のカウンター、テーブル、椅子等の調度品は店主のこだわりを感じさせる。カウンターから一定のリズムで小気味の良い音が聞こえてくる。マスターがせっせとシェイカーを振る音が聞こえ、客たちはボードゲームに明け暮れる。ボードゲームバー『ユートピア』は今日も盛況しているようだった。

 

「ふんっ!」

 男の顔に拳骨が飛んでくる。

「甘い!」

 男は拳を避け、腕を掴み反動を使い投げる。

「!」

 投げられた男は体を捻り受け身を取る。

「やるね」

 拳を放った男は『千葉恵吾』くせ毛は汗で湿り、より目立っている。寝不足なのか、目の下には隈が目立つが、はっきりとした二重に茶色い瞳。やや長いまつ毛は憧れる女性もいるのだろう。柄物のドレスシャツの上にはベスト、紺色のスラックスを着用している。

 投げた男は『東雲祥貴』こちらも汗をかいているが、撫で付けられた金髪に特徴的な赤いアイシャドウ。瞳は青みがかった灰色の奥に紅の煌めき。白いスリーピースのスーツの下には黒いドレスシャツを着ている。左胸のポケットには黒いハンカチが花開いている。歌劇団のスター俳優のような派手な長身の男が立っていた。

 二人はユートピア地下の訓練場にて組み手を行っているらしい。

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Occult Ludic Company2 れをん @Leon0527

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