第41話 シナリオ通り

「おい、何か言うことはないのか?」

「そうですね。シナリオ通りに行けば、あなたはここで死ぬ運命です」


「そうかい」

 俺は急速に距離を詰め、彼の腹を殴りつけた。

「ウグゥ!!」

 その声は女のものではなかった。俺はすかさず乱打を加え、ルナウドの顔はぐちゃぐちゃに潰れ、やがて姿が消え去った。


 急いで宙吊りになっているルーネの紐を解く。だが、その瞬間、銃声が響き、空気が一変する。振り向こうとした瞬間、俺の身体に赤い血が広がっていく。振り返ると、ヴィルがよろめきながら魔銃を構えて立っていた。

「これでシナリオ通りだね」

 そう言って、ヴィルは姿を消す。


「零、れ、零!返事をしてください!!」

 ルーネが必死に俺の身体を揺さぶるが、声は遠く、意識が薄れていく。


 ――ふと目が覚めると、俺は真っ暗な空間の中にいた。

「おーい!」と叫んでも、返事はない。体の自由はあるが、俺は裸だった。


「おいおい、やられちまったのかよ。仕方ねえな」

 重たい声が響く。

「誰だ?」

「何って、悪魔だよ。悪魔神さ」

 姿を現したのは、黒い球体に蝙蝠の翼を持つ不思議な存在だった。


「はっ?これが悪魔神かよ……笑える」

 戻りたいと心から思っていたその時、悪魔神が口を開いた。

「悪魔との契約をしてみるか?そしたらお前を生き返らせてやるけど」

「何だって?一体何を差し出せばいいんだ?」

「お前の片腕だよ。俺がその腕に憑依するだけさ。その代わりに生き返らせてやる」


「いいだろう。悪魔とでも契約してやるさ」


「契約成立」


 ――目を覚ますと、ルーネが涙を流して俺の膝枕をしていた。気づいた彼女は、俺の口に唇を重ね合わせる。

 それは、長くもあり短くも感じる時間だった。

「生きていてよかった……」

「あ、ああ」

 俺は片腕を見ると、螺旋のような黒い模様が腕に刻まれ、影のように動いていた。


「いやあ、熱いねぇ!お二人」

 小さなダイヤ型をした何かが、蝙蝠の羽をはためかせながらキスシーンを眺めていた。

「えっ?これは……?」

「なんですか?これ?」

「えっと、悪魔神?」

「は?」


「おい、悪魔神って呼ぶのはやめろ」

 悪魔神が俺の耳元で囁く。

「こいつの名前はアックーだ」


「そ、そうなんですか?」

 ルーネはまだ信じていないようだったが、アックーのおかげで俺は生き返った。感謝はしなくてはならない。


「それで、お前の目的は何なんだ?」

 アックーに尋ねると、彼は「女神だ」と一言で答えた。

「なるほどな」


 アックーから与えられた命。これで女神への戦いは、まだ続けられる。

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