第40話 反逆者
次から次へと押し寄せてくる兵士たちを、俺は金属バットで吹き飛ばしていく。その反動で、他の兵士たちは怯んで攻撃してこない。だが、中には自分が強いと信じている兵士がいて、槍を持ってこちらに突き刺してくる。俺はその槍を軽く避け、横腹にバットを叩きつけ、薙ぎ払うようにして飛ばす。
だが、兵士たちは怯むことなく戦い続けていた。我が国を守るため、守護することが彼らの務めだからだ。一人の兵士が俺に問いかける。
「ここで何をしている?お前は何者だ?」
「俺か?そうだな、反逆者ってやつかな」
その言葉を聞くと、兵士は槍を握る力を強め、声を張り上げた。
「反逆者に罰あれ!!」
他の兵士たちも鼓舞され、気合を入れる声が上がる。
だが、俺にとってはただの雑魚だ。
「邪魔だあぁぁ!」
俺は金属バットを振り回しながら突き進む。兵士たちは道を開け、互いを守っていた陣形は崩れ去った。互いに誰かを盾にしようとしているのが見て取れる。
突き進んでいくと、全身鎧を纏ったマント姿の男が現れた。
やつは名乗った。
「私は、女神の名においてここに異世界転生した高橋正樹だ!国を滅ぼさんとする反逆者を倒すのが僕の使命だ!」
そう言いながら、彼は聖剣を振りかざし、俺に襲いかかってきた。俺はそれを軽く避ける。しかし、剣はまるで生きているかのように後ろから攻撃を仕掛けてきた。
「剣よ!」
高橋が告げると、剣は彼の手元に戻る。そして、今度は自身が剣を持って突進してきた。
俺は彼の聖剣を金属バットで受け止めようとするが、結果はわかりきっていた。聖剣の力に押され、バットが負けそうになる。
そこで俺は拳を握り、彼の鎧に殴りかかる。硬い。だが、俺の力なら……そう信じて拳を繰り出したが、鎧にはわずかな傷しかつかなかった。
「ぼ、僕の鎧に傷がついただと!?」
「はん、ご自慢の鎧に傷がついたくらいでビビるなよ!」
「これは女神様が作ってくださった鎧なんだぞ!!」
俺は金属バットをしっかり握りしめる。
「だからどうした?」
「身体強化」
一気に高橋のところまで迫り、バットを振り下ろす。鎧が砕けると同時に、彼の顔が見えた。中にいたのは三十代くらいの普通のおっさんだった。バットの衝撃で気を失って倒れ込む。
「くたばれ、弱者」
俺はそう言い残して階段を駆け上がる。
「どこにいる?」
迫りくる兵士の一人を捕まえ、質問する。
「おい、お前らの姫様は今どこだ?」
「ひ、姫は、王子を殺した罰として、高台で宙吊りにされています。そろそろ海に落とされる頃でしょう……」
兵士の言葉を聞いて、俺はすぐにその場を離れ、上の階を目指した。背後から聞こえる笑い声を無視して。
「ルーネ!」
高台にたどり着くと、ルーネが宙吊りにされていた。
「零、来てはダメです。私のことは気にしないで、狙いはあなたなんです!」
「やあやあ、初めまして、僕は――」
と言いかけたところで俺は遮った。
「変な小芝居はやめろ。クソ女神!!」
その顔が変わる。あの日見た、あの日誓った、あの屈辱を思い出す。
俺は金属バットを構える。女神の顔をした王子が剣を構える。
「おい、俺に何か言うことはないのか?」
「そうですね。シナリオ通りに行けば、あなたは死にますね」
「そうかい」
俺は急速に距離を詰め、女神の腹を殴りつけた。
「ウグゥ!!」
その声は、とても女の声とは思えない苦しげなものだった。
俺はさらにバットを構え直し、次の攻撃の準備をした。
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