第22話 天気がいいですねはテンプレ

 大きな門がそびえ立っていた。しかし、夜になると門は閉ざされ、俺たちはその辺りで野宿をすることになった。

「すいません。思っていたよりも、門が閉まるのが早くて」


「いいんだ。別にまた明日行けばいいだろう」


 焚き火を囲んで、互いに向かい合いながら座り込む。

 何を話せばいいか、わからない。天気の話でもしようかと思ったが、そんなのはテンプレで、話題に困った奴が使う常套句だと思っていた。しかし今、そのテンプレを使いたい自分がいることに少し苦笑する。


「あの……」互いの声がシンクロしてしまい、思わず少し照れてしまった。再び気まずい空気が流れる中、ルーネが笑いながら口を開いた。

「あはは、追っ手の件、ありがとうございました。言うのを忘れていました」

「別にお礼なんていらないさ。言っただろ、俺はあんたを守護すると」


 夜が深まる。焚き火の明かりの中、いい雰囲気の男女二人。俺は、これが何か特別な瞬間になるのではと少し期待していた。

「それでは、また明日。私は寝ますので、何かしたら……わかっていますよね?」

「あ、ああ……」と残念そうな俺。


「ばかっ」と小さな声が聞こえたような気がしたが、俺はそのまま深い眠りに落ちた。


「起きてください。零、零、もうっ!」

 パアンという音と共に、俺は目を覚ました。

「はっ! おはよう、ルーネ」

「早く街に行きましょう」


 再び門の前に立つと、門番が二人、欠伸をしながら暇そうに立っていた。

「通行料とそこの女、顔を見せろ」

「男もだ」


 俺たちは顔を見せ、通行許可が下りる。ルーネは通行料を二人分差し出し、俺たちは無事に門を通ることができた。


「あのさ、ルーネ、なんだか左頬が痛くてさ、知らないか?」

「さあ、知らないですよ。虫にでも刺されたのではないですか?」


 俺は疑わしげに左の頬をさすりながら、「回復」で癒すことにした。

 なんでそんなに怒ってるんだよ。理由がわからないが、彼女の態度には何か引っかかるものがあった。


「零、あれを見てください。屋台ですよ。私、初めて見ました」

「ああ、俺も初めてだ」


 歩いていくと、街の景色が色づいて見えてくる。行き交う人々、活気に満ちた店主の声、子供たちの無邪気に駆け回る笑い声が聞こえてくる。

 なんだか、この街は思ったよりもいい場所かもしれないな、と俺は感じ始めていた。

 しかし、街を歩いていると、暗い通路の奥に陰が見えた。そこには、暴行やカツアゲ、孤児たちがうずくまっている姿があった。

 この世界でも、そんな闇が存在するのだな、と俺は思った。表の活気と裏の闇、そのギャップが心に重くのしかかる。

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