第20話 奇襲作戦

 いまだにスティックを肌身離さず、すりすりしたり振り回して楽しんでいる。

 まるで子供のようだ。風を切り裂く音が聞こえる。ファサッと俺の横を切りつけ、風に運ばれているのは俺の髪の毛だった。


 嫌な予感はしていた。それは、俺以外が俺の武器を持つことでどんな恩恵を受け、どんな威力になるかがわからなかったためだ。


 シュン、と風の透明な刃が俺の後ろの木を切りつけた。その瞬間、木は薪のようにバラバラになっていた。俺も危うく薪のようになっていたかもしれない。


「なあ、もういいだろ?」

「いいえ、まだです。もう少しだけ」


 ガシッと俺は華奢な腕を掴むと、俺は宙に浮いていた。


「あっ、すいません」


 体術までできたのかよ。こいつ、と思いながら、打たれた場所を回数制限のある「回復」で処置する。


 相棒を返されて、ペコペコと謝られる。その上下運動により、俺の目は胸の揺れに釘付けになった。俺の視線に気づくと、彼女は慌てて隠す。

「あなたの職業は変態でいいですか?」

「ごめんなさい」


 刃を向けられ、思わず謝ってしまう。


 森の奥に微かな灯りが見える。あれはたいまつだろうか。進もうとしたその時、ルーネは茂みに身を隠す。


「追っ手の仲間がいます。ざっと見て四人ほどでしょうか?」


「なるほどね、ふーん、あいつらもたいしたことないわ」


「わかるのですか?あなたは一体?」


 鑑定者のおかげで、あいつらのひどいステータスは丸わかりだ。おまけにルーネのもな。ついでに見てしまった。許せ。


「私のことで、あなたを巻き込むわけにはいきません。ここから歩けば街に着きます。この一枚の金貨で宿一泊分ですので、それでは」


「まあ、待てって。俺は、あんたを守護するって言ったはずだぜ。作戦を考えよう。奇襲作戦だ。俺が囮になることで、ルーネ、お前があいつらを片付けんだ。強者であることをあいつらに見せつけてやるんだ」

「わかりました。では、武器を貸してください」


「貸せないって言いたいところだが、今回だけだぞ」


 そう、奇襲作戦は風の刃が飛んでくる作戦。

 どこからだ? いや、わからん……そこか? いや、違う。と言う間に敵はやられていると言う考えだ。

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