第19話 スティックはお気に入り
夜の森を二人で歩く。しかも、男女二人でだ。普通なら、夜道は危険がいっぱいだし、こうして一緒にいる状況ではやましいことが起きるかもと思うものだが、彼女はそんなことは一切気にしていない様子だ。まさか俺をお子様扱いしているのか?
「夜の方が移動しやすいですが、もし危険があった場合、魔物が出たら対処をお願いしますね」
「魔物?一体どんな魔物が出てくるんだ?」俺は興味をそそられて尋ねてみた。自然界では弱肉強食が当たり前だ。もし本物の強者が相手なら、そう簡単に襲ってくることはないだろう。そんなことを考えていると、突然茂みがガサガサと揺れた。
俺はすぐさまアイスホッケーのスティックを構え、ルーネを守るように前に立った。彼女も剣を抜き、すでに戦闘態勢を取っている。
出てきたのは、身長3メートルはある熊のような体に、ヤギの顔をした奇妙な魔物だった。鋭い牙と、まるで刃物のような爪が光っている。さらに、手にはべったりと血が付着していて、誰かを襲った後なのかもしれない。
「ふっ!!」
俺は、アイスホッケーのスティックを握りしめ、魔物の顎めがけて振り下ろす。スティックが見事にクリティカルヒットし、魔物は呻きながらその巨体を崩し、地面に倒れ込んだ。
「……はい?」
ルーネは驚いた顔でこちらを見ている。
「終わったぞ。さあ、何してる、行くぞ」
「あ、は、はい!」彼女は慌てて剣を収め、俺の後を追いかけてきた。
「あの、その剣は一体?どこで手に入れたのですか?どこかの名匠が作り出した魔剣か何かなのでしょうか?」ルーネは興味深そうに俺の武器を見つめながら尋ねた。
「ああ、これか。持ってみるか?」俺は軽く差し出した。
「いいのでふ、ですか!?」彼女は目を輝かせたが、勢い余って噛んでしまった。
俺は苦笑しながら、「今、噛んだな」と指摘した。
ルーネは顔を赤らめつつも、俺の武器を手に取り、その軽さと強さに驚いていた。「ぐっ、軽い、そしてしなやかで頑丈な刀身! あの……これ、わたしに譲っていただけないでしょうか?」
「いや、それはちょっと無理だな……」俺は困った顔をしながら答えた。「実は、これしか武器持ってなくてさ。だから、あげられないんだよ。悪いな」
本当は作れるけれど、今はまだいいだろう。そのうち作ってやるとするか、と俺は内心で思った。
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