第18話 街に行こう
「回復」
俺はすぐに彼女に治癒魔法をかけた。やりすぎたわけじゃない。彼女の力が強すぎたんだ。もし俺がまともにくらっていたら、間違いなく大事になっていただろう。実際、怪我をしていたのは俺のほうだった。
「はっ!」ルーネが目を覚ました。
「気がついたか。良かった、良かった。俺のスキルで吹き飛ばされてさ、あんな威力が出るとは思わなかったよ」
彼女はしばらく俺を見つめた後、静かに頭を下げた。
「まいりました」
「はい?」
「まいりましたと言ったのです。これからはあなたに従います」
「じゃあ、さっそくこの金の使い方を教えてくれよ」と俺は言ったが、彼女は真顔で首を横に振った。
「いえ、わたしが管理します」
「は?」
「あなたはお金の管理に疎いのでしょう? それなら、わたしが適切に使います」
「……じゃあ、この世界について教えてくれよ」
「もちろんです。わたしが道案内をし、その都度説明いたします」
「え?」
俺は思わず彼女の提案に呆然としてしまった。確かに勝ったはずなのに、主導権を握られているような気がしてならない。
「くそっ……やられた。最初からこれが狙いだったのか?」俺は心の中で呟いた。エロい身体してるくせに、しっかりしてやがる。
「では、この先の森を抜けると街に着きますので、行きましょう」と、彼女は淡々と進める。
俺は完全に流されている感じだが、街に行くためには彼女の案内が必要だ。とりあえずは従っておこう。
「その格好では街に入ることができませんので、この布を上から羽織ってください。あとから服はわたしが整えますので」
「いや、いいからさ。そんなに気を遣わなくて……」
「わたしは負けた者。弱者が強者に従うのがこの世界の常識なのでは?」彼女はきっぱりと言い放ち、俺に布を差し出す。
「おいおい……」俺は思わず苦笑いを浮かべたが、彼女の真剣な眼差しに負けて布を受け取ることにした。
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