第17話 新たな出会い
俺は、もったいないと思いつつも、せっかくの食料を地面に落とし、両手を挙げた。
「わたしの質問に答えてください。答えなければ……わかっていると思いますが、剣を使います」
「わかった、わかったよ。落ち着け」
彼女は鋭い目で俺を見つめたまま、さらに問い詰めてきた。
「あなたは、わたしを追ってきた仲間の一人ですか? それとも、本当に脱獄したと言っていましたが、どうやって脱獄を?」
俺は深く息をつき、少し考えてから答えることにした。
「全部倒してきた。脱獄は一人でやったんだ。嘘っぽく聞こえるかもしれないけど、大切な友を失った……これで信じてくれるか?」
彼女は剣を構えたまま、じっと俺を見つめた。瞳の中にはまだ警戒心が残っているが、どこか迷いも見えた。俺の言葉が彼女に届いているのかどうか、それはわからないが、俺は嘘をついていない。
「……わかりました。一応、友を失ったということで信じてみましょう。あなたの名前は?」
「零だ」
「零……れいというのですね。わたしはルーネ・フィン・カルネミラールと申します」
彼女は、まるで貴族か何かのように美しい所作でお辞儀をしてみせた。
「お嬢様か何かなのか?」
「わたしのことを知らないのですか?」
「いや、知らない」
ルーネはしばらく考え込んでいたが、何かを言おうとしてまた、考え直すように黙り込んだ。
「こほん……互いに干渉しすぎないほうがいいかもしれませんね」
「ああ、まあそれでもいいさ。それより、この世界のことを教えてくれるとありがたい。お礼は……そうだな、あんたを守護するってのはどうだ?」
「あなたが、わたしの守護を? 本当に強いのですか? 強そうには見えませんが……」
ルーネは少し不安げな顔をして、俺をじっくりと見定めるように見つめた。
「試してみるか?」俺は挑戦的に微笑んだ。
「あなたが私よりも強いとは思えませんけど」
「じゃあ、賭けてみるか。弱者か強者か、もし負けた方が、勝者の言うことを聞く弱者になる」
「いいですよ」ルーネは自信たっぷりに頷いた。
ルーネは鋭い眼差しで、完璧な構えを見せている。その姿には一切の隙がなかった。一方の俺は、構えることなくただ立っているだけだ。
「構えないのですか?」彼女が不審そうに問いかける。
「いつでもどうぞ」
俺は余裕たっぷりに応じた。勝ち確だ。勝負はすでに決まっている。ルーネの剣が光を帯び、閃光のように風を切って突進してきた。そのスピードはまさに光の矢。しかし――
「復讐!」
俺が一言放つと同時に、彼女の体がまるで何かに押し返されたように、宙を舞った。
「ぐはあぁぁっっ!」
彼女は自らの力に押され、大木に激突した。木は大きな音を立てて崩れ、そこにいた鳥たちは一斉に飛び去っていく。彼女の圧倒的な攻撃も、俺には通用しなかったのだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます