第11話 新たなスキル

 妹と俺は、あの日、永遠の別れをすることになった。彼女はまだ幼かったが、運命の流れには逆らえなかった。事故で命を落としたのだ。その瞬間から、俺の人生は一変した。両親は互いを責め合い、罵り合う日々が始まり、最終的には離婚という形で家庭が崩壊していった。俺はその過程を傍観することしかできなかった。


 離婚後、俺は祖父母に引き取られることになったが、環境は決して良くなかった。むしろ、さらに冷たいものだった。祖父母は俺のことを快く思っていないようで、家にいても居心地の悪さしか感じられなかった。俺の存在自体が彼らにとっては負担でしかなかったのかもしれない。彼らの厳しい目線と冷たい言葉に、俺は次第に心を閉ざしていった。


 しかし、祖父母の息子――俺の叔父だけは違った。彼は俺に対して少なからず優しさを見せてくれた。時折、彼は俺をかばってくれたり、こっそりとフライドチキンを食卓から持ってきてくれたりした。その時の喜びは今でも鮮明に覚えている。ジューシーな肉の味、パリパリとした皮の食感、あれは俺にとって数少ない幸せな記憶の一つだ。フライドチキンは、あの辛い日々の中で俺が唯一心から喜べた瞬間だった。


 しかし、子供にとって大人は絶対的な存在だ。俺はそのことを痛感していた。フライドチキンをくれた叔父も、次第にその優しさを見せなくなっていった。大人の世界には大人の事情があり、それに逆らうことは難しいのだろう。フライドチキンをくれたあの日を境に、叔父はもう何もしてくれなくなった。


 そんな日々が続く中、ある日、誰かの通報によって俺は養護施設に預けられることになった。家庭というものを失い、施設で過ごすことになった俺は、自分が孤立していることをますます感じるようになった。家族の温かさなど知らずに育ち、次第に心の中に深い闇が広がっていった。


「はっ!」


 突然、俺は目を覚ました。体がびくりと反応し、心臓が激しく鼓動を打っている。どうやら昔の夢を見ていたようだ。あの辛い過去、悪夢のような日々を、再び夢の中で思い出していた。心の奥底に封じ込めていたはずの記憶が、今ここで甦ってきたのだ。


 だが、今の俺は違う。過去に縛られるような弱い自分ではない。俺はすでに、何も奪われることのない強さを手に入れている。この世界で生き延びるための力を。


 俺は手を握ったり開いたりして、ここが現実であることを確かめた。手の感触、周囲の空気の冷たさ、すべてが現実だ。これは夢ではない。目を覚ましている。そう確認してから、俺は再び立ち上がった。


 進むにつれて、不死者アンデッドの数が増えていく。腐った肉体がうごめき、こちらに向かって手を伸ばしてくる。その姿はまるで悪夢そのものだ。だが、俺は恐れることなく前へ進む。


 ふいに、頭の中に声が響いた。


「スキル:殺戮者ダストロイヤーを会得しました」


 殺戮者……。そんな称号を得たところで、今の俺には何の感慨もない。不死者が何体現れようとも、俺がすることはただ一つ。進み続けることだ。止まるわけにはいかない。俺の使命はまだ終わっていないのだから。


 武器もそろそろ限界が近い。刃にはひびが入り、手に持つ感触も鈍くなってきた。だが、それでも進むしかない。俺には進む理由がある。女神を討つために、そしてヴィルの無念を晴らすために。俺は歩みを止めるわけにはいかないんだ。


 不死者たちが次々と迫りくる中、俺は一歩一歩、確実に前へ進んでいった。

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