【百合ショートストーリー】「月光に濡れる花びら」

藍埜佑(あいのたすく)

【百合ショートストーリー】「月光に濡れる花びら」

 朝靄の中、薄紫色の光が窓から差し込み、二人の寝顔を柔らかく包み込んでいた。まず目覚めたのは葉月。慎重で几帳面な性格の彼女は、長い睫毛を優雅に瞬かせながら、隣で眠る恋人の椿の姿に目を細めた。椿の艶やかな黒髪が真珠色のシーツの上に美しく広がり、その光景は一幅の絵画のようだった。


 葉月は、いつもの習慣通り、椿の頬に軽く触れた。その指先で、椿の肌の柔らかさと温もりを感じながら、心地よい幸福感に包まれる。「椿、起きる時間よ」と葉月は囁いた。その声は、朝の静寂を破ることなく、優しく空気に溶けていった。


 椿は夢見心地でゆっくりと目を開け、にっこりと微笑んだ。その笑顔は、まるで朝露に濡れた花が開くかのようだった。「おはよう、葉月。今日も早いのね」椿の声は、まだ眠りの名残を留めて甘く響いた。


 二人は正反対の性格だった。

 葉月は計画的で内向的、椿は自由奔放で社交的。しかし、その違いこそが二人をより強く引き付ける磁石のような力を持っていた。葉月の慎重さが椿の冒険心を抑え、椿の明るさが葉月の内面を照らす。そんな二人の関係は、まるで陰と陽のバランスのようだった。


 薄明りの差し込む寝室で、葉月はゆっくりとベッドから体を起こした。シーツの擦れる音が静寂を破り、椿の耳に届いた。葉月の動きに気づいた椿は、まだ眠気の残る目を半開きにして、恋人の姿を追った。


 葉月は優雅に立ち上がり、近くの椅子に掛けてあった薄手のシルクのガウンに手を伸ばした。その動作は滑らかで、椿の目には美しく映った。ガウンを手に取る葉月の指の動きは繊細で、椿はその仕草に見とれた。


 シルクの布地が葉月の肌に触れる音が、かすかに部屋に響いた。ガウンが葉月の体を包み込む様子を、椿は熱心に見つめた。薄い生地越しに透ける葉月の肌の輪郭に、椿の心臓が高鳴った。


 椿は葉月に向かって腕を伸ばした。その仕草には甘えと切なさが混ざっていた。「もう少し一緒にいてよ」と椿は言った。その声は少し掠れており、まだ眠りの残滓を感じさせた。


 葉月は椿の方を振り向いた。朝の柔らかな光が葉月の横顔を照らし、その美しさに椿は息を呑んだ。葉月の唇が優しく弧を描き、微笑みが広がった。その表情に椿の胸が温かくなった。


 葉月はベッドに近づき、椿に向かって身を屈めた。椿は葉月の髪から漂う甘い香りを感じ、その香りに包まれた。葉月の吐息が椿の肌に触れ、小さな震えが椿の体を走った。


 葉月の唇が椿の額に触れた。そのキスは柔らかく、温かかった。椿はその感触に目を閉じ、幸福感に浸った。キスの後、葉月の唇が椿の耳元まで移動するのを、椿は感じ取った。


「朝ごはんの準備をするわ。すぐ起きてね」と葉月は囁いた。

 その声は低く、甘美で、椿の耳に心地よく響いた。葉月の言葉に、椿は小さくうなずいた。


 葉月が身を起こすと、椿は名残惜しそうに腕を下ろした。ベッドから離れていく葉月の足音を、椿は注意深く聞いていた。部屋を出ていく葉月の姿を、椿は最後まで目で追った。


 ドアが静かに閉まる音がし、椿は深いため息をついた。葉月の残り香が部屋に漂い、椿はその香りを深く吸い込んだ。ベッドに横たわったまま、椿は目を閉じ、先ほどまでの葉月との温もりを思い出した。その記憶は鮮明で、椿の体は再び熱を帯びた。


 椿は葉月の言葉を思い出し、ゆっくりと体を起こし始めた。朝の光が徐々に強くなり、新しい一日の始まりを告げていた。椿は葉月の待つキッチンへ向かう準備を始めた。二人の朝がまた、愛に満ちた時間になることを、椿は確信していた。



 朝日が差し込むキッチンで、葉月はトーストを焼いていた。パンの香ばしい香りが部屋に広がり、食欲をそそった。突然、背後から椿の腕が葉月の腰に回された。椿の体が葉月の背中に密着し、その温もりが葉月の肌を通して伝わった。


 葉月は椿の腕の柔らかさと強さを同時に感じ、心地よさと安心感に包まれた。椿の胸が葉月の背中に当たり、その柔らかな感触に葉月の呼吸が乱れた。椿の吐息が葉月の首筋にかかり、その温かさと湿り気に葉月は身震いした。


「昨日の夜は素敵だったわね」


 椿の囁きは、葉月の耳元で甘く響いた。その声は低く、少しかすれていて、葉月の心臓を高鳴らせた。葉月の頬が熱くなり、その熱さを自覚した。


 葉月は椿の言葉に、昨夜の記憶が鮮明によみがえるのを感じた。二人の肌が触れ合う感覚、互いの吐息、そして愛し合う喜びが蘇った。葉月の体が熱くなり、心臓の鼓動が早くなった。


「もう、恥ずかしいわ」


 葉月はそう言ったが、その声には甘さが混じっていた。葉月は椿の腕の中で体をくねらせ、より椿の体に密着した。椿の腕の力が少し強まり、葉月を引き寄せた。


 椿の香水の甘い香りが葉月の鼻をくすぐった。その香りは花の蜜のように甘く、葉月の感覚を刺激した。葉月は深呼吸し、椿の香りを肺いっぱいに吸い込んだ。その香りは葉月の頭を少し朦朧とさせ、昨夜の余韻をよりいっそう強めた。


 椿は葉月の首筋に唇を寄せ、そっとキスをした。葉月はその感触に身を震わせ、思わず小さな声を漏らした。椿の唇の柔らかさと湿り気が、葉月の敏感な肌を刺激した。


 葉月は振り返り、椿の顔を見つめた。椿の瞳は朝の光を受けて輝き、その中に愛情と欲望が混ざっているのが見えた。葉月は椿の唇を見つめ、その色つやの美しさに見とれた。


 椿は葉月の唇に自分の唇を重ねた。二人の唇が触れ合い、その柔らかさと温かさに互いが陶酔した。キスの味は甘く、二人の舌が絡み合うにつれてその甘さは増していった。


 葉月の手が椿の髪に絡み、その柔らかさと滑らかさを感じた。椿の手は葉月の背中を撫で、その感触に葉月は身を震わせた。二人の体が密着し、互いの体温と鼓動を感じ合った。


 キッチンには二人の吐息と、時折漏れる小さな声だけが響いた。トーストの香ばしい香りと椿の甘い香りが混ざり合い、独特の雰囲気を作り出していた。



 朝食を食べながら、二人は今日の予定を確認し合う。葉月は図書館で司書として働いており、椿はフリーランスのイラストレーターだ。テーブルの上には、葉月お気に入りの藤の花模様の食器が並び、椿が描いた水彩画が飾られた壁を背景に、二人の朝の光景は絵本の一場面のようだった。


「今日は新しい絵本の原稿の締め切りなの」と椿が言うと、葉月は心配そうな表情を浮かべた。椿のふわふわとしたパジャマ姿に目を細めながらも、葉月の眉間にはかすかな皺が寄る。


「大丈夫?無理しないでね」


 葉月の声には、深い愛情と心配が滲んでいた。


 椿は葉月の手を取り、優しく微笑んだ。その手には、椿お気に入りのローズゴールドのリングが輝いていた。


「心配しないで。あなたがいてくれるから、私は何でもできるんだから」


 椿の言葉に、葉月の心は温かさで満たされた。


 出勤前、二人は玄関で軽くキスを交わす。葉月のネイビーのスーツと椿のカラフルなワンピースが、二人の個性を物語っているようだった。「行ってきます」「いってらっしゃい」という言葉の交換には、言葉以上の愛情が込められていた。その瞬間、二人の間に流れる空気は、まるで桜の花びらが舞うように柔らかく、甘美なものだった。


 仕事中、葉月は椿からのメッセージに微笑む。「お弁当、美味しかったよ💛 愛してる」スマートフォンの画面に映る文字が、まるで椿の声が聞こえてくるかのように感じられた。

 昼休みに、葉月は返信する。「私も愛してるわ。頑張ってね」キーボードを叩く指先に、椿への想いを込めた。



 夕暮れ時、帰宅した葉月は台所で夕食の準備を始める。そこへ椿が帰ってきた。


「ただいま!」元気な声と共に、椿は葉月に抱きついた。椿の体からは、仕事場の木の香りと、彼女お気に入りのジャスミンの香水が混ざった独特の香りがした。「うわぁ、いい匂い。今日は何?」


「あなたの好きなハンバーグよ」葉月は笑顔で答えた。その笑顔は、まるで月光に照らされた蓮の花のように清らかで美しかった。


 夕食を食べながら、二人は今日あった出来事を語り合う。椿の話し方は大袈裟で面白く、身振り手振りを交えながら話す姿は、まるで一人芝居を見ているようだった。葉月は時々吹き出しそうになりながら聞いていた。椿の表情豊かな話し方と、葉月の控えめな反応が、絶妙なハーモニーを奏でていた。



 食後、葉月と椿は共に浴室へ向かった。湯気が立ち込める中、二人は静かに服を脱いだ。葉月は椿の姿を目に焼き付けた。椿の肌は真珠のように白く、曲線美が際立っていた。椿も葉月を見つめ返し、その細やかな体の線に見惚れた。


 浴槽に足を入れると、温かい湯が二人を包み込んだ。湯の温度は心地よく、肌に触れるとじんわりと体が温まっていくのを感じた。椿が葉月の隣に腰を下ろすと、お湯が揺れ、二人の肌が触れ合った。その接触に、小さな電流が走ったかのような感覚があった。


 浴槽から出ると、椿は葉月の背中を優しく洗い始めた。スポンジの柔らかな感触が葉月の肌を撫で、心地よさと共に、椿の優しさを感じた。葉月は目を閉じ、椿の動きに身を委ねた。椿の指が葉月の肩に触れると、その温もりと優しさに葉月は小さく息を呑んだ。


 次は葉月が椿の髪を洗った。シャンプーの香りが立ち込め、清々しい香りが二人を包んだ。葉月の指が椿の頭皮をマッサージすると、椿は気持ちよさそうに目を閉じた。泡を流す時、水が椿の顔を伝う様子に葉月は見とれた。


 湯に浸かりながら、二人は静かに寄り添った。肌と肌が触れ合い、互いの体温を感じ合う。椿は葉月の肩に頭を乗せ、葉月は椿の腰に腕を回した。湯の中で二人の体が溶け合うような感覚があった。


 浴室に満ちる湯気と、二人の吐息だけが聞こえる静寂。時折、湯の音がかすかに響く。椿は葉月の首筋に唇を寄せ、その香りを深く吸い込んだ。石鹸の香りと葉月本来の香りが混ざり合い、椿を陶酔させた。


 葉月は椿の髪を優しく撫でた。濡れた髪の感触が指先に伝わり、その滑らかさに魅了された。椿の肌の質感、その温もり、すべてが葉月の感覚を研ぎ澄ませた。


 湯気の立ち込める浴室で、葉月と椿は互いの目を見つめ合った。言葉を交わさなくても、二人の間には深い理解と愛情が流れていた。葉月は椿の瞳に映る自分の姿を見つめ、その中に無限の愛を感じ取った。椿も同様に、葉月の目に宿る感情の深さに心を奪われていた。


 二人の体が湯の中でゆっくりと近づいていく。肌と肌が触れ合う瞬間、小さな電流が走ったかのような感覚が全身を駆け巡った。葉月は椿の腰に手を回し、椿は葉月の首に腕を巻きつけた。湯の温もりと相手の体温が混ざり合い、心地よい熱が体中に広がっていった。


 唇が近づくにつれ、互いの吐息が顔にかかる。その温かく湿った感触が、二人の感覚を一層高めた。ゆっくりと、でもためらいなく、唇が重なった。最初は柔らかく、優しい接触。しかし、すぐにその口づけは深まっていった。


 椿の唇の柔らかさと甘さに、葉月は陶酔した。椿は葉月の唇の形と動きを味わい、その感触に魅了された。二人の舌が絡み合い、新たな快感が全身を駆け巡る。キスの味は甘く、そして少し塩味がした。湯の味と二人の唾液が混ざり合い、独特の味わいを生み出していた。


 キスが深まるにつれ、二人の呼吸は乱れ、心臓の鼓動は激しくなった。その音が水面に反響し、二人の耳に届く。葉月の手が椿の背中を撫で、その滑らかな肌の感触を楽しんだ。椿は葉月の髪に指を絡ませ、その柔らかさと湿り気を感じ取った。


 湯の中で二人の体が密着し、互いの曲線が重なり合う。柔らかな胸の感触、腹部の温もり、太ももの滑らかさ。全ての感覚が研ぎ澄まされ、相手の存在を全身で感じ取っていた。


 キスの合間に漏れる小さな声が、静かな浴室に響く。それは快感と愛情が混ざり合った、言葉にならない感情の表現だった。二人は互いの顔を手で包み、指で頬を撫でた。その優しい触れ合いに、深い愛情と信頼が込められていた。


 やがて椿は唇を葉月の首筋から鎖骨へと滑らせていった。葉月の肌の香りと味わいに酔いしれながら、ゆっくりと下へと移動する。葉月の胸元に辿り着いた椿は、一瞬躊躇したが、葉月の静かな吐息を聞いて安心した。


 椿は優しく葉月の左胸に唇を寄せた。柔らかな肌の感触を味わいながら、中心へと近づいていく。葉月の乳首に到達すると、椿はそっと舌で触れた。その瞬間、葉月の体が小さく震えるのを感じた。


 椿は慎重に、でも確実に乳首を口に含んだ。柔らかく、しかし明確な刺激を与えながら、舌で優しく愛撫する。葉月の乳首が固くなっていくのを感じ、椿はさらに情熱を込めた。


 そして、椿は歯を立てた。強く噛むのではなく、優しく、ほんの少しだけ圧力をかける。葉月の身体が弓なりに反り、小さな喘ぎ声が漏れた。椿はその反応を感じ取りながら、さらに丁寧に、愛情を込めて葉月の乳首を愛撫し続けた。


 葉月は椿の髪に指を絡ませ、その感覚に身を委ねた。快感と愛情が混ざり合い、全身が熱くなっていくのを感じる。二人の呼吸が徐々に荒くなり、心臓の鼓動が激しくなっていった。


 この瞬間、二人は深い愛情と情熱に包まれ、互いの存在だけに集中していた。周囲の世界は消え去り、二人だけの空間が広がっていった。刹那、この空間で、二人は完全に一つになっていた。湯と共に、二人の愛もまた深く、温かく、そして尽きることなく溢れ続けていた。



 二人はリビングのソファでくつろぐ。椿が葉月の膝に頭を乗せ、葉月は椿の髪を優しく撫でる。椿の髪は絹のように滑らかで、その感触を楽しみながら、葉月は幸せな気分に浸った。


 「ねえ、葉月」椿が突然言った。その声には、懐かしさと甘美さが混ざっていた。「私たちが出会った日のこと、覚えてる?」


 葉月は懐かしそうに微笑んだ。その表情は、古い写真を見るときのような柔らかさを帯びていた。「ええ、もちろん」



 梅雨の季節、しとしとと雨の降る日だった。図書館で働いていた葉月は、突然の雷鳴と共にずぶ濡れで飛び込んできた椿と出会った。


「すみません、傘忘れちゃって」と言う椿に、葉月はタオルを差し出した。椿の濡れた髪から滴る雫が、まるで宝石のように輝いて見えた。


 その親切な行動に椿は心を奪われ、それから毎日のように図書館に通うようになった。椿は様々な口実を設けては葉月に話しかけ、二人の距離は少しずつ縮まっていった。


 数週間後、閉館後の図書館で二人きりになった時、椿は勇気を出して告白した。夕暮れの柔らかな光が差し込む図書館の中で、二人の姿は影絵のように美しく浮かび上がっていた。


「葉月さん、私……あなたのことが好きです。付き合ってください」椿の声は震えていたが、その瞳には強い決意が宿っていた。


 葉月は驚いたが、自分の心の中にも同じ気持ちがあることに気づいていた。静寂の中で、二人の心臓の鼓動だけが響いているようだった。


「私も……椿さんのことが好きです」と答え、二人は初めてのキスを交わした。その瞬間、世界中の時間が止まったかのようだった。


 その半年後、椿が葉月の部屋に遊びに来た時のこと。窓の外では、夏の終わりを告げる風が吹いていた。


「ねぇ、葉月」椿が真剣な表情で言った。「一緒に住まない?」その言葉には、未来への希望と不安が混ざっていた。


 葉月は少し考え込んだ後、優しく微笑んだ。その表情は、まるで月の光のように柔らかく輝いていた。


「ええ、いいわ。一緒に暮らしましょう」


 引っ越しの日、二人で新しい家具を選び、部屋を飾りつけた。椿のセンスと葉月の実用性が見事に調和した空間が完成した。初めての夜、二人はベッドに横たわり、手を繋いだ。指と指が絡み合う感触に、二人は新しい生活への期待を感じていた。


「これからもよろしくね、葉月」


 椿の声には、幸せと少しの緊張が混ざっていた。


「ええ、これからもよろしくお願いします、椿」


葉月の返事は、静かな決意に満ちていた。



「あの日、傘を忘れて良かったわね」


 椿が言うと、葉月は優しく頷いた。二人の目には、懐かしい記憶の光が宿っていた。


「私たちの出会いは、まるで運命だったみたい」


 葉月の言葉に、椿は深く同意するように頷いた。


 椿は葉月の手を取り、そっと唇を寄せた。その仕草は、まるでガラスの置物を扱うかのように繊細で優しかった。


「葉月、一緒に住み始めてからもう2年か。早いわね」

「ええ、でも毎日が幸せよ」


 葉月は椿を抱きしめた。二人の体が寄り添うと、それぞれの体温が混ざり合い、心地よい温もりになった。


 夜が深まり、葉月と椿はベッドに横たわった。月の光が窓から差し込み、二人の肌を銀色に照らしていた。葉月は椿の瞳を見つめた。その瞳は深い森のように美しく、中に宇宙が広がっているかのようだった。椿も葉月を見つめ返した。葉月の目は静かな湖のようで、その中に自分の姿が映っているのが見えた。


 二人の呼吸が同調し、互いの息遣いを感じ取れるほど近づいていた。葉月は椿の体から漂う甘い香りを嗅ぎ、それは花畑にいるような心地よさだった。椿は葉月の髪から香る清々しい石鹸の香りに包まれ、安らぎを覚えた。


 葉月は指先で椿の頬を撫でた。椿の肌は滑らかで柔らかく、触れるだけで電気が走るような感覚があった。椿も葉月の顔に手を伸ばし、その肌の質感を味わった。葉月の肌は絹のようで、触れているだけで幸福感に包まれた。


 二人の唇が近づき、そっと重なった。葉月は椿の唇の柔らかさと温かさを感じ、全身に快感が広がった。椿は葉月の唇の形と動きを感じ取り、心臓が激しく鼓動した。キスの味は甘く、二人はその味わいに酔いしれた。


 周囲の音が消え、二人だけの世界が広がった。しかし、互いの鼓動は鮮明に聞こえ、その音が二人の耳に心地よく響いた。葉月は椿の髪に指を通し、その感触を楽しんだ。椿は葉月の背中に手を回し、その温もりを全身で感じ取った。


 葉月は椿の肌の香りと感触を味わい、その感覚に陶酔した。椿は葉月の首筋に唇を這わせ、その滑らかさと温かさに魅了された。二人の体が触れ合う度に、新たな快感が生まれ、それが全身に広がっていった。


 キスが深まるにつれ、二人の手が相手の体を探り始めた。葉月の指が椿の首筋をなぞり、鎖骨へと移動する。その触れ合いに、椿は小さく震えた。椿も葉月の背中を優しく撫で、その滑らかな肌の感触を楽しんだ。


 唇を離すと、二人は互いの目を見つめ合った。そこには深い愛情と欲望が混ざっていた。葉月は椿の耳たぶに唇を寄せ、そっと舌で触れた。椿は息を呑み、首筋に電気が走るような感覚を覚えた。


 椿は葉月の胸元へと顔を下げ、柔らかな曲線に沿ってキスを落としていった。葉月の胸の柔らかさと温もりを感じながら、ゆっくりと中心へと近づいていく。乳首に到達すると、椿は優しく舌で愛撫した。葉月は小さな喘ぎ声を漏らし、椿の髪に指を絡ませた。


 葉月も負けじと椿の胸を愛撫し始めた。指先で優しく撫で、時折軽く摘むように刺激を与える。椿の反応を見ながら、葉月は自分の動きを調整していった。


 二人の手は互いの腹部へと移動し、その平らな面をゆっくりと撫でた。筋肉の動きを感じ取りながら、さらに下へと手を滑らせていく。


 太ももに到達すると、二人は一瞬躊躇したが、すぐに互いのアイコンタクトで確認し合った。優しく、しかし情熱的に、二人は最も敏感な部分を愛撫し始めた。


 葉月と椿は互いの反応を見ながら、動きを調整していった。時に優しく、時に強く、相手が喜ぶ場所と方法を探り当てていく。喘ぎ声と吐息が部屋に満ち、二人の体は汗で輝いていた。


 葉月と椿は互いの体を探索し続けた。葉月の指が椿の首筋を滑り、鎖骨をなぞる。椿は息を呑み、「ああ、そこ……」と小さく漏らした。葉月は椿の反応を見て、さらにその場所を丁寧に愛撫した。


 椿は葉月の耳たぶに唇を寄せ、そっと舌で触れた。葉月は「んっ……」と声を上げ、体を小刻みに震わせた。その反応に椿は「ここが感じるのね」とささやき、さらに集中して耳を愛撫した。


 葉月の手が椿の胸に触れると、椿は「あぁ……葉月……」と甘い声を上げた。葉月は椿の胸の柔らかさと温もりを感じながら、乳首を優しく摘んだ。椿の背中が弓なりに反り、「もっと……」と懇願した。


 椿も負けじと葉月の胸を愛撫し始めた。指先で乳輪を円を描くように撫で、徐々に中心へ近づいていく。葉月は「椿……そんなに焦らさないで……」と息を荒げた。椿はにっこりと笑い、「もう少し待ってね」と言いながら、さらにゆっくりと愛撫を続けた。


 葉月の手が椿の腹部を撫で下ろしていく。椿の肌の滑らかさと、筋肉の動きを感じ取る。へそのあたりで円を描くように撫でると、椿は「くすぐったい……でも気持ちいい……」と目を細めた。


 椿の指が葉月の太ももの内側を這い上がっていく。葉月は息を呑み、「椿……そこ……」と声を震わせた。椿はさらに指を進め、最も敏感な部分に到達した。葉月は「あぁ……」と深い声を上げ、椿の肩に顔を埋めた。


 葉月も椿の秘所に手を伸ばし、優しく愛撫を始めた。椿は「はぁ……葉月……すごい……」と喘ぎ、腰を動かし始めた。二人の動きが徐々に同調していき、互いの快感が高まっていった。


「椿……好き……」


 葉月がささやく。


「私も……葉月が大好き……」


 椿が返す。


 二人の吐息が混ざり合い、肌と肌が触れ合う音が部屋に響く。汗の匂いと二人の体臭が混ざり、独特の香りを醸し出していた。


 葉月と椿は互いの反応を見極めながら、愛撫の強さと速さを調整していった。時に優しく、時に激しく、相手が最も感じる場所を丁寧に愛撫する。


「あぁ……葉月……そこ……」

「椿……気持ちいい……」


 二人の声が混ざり合い、快感の波が押し寄せる。葉月と椿は互いの目を見つめ合い、そこに深い愛情と欲望を見出した。二人は完全に一体となり、この瞬間だけに集中していた。

 全身を通して愛し合う二人は、完全に一体となった感覚に包まれた。それは単なる肉体的な快感を超えた、魂の触れ合いのようだった。


 時間の感覚を失いながら、葉月と椿は互いの存在だけに集中した。この瞬間、この場所で、二人は深い愛情と情熱に包まれ、かけがえのない時間を過ごしていた。


 時間の感覚が失われ、二人は永遠とも思える瞬間を共有した。互いの吐息、体温、触感、香り、味わい、全てが混ざり合い、二人を包み込んだ。葉月と椿は完全に一体となり、この上ない幸福感に包まれた。


 月の光が二人の姿を優しく照らし続け、その光の中で葉月と椿は愛を確かめ合った。言葉は必要なかった。全ての感覚が研ぎ澄まされ、互いの思いが体を通して伝わっていった。この瞬間、この場所で、二人は完全に一つになったのだった。


「おやすみ、愛しているわ」


 葉月がささやいた。その言葉は、夜の静けさの中で、かすかに響く鈴の音のようだった。

「私も愛してる、おやすみ」


 椿も返した。その声には、深い愛情と安らぎが滲んでいた。


 月明かりが二人を優しく包み込む中、彼女たちは安らかな眠りについた。その寝顔は、まるで眠れる森の美女のように美しく、平和だった。明日もまた、愛に満ちた一日が始まるのだ。二人の愛は、永遠に続く物語の一ページを紡いでいくのだった。


(了)

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【百合ショートストーリー】「月光に濡れる花びら」 藍埜佑(あいのたすく) @shirosagi_kurousagi

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