最終話:異類婚姻譚(いるいこんいんたん)
それから数ヶ月、千春さんの保護のもとジョリーのお腹の中の赤ちゃんは
すくすく育ち、彼女は大きなお腹をかかえて家の中をうろうろしていた。
出産の時、当然産婦人科にも行けないだろうからって、アダルト・フェラが
コシュマールヴィルから悪魔の助産師さんを連れて来てくれることになった。
アブゼルたちは赤ちゃんが生まれたら、また来るって言ったのに人間界にやって
来れるようになったのをこれ幸いと、ちょくちょく人間界にやって来るように
なった。
アブゼルたちは人間界に興味深々だった。
暇さえあれば、人間界にやって来ては街へ繰り出していった。
街に繰り出す時、駐車禁止の場所にコンバーチブルを止めたりしていたので
おまわりに駐車違反キップなんか切られた。
でも、悪魔にそんなものは通用しない・・・なんの意味もなかった。
街中で彼らを見かけた人たちは、とくに何にも思わなかったようだ。
普段からでもコスプレして歩いてる人や、奇妙な化粧してる人が、普通に
いたりするからだろう。
顔色の悪い人が、街でうろうろしていたところで誰も彼らに関心がなかった。
みんな、人のことなどにかまってられないくらい忙しいのだ。
人間界も世知辛い世の中だ。
他人に関心を寄せるより自分のことだけで精一杯と言うことなんだろう。
ところで、ジョリーのお腹が五ヶ月くらいになって、もう流産の心配が
なくなったとたんに好人はジョリーと、せっせとエッチしていた。
好人が我慢できないのかと思ったらジョリーがしたがったみたいね。
妊娠期間中くらい我慢できないのかって話。
だけど旦那の浮気が多いのもこの時期・・・妊娠中の禁欲は体によくないからね。
さてふたりの赤ちゃん・・・
とうとう出産日から二日遅れてだけどジョリーは元気な女の子の赤ちゃんを産んだ。
ふたりにとっての小さな未来。
人間と悪魔のハーフなんてどんなのって思うだろうけど、ジョリー自体悪魔だけど
人間とあまり変わらないわけだから、産まれた女の子はどこから見ても人間の
女の子・・・髪の色がどうなるかは伸びてみたいと分からない。
好人は、思った・・・この子も大人になったらジョリーみたいにエッチが
好きな子に育つのかなって、そう思うと憂鬱になってため息が出る好人だった。
自分はとっととジョリーとエッチしておいてね・・・。
で、いつの間にか好人の耳鳴りはすっかり治っていた。
もう二度と耳鳴りに悩まされることはなくなっていたのだ。
悲しい出来事は、日が過ぎるごとにいつのまにかいい思い出に変わって行くもの。
本当ならジョリーは永遠にコシュマールヴィルに帰れないところだったんだが
アブゼルがコンパーチブルで人間界に来るようになってしまったので
ジョリーはいつでもコシュマールヴィルに帰ることができるようになった。
めでたしめでたしなのかどうかは分かりませんけど・・・
ジョリーは時々ホームシックにかかると、ふいってコシュマールヴィルに
帰っていたみたいで彼女は好人がいても赤ちゃんがいても家庭に収まる
ような性格の女じゃないから、いつでも自由でいたかったようだ。
好人もジョリーも、キスやハグはよくしていたけど、考えてみたら今まで
お互いを「愛してる」って一度も言ったことがなかった。
でもジョリーは好人のことを、食べちゃいたいくらい愛してたし好人も自分の
愛しい人「悪魔」は未来永劫、彼女しかいないって思ってた。
離婚が多い日本の夫婦と違って、好人とジョリーは
さてと・・・こんな前代未聞な話って、あるんですね、世の中には・・・。
誰も知らないないだけで・・・。
人間と悪魔の夫婦がいるなんて信じてる人がいないだけでね・・・。
おしまい。
コシュマールヴィルのフォレッタ。 猫野 尻尾 @amanotenshi
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