第2話 アカリとクライ
「おはよう、クライ。珍しくぐっすりだったね」
目が覚めると、アカリが顔を覗いてきた。
「…あぁ、おはよう…。なんか疲れちゃってて…」
「ふふ、無理もないよ。あいつらから逃げまくった上に、いっぱい歩いたもんね。移動するのももう少し休んでからにしよっか」
「ありがと、アカリ」
ここは、天界と呼ばれる天使が住む世界。
天使の中には、召使として神に雇われる者もいれば、負の感情から生まれる〝堕天使〟もいる。
堕天使は、他の天使に害を与えるとされ、発見次第殺される。
そんな世界の中、堕天使の僕・クライは生き続けている。
8歳まで匿って育ててくれたお母さんのおかげでもあるし、ずっと今まで双子の兄として僕を守ってくれたアカリのおかげでもある。
僕たちは毎日、他の天使から逃げ回る生活を送っている。
「見つけたぞ!」
後ろから大きな声が聞こえる。
「…げっ、朝から見つかるなんて今日はついてないなぁ。クライ、立てる?」
「うん、大丈夫。逃げよ」
手を繋いで走り出した。
…が、急に体に力が入らなくなり膝から崩れ落ちてしまう。
「…っ!?」
「クライ、大丈夫か!?」
「お、ほんとに効いたぞ!堕天使にしか効かないっていう麻酔銃」
…まずい、眠くなってきた。
ここで寝たら、アカリは…
「ほら天使の方のガキ、今逃げれば命だけは助かるぞ?…それとも、今この場で弟と一緒に死ぬか?」
アカリは、無言でうつむく。
「…アカリ、逃げて」
「!?クライ、何言って…」
「アカリだけでもいいから、幸せに生きて」
「…っ、クライ…」
「よぉよぉ、どーしたヤロー共」
声がした方に振り向くと、そこには白衣を羽織りフードを被った子どもがいた。僕たちより身長が低い。
「…おいそこのガキ、邪魔するならお前も殺すぞ」
「ハッ!殺せるもんなら殺してみろ、この俺様を!」
すると白衣の子どもはボケットから瓶を取り出して、それを大人に向けて投げた。
瓶は思いっきり割れ、中から煙が出てきた。
大人はその煙を吸った瞬間、その場に倒れ込んだ。どうやら眠ったようだ。
「おい、そこの黒い奴」
返事をしようとするが、まだ麻酔が効いているのか、頭がうまく回らない。
「様子的にお前、麻酔銃撃たれたんか?ちょっと待て、治したる」
するとアカリが僕の前に立って言った。
「君、誰なんだよ。僕らを狙ってるのか」
白衣の子どもはぽかんとした顔をしたあと、大声で笑った。
「あっはっは!ダイジョーブ、俺様は思えたちを傷つけるつもりはねぇ。なんせ俺様は堕天使だからな」
子どもがフードを取って頭の輪っかを見せびらかした。…その輪っかは、黒色だった。
「これで信じてもらえるか?」
そう言いながらクライの腕に注射器を刺す。するとクライの顔色が良くなってきた。
「そんでさぁ、ちょっと手伝ってほしいんだけど」
「…手伝い?」
「そ。黒い方の堕天使の体質。そんでそっちの白い方の体質を調べさせてほしいんだ。お前ら双子だろ」
「そうだけど…てかその呼び方やめて!僕はアカリでこっちがクライだからね」
「りょーかい。ちなみに俺様はアンマ。じゃ、ついてきてくれる?」
「え、どこに?」
アンマはニヤッと笑って言った。
「俺様たちのアジトさ」
堕ちこぼれヒーロー おきのきお @okino-kio
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。堕ちこぼれヒーローの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます