第二章・あなたといつもいられたなら5ー③

「お、お許し下さい。決して、悪気があって視ていたのではなく、私は貴方をお慕いして……」


「これはまだ、本人ギルには言っていないが、兄である貴方へは伝えておく」


「は、はい」


「さっき、治癒して改めて確信した。貴方の弟ギルバートと私は、自然の摂理で結ばれている」


「は?」


「恐らくは、何度生まれ変わっても巡り合う縁で繋がった、運命の相手だ」


「そ、そんな……」


「私がこの地で目的を果たした後、ギルには求婚するつもりだ」


ブランドンは言葉を失っていた。

その姿を、アダムは注視する。

見透かす力はあまりない自分にも、その心中を察せられた。


ブランドンの心の中には、闇が渦巻いていた。

自分には、魔力があるのに。

末っ子ジェレミーのように、天才的な頭脳がある訳でもない。

弟には、何の力もないのに。

自分の方が見合っているのに。

この人アダムを支えるなら、自分の方が相応しいのに。


アダムには、ブランドンのその思考が文字で浮き出ているかのように視える。

 だからこそ、今ここで妙な感情を抱かれる前に、切り捨てるつもりだった。


「その時には、兄の貴方には……」


「でしたら、ギルバートの兄である私に、魔力を高める指導をして下さい」


「……それはもう、聖殿で習って来た筈では?」


「多くの人々を助ける為には、まだ学び足りないのです。貴方なら魔導の教師よりも……」


「私と貴方とでは、魔力のタイプが違う。教えても身にはならないだろう。それに私は人に教えるのは苦手だ」


「でもっ……」


「強過ぎる魔力は、己の身を滅ぼすだけだ。貴方も私のように封印されたくなければ、誤った力の使い方には気を付けた方が良い」


「……一度も……呼んで下さいませんね。私の名前を」


そのブランドンのセリフは、聞こえてはいた。

だが、自分に気のある相手に、寸分の情もかけるつもりはない。

アダムはそれに応えず、席を立ち、振り返る事なく出て行った。

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あなたと共に死ねるなら 梅之助 @pspakotan

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