第?話「戦争」

 僕はミリカ様のお世話に尽くして三ヵ月に及ぶ。その時点で僕も目的がすでに達成されていることから、彼女のお世話を辞退させてもらった。それがきっかけで彼女との接触はなくなり、いつでも魔術教団を乗っ取る準備は出来ていたのである。


「へぇ? ボスの娘を殺す算段が整っていた? それは興味深いわね?」


「だろ? 実は彼女の懐で様子を窺っていたところで、強さの秘訣が分かった。ミリカ様は日頃から常に風で身体を包み込む作用を利用している。それも風を身体に纏うことで、攻撃を緩和させた上で衝撃を抑えているんだ。そこで僕はその弱点を知ったのだよ」


「それって何かしら?」


「風で抑えている部位に連続で集中攻撃を加えて分散させる。そして同じ箇所に攻撃が続くことで、そこだけが脆くなる。そこで防御が薄くなったところに全力で攻撃に出るんだ。どうだ? これで崩せるだろ?」


「簡単だね? それなら私にだって出来るよ」


「そこで魔術教団の新たな幕開けを迎えよう。我らに付いて来る勢力を集めるぞ」


「オーケー。戦争って訳だね?」


「そうだ。これは組織に革命をもたらす戦いだ」


 そうやって僕は魔術教団をさらに良くするため、自分の勢力が集まったところで、全面戦争を仕掛けたいと思っていた。僕にとって今の組織は大した戦力にもなっていないと思っている。そこで僕が真のリーダーとなることで、さらなる変化を組織にもたらすのであった。


 そして僕は術師の勧誘を進める。それもこちら側の戦力に引き入れることを目的にしていた。本格的に戦争で勝利を収めるための勢力を集めに入っていると、そこで僕に付いて来る術師が揃う。


「集まったな? これは組織に改革をもたらすための戦いだ。挑戦状ならとっくに送って置いた。そこで相手はこの戦いに備えてミリカを投入して来るだろう。ミリカは僕が仕留めるから、みんなは雑魚を一掃してくれ」


「オーケー! 血が騒ぐぜ!」


「やってやろうじゃん! 俺は闇斗に付いて行くぜ!」


「この勢力なら正直に言うと怖くない。きっと勝てるよ」


「それでは早速本部を壊滅させるぞ? 戦争開始だ!」


「「「「おおー!」」」」


 そうやって僕の集めた勢力は団結を見せた。そこでまずはミリカの相手を僕がすることで主戦力を討ちに行くのだ。最後にボスを倒せれば、僕たちの勝ちになる。これはどっちが先に壊滅するのかで勝敗は決まるのだった。


「いけぇ!」


 この時に備えて仲間は強化させた。密かに実施した強化訓練で僕らは強くなっている。そんな僕たちにボスたちの勢力はどこまでやれるのかが問題だった。


「引きずり出すか?」


 僕はそこで目を眩ませる技でまずは自身のエネルギー補給を施す。それも相手側にとって致命的にも繋がるだけの技を僕を発動させた。


「暗中展開!」


 僕はそれを発動することで、自身から半径十キロメートル先までを闇で覆い尽くす。そこで広がった暗闇に呑まれた瞬間にボス側の勢力は機能しなくなった。そして僕はすぐに広がって行った闇を身体に取り込んだ。そこから取り込ませた闇の限りを尽くして波動をぶっ放した。それは視界が塞がれた相手を半分も蹴散らすほどの威力を誇る。強化訓練で鍛えたことによって、僕の放った波動に巻き込まれた半数が死に至った。


「どうだ? 後は【暗中展開】を解くことで、こちらも攻めて行くよ!」


 僕は【暗中展開】の解除と共に味方側の術師を攻めに向かわせた。およそ半数が倒された相手の陣地には死体が転がっている。そこで僕が先頭に立って攻めて行くのだった。


「さぁ! 組織を明け渡してもらおうか!」


「させねぇよ! お前の企みに乗るか!」


「だったら死ねよ!」


 僕が取り込んだ闇で強化させた拳で相手を殴り付ける。それによって後ろの方に向かってぶっ飛ばすと、それを食らった一人の術師が他者を巻き添えにすることで、相手の勢力を削った。それによって僕たちが勝利するのは目に見えている。


 そして本部の中にまで侵入すると、そこでいよいよ幹部が立ちはだかった。


「よぉ? どうやら死にたくて攻めに来たのか?」


「はぁ? お前が俺に勝ったことなんてあったっけ?」


「うるせぇんだよ! さっさとボスの前で謝罪して死ね!」


 僕の前に立ち塞がった術師は単純に弱い。それもこれまで僕が彼に手こずったことなんてなかった。そこで僕はそいつに術式を展開させる前に倒す。


「これでも食らいな?」


「速い⁉︎」


 闇を取り込んだことによる身体強化によって間合いを詰める速度を上げた。これで相手は僕の動きに付いて来ることは出来ない。そして一瞬のうちに拳が彼の腹部に打ち込まれた。そしてそのまま後ろにいる術師に向かって吹っ飛ばす。これで後ろまで吹き飛ばされた術師が他の仲間に直撃して僕が波動を放出することで消し飛ばした。


「これで最後だ。ボスはこの奥にいるはずだよな?」


「させない。ここは私が相手よ?」


「ミリカじゃないか? 残念だけどお前ならすでに攻略できている」


「そう? なら死になさい!」


 彼女が衝撃を伴った風を吹かせると、それを僕は波動で対抗した。そして同威力がぶつかり合うことで、それらは打ち消される。それを見たミリカは僕が以前よりも強くなっていることに気付いた。そこで彼女は戦慄する様子を窺わせる。しかし、僕にとってはそれでも彼女は始末しないといけない人間に分類していることから、容赦なく殺しに行った。


(こいつは僕が最も警戒している人物だ。しかし、すでに倒す術は知っている。そこで念を入れて【暗中展開】で視界を遮断する手に出るか?)


 僕はすぐに【暗中展開】を発動させると、辺りが真っ暗になってミリカの視界が遮られた。真っ暗の中でも僕にしたらすべて見通すことが出来ることから、ミリカを捉えるのは簡単である。そして暗くなった空間の闇を身体に取り込むと、すぐに彼女の弱点を攻撃した。そこは顔面だが、そこは最も弱い部位であることから、風によるダメージの緩和は施されていることは想定済みだ。しかし、僕がどこを攻撃するかなど分からない状況下にいる彼女はそこのガードが緩む瞬間だった。


「そこだぁ!」


(想定通りだ。風でガードを固めてある。しかし、破れない程度でもない!)


 僕は最大出力の波動を顔面に触れる手前から放つと、それによってミリカは大きく後ろに吹っ飛ばされた。それが上手く決まったことで、ミリカの顔面からは大量の出血が起こり、このままでは死に至るのも時間の問題である。


「放っておけば死ぬ。けど、念入りに行かなくちゃな?」


「うわぁぁぁ⁉︎」


 痛みに襲われて泣き叫ぶ少女を前にするのも可笑しな話だ。しかし、僕たちは犯罪集団であり、慈悲を与える隙を見せない時だってあるのが当然だ。このまま生かしておけば、またいつ自分に立ち塞がるか分からない存在を何で見逃さないといけないのか疑問に思った。なので、僕は最後にポケットから取り出したナイフでミリカを刺殺する。それによって息の根が止まったミリカはそれ以上の声は上げなかった。


「はははっ! これで最後だな? ボスにはどうやって死んでもらおうか?」


 これは僕が一人でも成し得たことかも知れない。こんなに弱い奴らなど、この先で正規術師に潰されない保証は出来ないのだ。そこでこれからは僕の手で操ると決めた。しかも僕に賛同して来た術師は多く存在する。だからこそ、僕が支配する世の中に染め上げるのだと決めていた。


「チェックメイトだ。さらばボス!」


 僕は中に入ると、そこには意外な姿があった。


「んぅ? まさか自殺したのか? 殺し損ねたな? まぁ、良い。いさぎよく死ぬのは悪いことじゃない」


 そうやって戦争は終結した。後は死体を見付けた一般市民がすぐに警察が呼ぶことは分かっている。なので、即座に僕は仲間に向かって指示を出した。ボスの死を告げるのと同時に僕の指示で引き上げることにする。


 そして僕たちは組織の情報が流れないように細工してから本部を捨てた。念入りに潰しておくことで僕はボスが残した財産を手に入れると、後は集めた仲間を散らすだけであると判断する。勢力を分散させて術師であることを隠すと同時に自分の居場所を知られないようにするのだった。


「これからは僕をボスと呼びなさい。真のボスに相応しい実力だって有している僕なら、この組織を纏め上げることが出来る。そこで僕では納得しない奴らがいるなら相手したいと思う。すべては実力で決まる組織だと思ってくれ。だから、僕を殺せるだけの実力があるなら、新たなボスとして任命しても構わない」


「なるほど。でも、さすがに存在しないでしょ。貴方は術師の中でも最強と謳われあ存在よ? 容易く死なれては困るわ」


「この僕がそう簡単に死ぬと思うか? 心配しなくても大丈夫だ。僕に従っていればすべて上手く行く」


「さすがに頼りになるわね? 私は貴方に付いて行くわ」


 そんな風に僕は魔術教団を手に入れた。魔術教団で真のボスになった僕の企むことは決まっている。この日本を支配下に置くことだった。それだけが僕にとって重要な意味を成すことであると思えてしょうがなかった。そして僕は日本に最強の術師として君臨するのだ。それにはあの天真を始末する必要があった。なので、僕の手で彼を葬った後で作戦を決行することに決めたのである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

ウィザードエデンズ シャチマくん @mukuromukuromukuro

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ