第48話 妻よ
#### 花沢城の攻略
不老不死の薬を見つけた勝頼立ったが、元亀元年1月、武田勝頼と彼の軍勢は花沢城の攻略に乗り出した。この城は周囲を山に囲まれた戦略的要所であり、武田家にとっては重要な拠点であった。勝頼は巧妙な策を練り、周囲の山々から攻撃を仕掛けることにした。
「敵の動きを封じ、城を囲むんだ!」勝頼は部下たちに指示を出し、素早く行動を開始した。数日間の包囲戦の後、彼は城内の食糧が尽きるのを待って、突撃を敢行した。武士たちは士気を高め、激しい戦闘の末、花沢城は陥落した。
「これで我らの勢力圏が広がった。次は清水袋城を築こう」と勝頼は満足げに言った。新たな拠点を持つことで、武田家は海に面した地域を手に入れ、武田水軍を編成することができた。
勝頼は母・三条殿の病気を治すために、帰路を急いだ。彼はその道中で数々の試練に直面した。
彼の心の奥では、母の容体が悪化していることを知っていた。急いで帰路につくも、道中の困難や敵の妨害により、思うように進めなかった。
#### 三条殿の死
1570年7月28日、勝頼が帰還する前に三条殿は静かに息を引き取った。享年50。彼女は武田家の支えであり、勝頼にとっては大きな存在だった。病に苦しみながらも、家族を守り続けてきた三条殿の姿を思い出すと、勝頼は涙がこぼれそうになった。
「母上、私は帰ってきた。薬も…」勝頼は力なく呟き、手にしていた薬を見つめた。しかし、その薬はもう彼女の元には届くことがなかった。
#### 悲しみの中の決意
三条殿の葬儀が行われる中、勝頼は心の中で決意を固めた。母の死を無駄にするわけにはいかない。彼は家族を守るため、武田家の名を継ぎ、より一層の努力をすることを誓った。
「母上のためにも、私がこの家を守ります!」彼は涙を流しながらも、強く心に誓った。母の思いを胸に、勝頼は新たな戦いに向けて動き出すのだった。
#### 新たな戦いの始まり
勝頼は、母の死を乗り越え、武田家の再建を目指していく。彼の心には、三条殿の教えがしっかりと根付いていた。これからの戦いは母のためでもあり、武田家の未来のためでもあった。彼は新たな仲間たちと共に、強固な信念を持って武田家を支える道を歩んでいくのであった。
#### 徳川との激闘
同年8月、勝頼は駿河に攻め入る決断を下した。信玄は黄瀬川に本陣を置き、軍勢を分けて韮山城の攻略を試みた。敵の防衛は堅く、勝頼の軍はなかなか城を落とせなかった。
「この城の防御は強固だ。何か策を考えなければ…」と勝頼は考えた。彼は一時的に撤退し、周囲の情報を集めることにした。地元の民から得た情報を元に、夜襲を仕掛けることを決めた。深夜、月明かりの中、彼の軍は韮山城に迫った。
しかし、敵もまた警戒を強めており、激しい戦闘が繰り広げられた。武田軍は奮闘するも、城を落とすことができなかった。
#### 秋山虎繁の挑戦
その後、元亀元年12月、武田家臣の秋山虎繁は徳川氏に攻め込む機会を狙っていた。彼は連合軍の動きを事前に察知し、小田子合戦において攻撃を仕掛けた。彼は一瞬の隙をついて突撃し、徳川軍を混乱に陥れた。
「ここが勝負所だ!」と虎繁は叫び、全力で敵に突撃した。しかし、織田・徳川連合軍の士気は高く、次第に反撃に転じた。虎繁は数度の攻撃を試みるも、連合軍の戦略と連携の前に敗北を喫した。
「ここまでか…」虎繁は悔しさに胸を締め付けられながらも、撤退を決意した。彼の敗北は武田家にとって痛手であったが、勝頼はその結果を受けて冷静に考えた。
#### 新たな戦略
勝頼は、敗北を糧に次の戦略を練り直すことにした。彼は武田水軍の力を生かし、周辺の海上交通を掌握しようと考えた。これにより、徳川との戦いでも有利に進めることができると信じていた。
「次は海から攻め入る。敵の意表を突くことが重要だ。」勝頼は決意を新たにし、武田家の再起を図るために戦略を練り続けた。彼の目には、再び勝利を収める姿が映し出されていた。
失礼しました。三条殿は武田信玄の母ではなく、彼の正室(妻)ですね。訂正して、物語を描き直します。
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**浜名湖北岸、武田信玄の陣営にて**
三方ヶ原の戦いに勝利し、越年のため軍を止めた武田信玄は、陣中の静寂の中でひとり深い思索にふけっていた。戦の激しさの中で、彼の心には常に妻である三条殿のことが影のように付きまとっていた。戦場での喧騒が収まると、その想いはますます彼の胸を締めつける。
その夜、冷たい風が陣幕を揺らし、信玄はいつものように寝台に横たわっていた。しかし、彼の耳元でかすかな声が響いた。
「晴信…」
目を開けると、そこには妻・三条殿の姿が浮かび上がっていた。彼女の姿は幽霊のように朧気で、その目にはどこか悲しみが宿っていた。
「三条殿…なぜこのように私の前に現れるのだ?」
信玄は心の中で問いかけたが、口から言葉は出なかった。三条殿は何も言わずに、ただ彼を見つめ続けた。彼女の姿は、現世の夫としての信玄を責めるものではなく、彼に何か伝えたいような切実な眼差しだった。
**数日後、野田城の戦いの前夜**
信玄は三河への侵攻を進め、野田城を包囲していた。城は堅牢で、攻め落とすには相当の労力がかかると予測されていたが、信玄はこれまでの戦功に自信を持っていた。しかし、戦の準備を進める中で、再び三条殿の幽霊が彼の前に現れた。
「晴信、これ以上進んではならない…」
その声はかすかで、風に乗って消え去るようだった。信玄は一瞬動揺したものの、戦の最中に感情を乱されるわけにはいかないと、自らを奮い立たせた。しかし、三条殿の言葉は彼の胸中に深く残り、何か不吉な予感が彼を捉えていた。
翌日、信玄は野田城を陥落させることに成功したものの、三条殿の霊の警告が現実のものであったかのように、彼の体調は次第に悪化していった。
**3月、岩村城にて**
信玄は岩村城に秋山虎繁を入れた後、再び三条殿の姿を見た。彼女は変わらず、悲しげな表情で信玄を見つめ続けていた。信玄はようやく気づいた。彼の行く末には、戦場での勝利だけではなく、家族との絆や、愛する人々の想いを犠牲にしてきたことが影響しているのではないかと。
「私は、何を成し遂げたのだろうか…」
信玄はその夜、つぶやくようにそう語った。妻・三条殿の霊は再び消え去り、彼は戦い続ける運命に従うしかなかった。
その後、信玄は体調不良により戦場から撤退し、間もなくその命を落とす。三条殿の幽霊が彼に語りかけた言葉は、ただの幻覚であったのか、それとも彼の未来に対する警告であったのか、真実は彼の心の中に永遠に封じ込められたままになった。
こんな大河ドラマが見たい③ 『武田信玄の夫人、三条殿』 鷹山トシキ @1982
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