パタヤの巨大タコ焼き伝説 ~タコと生きる男・山田太郎の奇妙な冒険~
中村卍天水
タコ焼き愛が世界を変える!パタヤ発、伝説の冒険譚
西暦2074年、タイのパタヤ。日本人の70歳のロングステイヤー、山田太郎は、毎朝の釣りを日課にしている。太郎は関西出身で、たこ焼きをこよなく愛する老人だ。彼の口癖は「タコ以外の生き物は、全部タコの餌や!」
ある朝、いつものように釣り竿を担いでビーチに向かう太郎。
「よっしゃ、今日こそでっかいヤツを釣るで!」
太郎が釣り糸を垂らしてまもなく、竿がグイっと曲がった。
「おっ、来たで!」
しかし、太郎の予想をはるかに超える重さだった。
「なんやこれ?クジラでも釣れたんか?」
水面から現れたのは、なんと直径3メートルもある巨大なタコだった。
「うわっ!なんやねんこれ!」
タコは触手を伸ばし、太郎に襲いかかってきた。
「ちょ、ちょっと待て!ワシはお前を食うんや!逆やないか!」
太郎は咄嗟に周りを見回し、ビーチに落ちていたビーチパラソルを手に取った。
「よっしゃ、かかってこい!」
太郎vsタコの壮絶な戦いが始まった。太郎はビーチパラソルを盾のように使い、タコの触手を払いのけながら、時折パラソルの先端でタコを突いた。
「えいっ!そりゃっ!」
「グワァァ!」(タコの鳴き声)
30分にも及ぶ死闘の末、太郎はなんとかタコを仕留めることに成功した。
「ふう、やれやれ。さてと、こいつをどうしよ...」
太郎は目を輝かせた。
「そうや!たこ焼きにしたろ!」
太郎は巨大タコを引きずりながら、自宅に戻った。幸い、日本から持ってきた特大たこ焼き器があった。
「よっしゃ、いくで!」
太郎は丹精込めてたこ焼きを作り始めた。小麦粉、だし、卵...そして主役の巨大タコの身。
「ほんまに焼けるんかな...」
不安を抱えながらも、太郎は黙々と焼き続けた。3時間後、ついに完成。
「さあ、食べてみよか...」
恐る恐る口に運ぶ太郎。
「うまっ!こ、これは...」
太郎の目が点になった。想像を絶する美味しさだったのだ。
「なんやこれ!こんなうまいたこ焼き、生まれて初めてや!」
その日から、太郎は「放射能たこ焼き屋」を始めることにした。看板には「世界一うまい!巨大たこ焼き」と書かれている。
噂を聞きつけた観光客が押し寄せ、太郎のたこ焼き屋は大繁盛。しかし、巨大タコの肉はすぐに底を突いてしまった。
「こりゃあかん、もっと釣らなあかん!」
太郎は毎日のように海に出て、巨大タコを探した。しかし、なかなか見つからない。
「もしかして、あいつ1匹だけやったんか...」
がっかりする太郎。そんなある日、いつものように釣りに出かけた太郰は、水面に異変を感じた。
「ん?なんやこれ...」
突如、水面から現れたのは、前回の比ではない超巨大タコだった。直径10メートルはあろうか。
「うわぁぁぁ!」
太郎が驚いている間もなく、超巨大タコは太郎を丸呑みにしてしまった。
「たす..けて...」
太郎の声も虚しく、超巨大タコは海中へと姿を消した。
パタヤのビーチには、太郎の釣り竿だけが残されていた。
...
3日後、パタヤの海岸に奇妙な物体が打ち上げられているのが発見された。
それは...なんと、巨大なたこ焼きだった!
驚いた地元の人々が近づいてみると、たこ焼きの中から声が聞こえてきた。
「た...たすけて...」
人々がたこ焼きを割ってみると、中から太郎が出てきたのだ!
「や...やっと出られた...」
太郎は状況を説明した。超巨大タコに飲み込まれた彼は、タコの胃の中で必死に生き延びようとしていた。そんな中、太郎は胃液がどこかで見たことのある味がすることに気づいた。
「まさか...たこ焼きのタレ?」
そう、超巨大タコの胃液は、太郎の秘伝のたこ焼きのタレとそっくりだったのだ。太郎はタコの胃の中で、自身がたこ焼きの具になっていることを悟った。
「せやったら、このタコごと焼けば...」
太郎は、タコの胃の中から、何とかライターを取り出すと、火をつけた。すると、タコの体内に火が回り、見事な巨大たこ焼きが完成したのだ。
この驚異的な経験から、太郎は「人間たこ焼き」という新しいアトラクションを思いつく。もちろん、本物の人間を使うわけではない。VR技術を駆使して、超巨大タコに飲み込まれ、たこ焼きになる擬似体験ができるアトラクションだ。
「よっしゃ、これで商売繁盛や!」
太郎の「人間たこ焼きVRアトラクション」は大人気となり、パタヤ随一の観光名所となった。
そして、太郜の75歳の誕生日。彼は満足げに海を眺めていた。
「人生、わからんもんやな。たこ焼き好きが高じて、こんな大繁盛になるとは...」
そのとき、海面に見覚えのある影が...。
「おっ、またあいつか?今度は負けへんで!」
太郎は、懐かしそうに微笑んだ。彼の新たな冒険は、まだまだ続きそうだ。
...
エピローグ:
太郎の「人間たこ焼きVRアトラクション」は世界中で大ヒットし、フランチャイズ展開されるまでになった。皮肉なことに、この人気で世界中のタコが乱獲され、タコは絶滅危惧種になってしまった。
そんなある日、国連のタコ保護団体が太郰のもとを訪れた。
「山田さん、あなたの協力が必要です。タコを守るために...」
太郎は目を輝かせた。
「よっしゃ、任せてや!タコあっての人生やったからな!」
こうして太郎は、タコ保護活動のリーダーとなり、世界中を飛び回ることになった。彼の人生は、まさにたこ焼きのように、外はカリッと、中はトロッと、予想外の味わい深いものになったのだった。
(おわり)
パタヤの巨大タコ焼き伝説 ~タコと生きる男・山田太郎の奇妙な冒険~ 中村卍天水 @lunashade
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