魔族のモブ兵士に転生した俺は、ゲーム序盤の部隊全滅ルートを阻止するために限界を超えて努力する。やがて下級魔族でありながら魔王級すら超える最強魔族へと成長する。
79 いずれ、勇者になる少年2(レム視点)
79 いずれ、勇者になる少年2(レム視点)
「一つ、よろしいでしょうか」
レムは挙手をして立ち上がった。
「ふん、新参が」
王の誰かがつぶやくのが聞こえる。
それを無視し、
「やはり――勇者の覚醒が絶対条件です」
レムは各国の王たちに意見を述べた。
「来たるべき魔王軍襲来に備え、私たちは何年も前から準備を重ねてきました。預言の書の通りなら、あと2年半――そのときに勃発する人類と魔王の最終戦争において、勇者の存在が必要不可欠です」
「そんなことはお前に言われんでも分かっている」
「我々を馬鹿にしているのか?」
王たちが色めきだった。
新参者であるレムが、彼らを諭すような物言いをしたのが気に食わなかったのだろう。
「各国が総力を挙げ、勇者となる人間を探しておるのだ」
「だいたい、勇者探索の役目を担っていたのは聖女マリエルであろう。冒険者の真似事もその一環だったというのに、まさかクエスト中に死ぬとは……」
「無能者よ」
「まったくだ」
どんっ!
いきなり壁の一部が消失した。
レムが無詠唱で放った上級攻撃魔法によって、城の壁に大穴が空いたのだ。
シン、と場が静まり返る。
「黙れ、無能ども」
レムはいきなりキレた。
「世界を救うのはお前たち頭でっかちの為政者ではない。人類最高の戦闘能力を持つ私たち【英雄】クラスよ」
「き、貴様――」
「お前たちの代わりはいる。けれど、私たちの代わりはいない」
レムは王たちをにらみつける。
「そして聖女マリエルは人類のために、いずれその力を存分に発揮してくれるはずだった。その死を――まずは悼みなさい!」
「レム殿の仰る通りだ」
バロンレイドの王が立ち上がった。
「我らの振る舞いはいささか無礼であったと認めよう。この通り、王たちを代表して謝罪する――許されよ」
と、頭を下げるバロンレイド王。
「勇者の覚醒が必要であることは、我らも認識している。ただ、肝心の勇者の行方をつかむことができぬ」
「ええ、今まではそれが懸念点でした」
……こいつとはある程度まともな話ができそうだ。
内心でつぶやきつつ、レムが続ける。
「ですが――聖女マリエルの死によって、状況が変わる可能性が生じました」
「――ほう?」
バロンレイド王が、そして他の王たちも興味深そうに彼女を見た。
……最初からその態度を示せ、無能ども。
レムは内心で舌打ちした。
どうでもいい腹の探り合いなどに興味はない。
こちらは世界を救うことだけに全力を尽くしているのだ。
魔王軍を倒した後の世界で、どの国が覇権を握ろうがどうでもいい――。
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