72 中ボスバトル、羅刹と夜叉3
「我は【
巨大な黄金の鬼が名乗った。
その声は羅刹と夜叉の声が同時に、エコーがかかったように聞こえてくる。
「この姿になった以上、お前の勝利は万に一つもあり得ぬ……死ぬがいい」
ずしん、ずしん。
地響きを立てて、巨大な鬼が向かってくる。
しかし、随分とデカくなったものだ。
十メートルを超えるサイズだと、まともに剣で斬り合うことは難しい。
相手の弱い場所――例えば関節とか――を斬りつけて、ダメージを与えていくしかないか。
いや、まずは弱点を【見切る】のが先だな。
「悠長に【見切り】など使わせぬ」
ごうっ!
悪鬼王が息を吐き出す。
その呼気が竜巻となって押し寄せた。
「くっ……」
俺は慌てて、その場から飛びのく。
一瞬前まで俺がいた地点が大きくえぐり取られた。
「【見切り】には大きな欠点がある」
と、悪鬼王。
「集中し、対象を【見切る】間は術者が無防備だ」
「……!」
確かに、その通りだ。
「そして、悠長に思案する暇も与えぬ」
ごうっ!
ごうっ!
ごうっ!
連続して竜巻が吐き出された。
「くっ、こんなの――」
防御不可能の攻撃技は、ただひたすら逃げるしかない。
しかし、効果範囲の広い【竜巻】が三つもあると、それすら容易じゃない。
俺は全力で疾走しながら、なんとか一つ、二つ、と竜巻の効果範囲から逃れていく。
そして、三つ目――。
「隙あり、だ」
すべての【竜巻】を避けきった瞬間――一瞬だが【集中】が途切れてしまった。
そこを狙いすましたように悪鬼王が向かってくる。
「っ……!」
俺はとっさに投げナイフを抜き、
「【バーストアロー】!」
弾丸のような勢いでそれを放った。
がきん。
が、奴の体表は相当固いらしく、俺が放ったナイフは簡単に弾き返されてしまう。
「苦し紛れの攻撃は精度が甘い」
悪鬼王が言った。
「そんなスキルでは100度受けようと、1000度受けようと、我の体は貫けぬ」
「……くっ」
俺は唇をかんだ。
奴の言うとおりだ。
かといって、【バーストアロー】の精度を上げるために【見切り】をより長時間使えば、その分だけ隙ができる。
その隙を付かれて相手の攻撃を受けると、致命傷を食らいかねない。
どうする――。
逡巡しながら、俺は【突進】した。
遠距離の間合いでは【竜巻】を一方的に食らうだけだ。
「勝機があるとしたら――接近戦しかない!」
****
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