71 中ボスバトル、羅刹と夜叉2
「っ……!?」
「あなたの能力は安全圏を見切ることができるようですが――」
「未来は刻々と変化します。当然、そのルートも――」
なるほど、それはそうだ。
あいつらは俺の【回避ルート】を読んで、それが無効になるように攻撃の軌道を変化させ、あるいは手数を増やしたんだろう。
何度も【回避ルート】を見つけるのは、膨大な集中力を消費する。
なら――単純な反応速度の勝負だ。
俺は【回避ルート】を使わず、【突進】した。
「たとえ相手の攻撃を食らわない『安全な道』が見えなくても――関係ない!」
そう、純粋な反射神経や予測で避ければいい。
今の俺には、それを実行できるだけのステータスが備わっている。
無数に押し寄せる魔法弾を、俺は上下左右に激しくステップを刻みながら、避け続けた。
ほとんど減速せず、一気に羅刹と夜叉に迫る。
「くっ、こんな――」
「駄目、間合いを離せない――」
ここは俺の間合いだ。
「お前たちの間合いには移らせない。この距離で決着を付けさせてもらう――【高速斬撃・六連】!」
俺はさらに連撃を繰り出す。
羅刹と夜叉は【シールド】を生み出し、俺の剣を防ぐものの、その【シールド】も長くはもたない。
俺の剣技の方が――その威力の方が奴らの防御能力を大きく上回っているのだ。
「「ちいっ!」」
羅刹と夜叉は同時に舌打ちし、全身から衝撃波を発した。
「っ……!」
すさまじい圧力に大きく押される俺。
その間に羅刹と夜叉は俺から十メートルほど離れてしまった。
「すぐにまた間合いを詰めてやる」
「……驚きましたよ。たかが下級魔族の【デモンブレイダー】がこれほどの力を身に付けているとは」
「既にあなたの力は高位魔族並みか、それ以上のレベルに達しているようですね――」
二人は険しい表情で俺を見据える。
彼らから、すでに最初の余裕はどこにも感じられない。
「ならば――本気で相手をさせてもらいましょうか」
二人が同時に言った。
空中で手を取り合い、踊るように回転を始める。
その回転は徐々に早まり、二人の輪郭がぼやけ、一つに溶け合い――。
新たな魔族へと、合体した。
「っ……!?」
これは――【融合】か!
ゲーム終盤である中ボスが、このスキルを使ってパワーアップするんだけど――羅刹と夜叉がそれを使えるとは。
ずう……んっ。
身長10メートルを超える黄金の鬼が、俺の前に降り立った。
****
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