62 これから、ミラが目指す道3(ミラ視点)

「……弱いところを見せちゃったね。ごめん」


 しばらく泣いた後、ミラは顔を上げた。


 彼女が泣いている間、ゼルは何も言わずに、側についていてくれた。


 それがありがたかった。


「いいんだ。仲間なんだから」


 ゼルが微笑む。


「弱いところを見せたっていいんだ。俺が……みんなが、君を支えるよ」

「ゼル……ありがとう」


 ミラは、ふうっと息を吐きだした。


「あたしは――」


 言葉に力を籠める。


「もっと強くなる」

「ミラ……?」

「いつまでも悲しんで、日々を無為に過ごして……きっとレキも今のあたしを見たら悲しむと思うから」


 ミラは顔を上げた。


 その瞳には、もう涙は浮かんでいない。


 少しずつ――意志の光が強まっていく。


「一歩ずつでも、歩き出さなきゃね。ゼルが言った通り、あたしだって……まだ生きてるんだから」


 ミラはゼルに向かって微笑んだ。


「強くなるために、また一歩ずつ。あたしは――俺は」


 前に、進むのだ。




「見てろよ、レキ。お前の分まで、俺は強くなる――」


 ミラは二本の剣を手に、最上級魔獣【ザレグランザ】に向かっていく。


「【ソニックムーブ】!」


 地面を蹴り、爆発的に加速した。


 彼女は【ソニックブレイダー】という種族である。


 その最大の特性は『速さ』。


【ソニックブレイダー】の種族としての固有スキル【ソニックムーブ】は、極めればその名の通り『音速の動き』さえ可能となる。


「これが俺の――新しい力だ!」


 るおお……んっ!?


【ザレグランザ】はミラの動きに付いていけないようだ。


 いや、もしかしたら視認さえできていないかもしれない。


 音速に達したミラは周囲に衝撃波すらまき散らしながら、一瞬にして魔獣の背後に回り込む。


 そして、すかさず二本の剣を繰り出した。


 音速の突進の勢いのままに繰り出す、彼女の新しい攻撃スキルだ。


 その名も、


「【音速斬撃・霧雨きりさめ】――!」




****

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