月子のそら

月まで手が届く少女月子、いま太陽まで手を伸ばしている、最中。中毒者がわらっている、というのも、中毒者の頭の中では今M-1が開催されており、それを中毒者はわらっている、からである。というわけで、月子は、今日も太陽に手を伸ばしており、サマセット・ヒュームを読みながら旅館の廊下をぼんやりと、『人間性を剥落させた女官】があるいている。白楽天について話そうか。月子はぼんやりと考え事の最中のように、くびをくねくねとうごかしている。太陽がいつも通り傾いてゆく夕陽がうごく。影。影である。

月子は狩人であったので、「ちぇ、今日も太陽に手が届かなかったのである」と月子はつぶやいて、弓手に弓を取りえものをさがしまわりつつ夜が更けてゆく。

『人間性を剥落させた女官】がカタカタと動き回っている。

月子は弓に矢を番えて『人間性を剥落させた女官】pinpointで狙いをつける。狙いをつけられた『人間性を剥落させた女官】に向かってinterviewerがマイクを向ける。「ちょえ」と『人間性を剥落させた女官】は呟いた。インタビュアーはそれを録音した。

矢が放たれた。

びゅわん。

ぶしゅわあ。

ぼがんぼがん。

ぐちゃらぺっっっっっちゃら。

もののけ姫みたいに首がぶわんと飛んだ。

月子は荒野のガンマンのようにふっと息を吐いた。

そして夜が明けた。

太陽が登ってきた。

月子はものは試しにと思い太陽まで手を伸ばしてみた。手が届いた。すごく手が長いのである。

そして、そんなすごく長い手で月子はさっきまで弓矢を扱っていたのである。手を伸ばした方が早い。

女官の死体がはやくもくさっていく。

そしてその女官のしたいからぼこぼこぼこぼこ。

ぼこぼこぼこぼこ。

小さな子供じみたおじさんの写真がぼこぼこぼこぼこ。

女官のしたいから溢れてくる。

月子はそのおじさんの写真を拾い上げる。

拾い上げられたおじさんの写真は悲鳴をあげる。

月子は考える。

「こ・ろ・そ」とつぶやく。

月子は考える。

何を考えているのかは誰にもわからない。

月子は考え続けて両腕をへし折った。

「太陽まで手が届くほど腕が長いって逆に不便やねん。だったらこんなものへしおってやるいらないいらない」というわけで、太陽を掴んだまま月子は月子の腕を肩から300センチくらいのところでへし折ってちぎってみた。ちぎられた先端からにょきにょきと指が生えてきて、月子の腕は3メートルの長さになった。またちぎり取って太陽を掴んだまま太陽の下でぶら下がっている役1AUのちぎり取られた腕のちぎり取られた部分からも指がニョキニョキと生えてきて、腕だけ生物になった。

腕だけ生物に月子はその辺に落ちていた木の枝を握らせた。

そして月子はその腕だけ生物に握らせた木の枝に座った。そして鞦韆としてその腕だけ生物を使ってみた。月子はブランコを漕いだ。そうしたらどうだろうか約1AUの腕が太陽を中点にして大回転をして月子は地球から遊離して地球と同じ長さの公転周期で太陽の周りを腕だけ生物に乗って回り始めた。


それからもう1万年が経つ。夜空には月子が惑星のような軌道でぐるぐると回り続けて、人間もようやく紀元前4000年くらいを迎えた。

月子って何者なんだろう?

と紀元前4000年くらいまえのメソポタミアに暮らす少年は夜空を眺めながら思った。

わからなかった。

わからないまま時が、すぎて、やがてドラえもんとかが生み出される時代まで進むのだろう。

わからないのである。

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