第19話 修行はこれからも続いていく。

トーナメントから幾日か経過した。すっかり回復したアンがプティングの家に戻ってくると、老人はにこにこ笑って言った。


「アンさん。さっそくひと仕事お願いしたいのだが、よろしいかな?」


プティングの頼みというのは彼とキャラメルの試合の審判をしてほしいというものだった。断る理由は何もないのですぐに引き受け、アンの立ち合いのもと両者の対決の火ぶたは切手落とされた。プティングが得物である巨大スプーンを構え、キャラメルが星形のステッキを突き出す。

双方ともに隙を伺っていたが、やがて駆け出し真向からぶつかり合う。

ステッキとスプーンの打ち合う音だけが庭に響き続ける。

振り下ろされたスプーンをキャラメルはステッキで受け止め、飴玉やらチョコやらを生成して雨のように降らせるが、祖父はすべてを躱して接近していく。

手技に足技、己に出せるすべてを駆使してふたりは戦い続ける。夕刻に差し掛かった時、プティングの必殺技ヘッドロックが極まり、キャラメルは気絶。


「勝負あり!」


アンが高らかに宣言して勝負が終わった。

気絶から覚めたキャラメルは微笑して言った。


「私、負けちゃったんだね」

「しかし、わしをああまで追い詰めるとは君も成長したということだよ」


プティングが朗らかに笑うと。


「私、いつか絶対におじいちゃんに勝って見せる」

「私も負けていられませんっ!」


アンも小さく拳を握って対抗意識をあらわにする。


「これからの君たちの成長が楽しみだよ」


三人は魔法格闘家の礼儀として互いの拳を鉢合わせするのだった。




おしまい。


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最強の祖父の七光りのせいで孫娘の私に迷惑がかかる モンブラン博士 @maronn777

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