夏祭りと花火大会

 夏休みは大半が部活と塾で消えていった。でも、そんななか、一つだけ夏休みのイベントがある。


 それは夏祭りだ! 毎年夏休みが終わる時期になると近所の神社で奉納祭みたいなものが行われる。神社の前の通りに屋台がたくさん並んで人で賑わう。


 ちょうどバスケ部が休みだったので、今年は亮吾と、維斗ゆいと遥輝はるき(三人ともバスケ部)で行くことにしていた。遥輝は小学校からずっと仲良しの親友だ。去年からこの三人で出かけることが多いので、いつもの面子って感じだ。


◇◆◇


 お昼前、十一時頃にみんなで集まって、お昼ご飯を食べてから祭りに行く。いつもの駅の近くにあるマックでハンバーガーを食べる。


 マックはなにかを食べようと悩んだ時にハズレがない。だからこの四人組のときは結構マックを食べることが多い。


 ほぼ毎日部活で会っているが、遊ぶことは年に何回かしか無いので結構貴重だ。


 軽くご飯を食べたら祭りへと向かう。ここの神社は僕らが住んでいるあたりでは結構大きいのですごく混んでいる。

 

 あたりを見回すと、くじに射的、りんご飴にチョコバナナ、綿あめにたこ焼きに・・・・・・と沢山の屋台が会って活気づいている。


 いつもそこまで人が居ない場所だが、こういうイベントのときはいったいどこから湧いてくるのだろうかというくらい人で満ち溢れている。


「どこから行く? 」


 そう言っても、僕らのお小遣いはそこまで多くない。まあ一人三〇〇〇円位持ってきていて、屋台は一回、一個五〇〇円くらいのものが多いので、どれをやるのか考える。


「まあ一回全部回ってみるか」


「そうしよう」


 遥輝も亮吾も結構慎重なタイプなので、ぐるっと屋台を全部一周してから決めることにした。 まあ時間はあるんだしゆっくりと回っていこう!


 屋台通りを三十分くらいかけて回りきった。僕は同じものを売っていても、どの屋台が一番安いかを見ながら回っていた。


 結構中学生のお財布事情はシビアなのです。


 なんやかんやあってみんなでチョコバナナやフルーツ飴などを買い、射的などもした。ふらふらと屋台を回っていると結構時間は過ぎていくものだ。屋台も結構並ぶのでいつの間にか一五時になっていた。


 結構歩き続けていたので祭りの喧騒を避けて、近くの公園に向かった。四人が座れるベンチがなかったので、そこら辺にあった岩? のようなものに座って戦利品を眺めたり食べたりする。


「たこ焼き良いなぁ」


「はい」


「おっありがとう! 」


 亮吾が維斗にたこ焼きをあげている。


「うまい! 」


 維斗がオーバーリアクションしているのでみんなで笑う。やっぱり祭りは楽しい。


◇◆◇


 そうやって四人で座って話していると、


「あっ、秋花くん! 」


 そういう聞き慣れた声が聞こえてきた。声の方を見てみると、そこには君が居た。


「おお、山中さんも来てたんだ」


 君はいつもの女バスのメンバーで祭りに来ていたようだ。


「そりゃぁ来るに決まってるでしょ! 」


 君はいつも通り、眩しいくらいに輝いていた。


「あっりんご飴! どこにあったの? 」


「結構入口の方だったと思うけど・・・・・・」


「碧音! 早く行くよ! 」


「ちょっと愛菜・・・・・・待ってって」


「ほら! 瑠璃も! 」


「もう、愛菜! 」


 そうやって嵐のように去っていった。


「嵐みたいだったね」


「うん」

 

 三人共一緒に返事をした。


 僕らは半ば呆然とそのグループの行方を見送った。


◇◆◇


 走り去っていく君を見ながら心のなかで二人で一緒に回れたらなぁなんて思っている。でも、この思いもまだ僕だけのものにして、心の奥底にしまっている。


 もちろん、親友の三人にもこの事は言ってない。多分あの三人なら


「えっ翼!? いいじゃん、頑張れ〜」


 なんて言ってくれるはずだ。そういう優しい人たちだから。でも、なんだかプライド? みたいなものが邪魔をして誰にも言えない。


 まあ三人に言ったってどうにかなるもんじゃない。今の時点ではこの四人組には彼女持ちなどいなく、男子だけで気軽にやっている。


 そうしてそのまま日が暮れるのを待っていた。この神社の祭りとその近くの川での花火大会が同じ日に行われるので、毎年、この日は楽しいことが沢山重なっている。


 六時位になって暗くなってくるとどんどん人が集まってきた。頃合いを見て河川敷へと移動する。花火大会が始まるまでにあと一時間位あるけれど、場所を取っておかないとすぐに埋まってしまう。


 レジャーシートを冷たい地面に敷いてその時間を待つ。どんどん人が集まってきて河川敷は人で埋め尽くされる。本当に圧巻だ。


 どんどん会場(河川敷)の熱が上がってくる。そして花火が上がる。川の真ん中から打ち上げられた花火は空高く舞い上がり、音が遅れてついてくる。

 

 赤青緑黄など沢山の色で空が彩られる。本当にきれいだ。この花火を君はどこかで見ているんだろうな。そう思うと、なんだか嬉しい気持ちになる。そりゃぁ隣りにいて一緒にこの花火を見たい。でも、まだ今の僕にはそんな資格も勇気もないんだ。


 約45分間の花火が終わると人々はどんどん帰っていく。周りには花火の火薬の匂いと、その迫力の余韻が残っている。


 家に帰ってもあの花火と、君の嬉しそうな横顔は鮮明に覚えていた。ベッドに潜って天井を見ても君のことを思い出してしまう。


 ああ、今日は一日だったなぁ

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あさがおの花束を君に (作者心労により休載中) 功琉偉つばさ @WGS所属 @Wing961

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