夏休みと部活

 そうしてだらだらと毎日を過ぎしているうちに夏休みになった。


 去年もそうだったが、夏休みは塾と部活でほぼいっぱいになる。夏休みと言っても、週五日で部活に行くのだから、学校に行っているのとほぼ変わらない。


 僕らの部活はたいてい午前の部が多いので、毎朝六時半に起きて、八時から一二時まで活動をしている。


 夏休みの初日から、そうやって過ごしていく。


◇◆◇

 

 夏休みって結構早く過ぎていく。昨日終業式があったと思ったら今日はいつの間にか夏休み三日目となっていた。


 今日も今日とていつもと同じように部活へ向かう。


 目覚まし用の腕時計(この頃はまだスマホを持っていなくて、目覚ましは腕時計のアラームを使っていた)に起こされて、顔を洗って、朝ご飯を食べて、着替えたらすぐに学校に向かう。


 夏は朝が一番清々しい、枕草子で『夏は夜』なんて言っているけれど、最近の夜はジメジメしていて本当に寝苦しい。でも、朝はまだ涼しい風が吹いていて一番過ごしやすい。


 そんなことを思いながら歩いていく。すると、君が学校の本当に近くの交差点にいた。


「おはよう」


「あっ、秋花くん! おはよう! 」


 今日も朝から君はキラキラしている。


「秋花くん」


「なに? 」


「あっちの標識の方から誰か来てたりしない? 」


「えっ? あっち? 」


 言われて指を刺された方を見るけど誰もいない。


「やっぱりそうか・・・・・・もう、私眼鏡かけてないから」


 確かに、君は授業の間は黒縁の眼鏡をかけている。なんだか、最近目が悪くなって眼鏡をかけないと黒板が見えにくいらしい。そういう僕は結構目が悪い方で、コンタクトを付けている。


「今何時? 」


「七時半だよ」


「えっもうそんな時間!? 碧音ったら約束の時間なのに! 」


 どうやら君は同じ部活の碧音・・・・・・坂中碧音さかなかあおねを待っていたらしい。


「いや、もう学校に行ったら? 一緒に来れても数分じゃない? 」


 今君が待っているこの場所は、学校まであと一直線のすごい近い場所なんだ。


「いいの、その数分が大事なの。」


 なぜか膨れてちょっと怒りながら? 言ってきた。

 

「じゃあ、先に行ってるよ」


「え〜 なら私も行く」


 どっちなのさ! 心のなかで突っ込んでしまう。でも、そんな君も可愛いと思えてしまうのでなんだか不思議な感覚だ。


 まあ一緒に学校に行けるんだから良いやと心の底で思いながら本当にすぐそこの学校についた。


 八時に玄関のドアが空き、すぐに着替えてからシューティングをする。八時半位になると十分間走という結構鬼畜なウォーミングアップをする。1年生の慣れていないはじめの方は朝ご飯を戻してしまう人が続出した。でも今となっては慣れたもので、楽々走り切ることが出来る。


 女バスを横目に走ると、三分間ジョギングをしている。たまに後輩の何人かが、


「先輩、十分間走やっぱきついっす」


「頑張れ〜」


「もう、先輩! はやい・・・・・・」


 僕らが一年生の頃、三年生の先輩が十五人いたのではじめの方は体育館に入れずにずっと外周をしていた。その時に付いた体力に勝てると思ったら大間違いだ! 僕は適当にあしらってスピードを上げて走っていった。


 ウォーミングアップが終わるとストレッチをして、フットワーク、ハンドリング練習、パス練習などと基礎練習をやっていく。練習のメニューは基本的に先生が決めている。


 そして、夏休みの一番の地獄はスリーメンだ。この練習は言葉で説明するのが結構難しいというか、説明しても大抵の人はわからないだろう。でも、確かなのはすごい量走る大変な練習だということだ。僕らの顧問は良くも悪くも結構スパルタ・根性論なので、エンドレスにそのスリーメンをやらせる。


 この練習はひたすら走りながらレイアップシュートを決めまくるのだ。三人が並んで走るので、その三人の息があっていないとシュートのリズムが崩れてしまい余計きつくなる。


 去年、今の三年生のグループに混ざった時があったが、やっぱり速さがぜんぜん違うのでとても大変だった。中体連前の練習のときには慣れていたけれど、しっかりと慣れるには結構時間がかかる。


 パスの方向を間違えればすごいタイムロスにもなるし、レイアップが決まったあとのボールを落として、もたついてしまうとそれもタイムロスする。


 タイムロスして、シュートを外すとどんどん雰囲気が悪くなっていく。まあ要するの大変な練習だということだ。


 でも、去年は最高で四十分連続、一三人でスリーメンをしたが、今回は結構リズムよく言ったので二〇分で、一四人でこなすことができた。


 そんな結構きつめ? 他の学校がどうかわわからないけど、そういう練習をしている。


◇◆◇


「あ〜疲れた〜」


 練習終わり、更衣室でみんなが話し出す。更衣室は体育館横にある狭い部屋なので、一四人も入ったら満杯だ。僕は亮吾といっしょにぱぱっと着替えて荷物を持って外に出る。体育館では午後練のバドミントン部がネットの準備をしていた。


「お〜い、早くしろ〜」


 ダラダラ着替えているみんなを急かす。そして体育館の入口に並んで、


「気を付け、ありがとうございました! 」


「ありがとうございました! 」


 と、こんな感じで夏休みの練習が終わっていく。

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