僕らの中体連

 中体連は六月の最後の週の土日から始まる。トーナメント形式で、一日に三回戦う。もちろん勝てば、だが。


  一回戦目は前に戦って勝ったことのある学校だった。僕はまだ二年生なのでベンチ入りはしているけどスタメンではない。スタメンはもちろん三年生たちだ。


 三年生六人、二年生八人、一年生七人、計二一人の部活だ。今回の試合は二、三年生のみで出場する。


 といっても、僕らの顧問はなぜか交代をあんまりしないタイプなので、三年生六人プラス小学生の頃チームに入っていてすんごい上手い三人の計九人で今日もやるつもりだろう。 


 でも、いつ出されても良いようにしっかりと心と体の準備をしておく。ストレッチやアップをしっかりとする。


 そして試合が始まった。


◇◆◇

 

 試合の結果だけを言うと、二回戦敗退だった。一試合目は六〇対五七でしっかりと勝ちきったが、二回戦目は五七対八九で負けてしまった。


 僕は結局試合には出してもらえなかった。でも、先輩たちは本当に一生懸命戦ったいて、もう、何ていうかすごかった。


 試合の内容を言ってもわかんないだろうから省略する。一生懸命戦っていたにも関わらず、試合が終わるとみんな泣いていた。


 ここで、僕は不思議に思った。理解が出来なかった。たしかに、負けて悔しい。でも、それ以上にみんな頑張っていたと思う。この試合結果は杭があるようなものではないと思う。でも、みんな泣いている。


 出ていた人が泣いているのはまだ理解できるけど、他のみんなまで泣いていたのは理解できなかったんだ。更衣室で僕だけが取り残されているような気がした。


 別に、僕が泣いていようともいまいとも誰も気にしてはいなかったともう。でも、自分だけそんな感情にならない僕の心がなんか痛んだ。


 その日は家に帰ったからもなんだか心に穴がポッカリと空いたような気分だった。上の空。そんな表現がピッタリの気分だった。でも、自分の中で、


「お前は試合に出てなかったんだから、頑張っていないんだから悲しむ権利も、喜ぶ権利もないんだよ」


 と言う、もうひとりの自分がいることに気づいた。たしかにそうだ。僕はなにもしていない。試合に出場させてもらえれるような力を身に着けていないし、それに、この中体連は先輩たちにとって最後の試合だったのだ。


◇◆◇


 翌日、学校に行くともう、部長を決めるミーティングが行われることになっていた。


 僕のバスケ部の部長は先輩たちが指名制で決めるという不思議? な形式なので、先輩たちの決定を待っていた。


「俺は部長やりたくないなぁ」


 二年生の中では一番バスケが上手い木村くんが言う。


「なんで? やりゃいいじゃん」


「いや、俺、部長とか堅苦しいのは嫌いだし、亮吾がいいんじゃね〜の」


「俺? いやいや、そんなことないよ」


 そんな感じで一、二年生の方は期待しながら待っている。


 そしてミーティングが始まってから十分くらいして、次の部長が決まったらしい。


「次の部長は・・・・・・デレレレレレ、ジャン! 高峰亮吾です! 」


 今の部長から発表された。


「おおおおおお! 」


 結構予想通りって言えば予想通りだった。亮吾は結構人望があって一年生からも慕われている。


「ということで、意気込みをお願いします」


 急に言われた亮吾は戸惑っていた


「えっと・・・・・・ 男子バスケ部部長になりました、高峰亮吾です。え〜部長はみんなをまとめる大変な役職ですが、一致団結してみんなで試合に勝ち進んだり出来るようなチームになるように頑張りたいと思います! よろしくお願いします! 」


「次期部長、亮吾に拍手! 」


「じゃあキャプテン、あいさつを」


 先生が号令を指示した。


「気をつけ、ありがとうございました」


「あざした」


 やっぱり、中学生の一年は早いと思った。


◇◆◇


 男バスは二回戦敗退だったが、女バスの方はと言うと、山中さんが結構活躍して、準決勝進出だったらしい。準決勝敗退って言うよりも進出って言ったほうが良い気がする。ただ、二回戦進出っていうのはなにか違うような気がした。


 そして、次の日から先輩が引退した、新チームでの部活が始まった。自分たちが最高学年? 一年生の上に立って練習をするっていうのは何か変な感じがした。でも、いつかは慣れるだろう。


 中体連が終わると、そろそろ夏休みだ。僕たちが通っている学校は学校行事の殆どが二学期にあるので、ここから夏休みまで特にコレと言ったイベントがない。


 ただ毎日を過ごしていくだけだ。


 それでも、僕には結構変化がある時期だった。先輩が引退したことで、君と帰る機会が増えたのだ。


 特に大会が近いとかそういうわけではないので、部活の時間が長引くこともなく、時間通りに終わって帰ることになる。すると、自然と隣のコートの女バスと帰る時間がおなじになるのだ。


 一週間くらい経って君と一緒に帰るのにも結構慣れてきたが、まだ隣を歩く君の顔を見るとドキリとする。つい視線がいってしまうので、気づかれていないかどうか心配になる。でも、なにも気にしないでただ前を向いて歩くだけなんてもったいない。 

 

 ああ、この気持ち、いつ伝えられるかな。


 

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