第7話田中(仮名)

保育園からの同級生で田中(仮名)と言うヤツがいた。

取り分け仲の良かった同級生では無かったが、小学校では別々で中学生の時は一緒のクラスだった。

昼ご飯の時は仲のいいヤツらと机を合わせて食べていたが、田中は友達がいないので、一人で食べたり、教師と食べていた。

その姿がとてもかわいそうだったので、僕は昼ご飯は田中と机を合わせて2人で食べた。

周りは僕らを嫌われ者として笑っていたが、気にしなかった。

田中は「行け!稲中卓球部」の存在を教えてくれて、読むとめちゃくちゃ面白かった。


その時の田中の笑顔は忘れられない。

中学を卒業したら、田中は僕と違う高校に進学した。

昔は卒業式の時は、女の子が学ランの第二ボタンをもらうのが流行っていた。

何人かボタンを欲しがり学ランのボタンのほとんどを好きだと言う女子渡した。

田中は、寂しそうに、

「羽弦君、ありがとう。大人になったらお酒一緒に飲もうね」

と、言うので、

「田中、元気でな」

と、卒業式で彼の姿を見たのが最後だった。

それから8年後23歳の時、同級生の仲間から電話があった。

「羽弦、田中が死んだらしいよ」

と。

確かめると、田中は自衛隊に入隊にしていたが帰宅する際、交通事故で亡くなっていた。

中学生時代、2人だけで昼ご飯食べながら稲中の話しで盛り上がった。

僕らが笑いながら飯食ってると、田中へのイジメは消えて行く。

最期は笑顔だった。


田中、また、稲中の話しをしたいな。

お前は、嫌われてはいない。真面目過ぎたんだよ。

お前の事を決して忘れないからな。


安らかに。

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