Episode2 水族館
久しぶりの再会に、話の花を満開にさせてから私たちは次の目的地へと向かった。次に向かうのは水族館だ。
私はさっき買ったばかりのチケットを握りしめてみんなと一緒に入り口までやってきた。久しぶりの水族館に心が躍る。ここは都内でも結構有名なところで、この水族館でしか見られない珍しい魚がいることでも有名らしいのだ。そのことを聞いたときはちょっと興奮してしまったよ……やっぱりこういうところは興奮するよね!
「ねえねえ、茜ちゃん! 何から見る!?」
芽衣が目を輝かせながら私の腕を引っ張ると、文子も興味深そうに魚たちを見ながら言う。
「やっぱり最初はペンギンとかじゃない? 茜ちゃん、ペンギン好きだもんね」
「うん、じゃあまずはそこに行こうかな」
私がそういうとみんなも賛成してくれたので私たちはそのまま入り口までやってきた。するとそこにはたくさんの人がいた。私は思わず驚いてしまったが、すぐにその理由に気付く。そう、今日は平日だっていうのに人が多いのだ。
「すごい人だねー」
琴音がそういうと芽衣は嬉しそうにしながら答える。
「でも、全然平気だよ! だって私たちもこれから一緒にペンギンを見るんだから!」
「それもそうだね。じゃあ、行こうか」
私はみんなと一緒に中に入っていった。中はとても綺麗で、まるで海の中にでもいるような感覚だった。私たちはゆっくりと歩きながら魚たちを見ていくことにした。すると、そこで文子が私に声をかけてきた。
「ねえねえ、茜ちゃん」
「ん?どうしたの?」
私がそう答えると彼女はにっこりと笑いながら言った。その笑顔に思わずドキッとしてしまう私だった。
「私たちって今もまだ仲良しなんだよね?」
突然、そんなことを聞かれたので私はちょっとびっくりしてしまったけどすぐに答えることができた。
「うん、もちろんだよ!」
私がそう答えると文子はとても嬉しそうな顔をしてさらに続けた。
「よかったぁ……実は私ね、茜ちゃんと離れちゃってからずっと不安だったんだ。先
に私が上京したから茜ちゃんとは離れちゃったし……それにね。私って結構人見知りするタイプだからさ、東京に来てもずっと一人だったんだよ」
「文子ちゃん……」
私は思わず言葉を失ってしまった。まさか彼女がそんなことを考えていただなんて思
いもしなかったからだ。
「なーんてね! 冗談だよ。私が茜ちゃんと離れるなんて嫌だもん!」
文子は明るく振る舞ってみせたが、私はそれが嘘だとわかっていた。彼女は本当に不安だったんだ。でもそれを悟られないように強がっているんだ。だから私も彼女の気持ちに応えなければならないと思った。
「ありがとう、文子ちゃん」
「えっ?」
「文子ちゃんの気持ち、すごく嬉しいよ。私もね、文子ちゃんと離れて寂しかったけど今はこうして再会できたんだもん。だからこれからはずっと一緒だよ! また一緒に遊ぼう!」
私がそういうと彼女は目に涙を浮かべながら抱きついてきた。その目には大粒の涙が浮かんでいた。私は優しく彼女の頭を撫でた。すると今度は芽衣が私たちの間に飛び込んできた。
「あーっ! ずるい!! 私も混ぜてよー!!」
そんなやりとりをしているうちに自然と笑顔があふれてきた。やっぱりこの3人で一緒にいるのが一番楽しいと思った瞬間だった。その後も私たちは様々な魚たちを見て楽しんだ。特に珍しい魚を見たときにはみんな大はしゃぎをしていたほどだ。そして、私たちは最後にお土産売り場にやってきた。そこでは様々な商品が並んでおり、見ているだけでも楽しめそうだった。
「ねえねえ、茜ちゃん! これ見て!」
芽衣が見せてきたのはペンギンのぬいぐるみだった。しかも2つも持っているのだ。
「わぁ、可愛いね」
私がそういうと彼女は嬉しそうにしながら言った。
「でしょ? だから買っちゃおうと思って」
「でも、どうして2つも?」
私がそう聞くと芽衣は顔を赤くしながら答えた。
「だって……お揃いにしたいから……」
その言葉を聞き逃さなかったのが琴音だ。彼女はすぐさま芽衣に抱きついて言う。
「もうっ!可愛いんだからー!」
「ちょ、ちょっとやめてよ」
そんなやりとりをしている二人を見ながら私は微笑んでいた。本当に仲が良くて羨ましいと思うと同時に少し羨ましくも感じた。私もこんな風に仲良くできる相手がいたらいいのになぁと心の中で思うのだった。
「ねえ、文子ちゃん」
私は隣にいる彼女に声をかける。
「ん?」
「私たちもお揃いのもの買わない? せっかくだしさ」
私がそう提案すると彼女は嬉しそうに賛成してくれた。私たちはそれぞれ別々のものを買うことにしたのだが……ここで問題が発生したのだ。何を買おうか迷っていたのである。というのも、どれも可愛いものばかりでなかなか決まらなかったのである。すると、そんな私たちを見かねたのか店員さんが声をかけてきてくれた。
『何かお困りですか?』
突然のことで驚いたが、ここは素直に聞くことにした。
「えっと……実は何を買おうか迷っていて……」
私がそういうと店員さんはにっこりとしながら答えた。
『それなら、こちらはいかがでしょう?』
そう言って見せてきたのはペアのマグカップだった。しかもただのマグカップではなく、ペンギンの絵が描かれているものだったのだ! これは可愛い!!でも、値段もなかなか高いしなぁ……と思っていると芽衣が私の袖を引っ張ってきた。
『ねえねえ、茜ちゃん。これ欲しい!』
どうやら彼女も気に入ったようだ。確かにこれなら3人でお揃いにできるし、いいかもしれないと思った私はすぐに購入を決めたのだった。
私たちはそれぞれおそろいのマグカップを購入した後、水族館を出て近くの公園にやってきた。そこで休憩をすることにしたのだ。ベンチに座って一息ついていると文子が話しかけてきた。
『茜ちゃん、今日はありがとうね』
「こちらこそだよ」
私がそういうと芽衣が飲み物を飲みながら言う。
「そうだよ!茜ちゃんはいつも私たちのために頑張ってくれているんだからさ!」
「そんなことないよ……私はただみんなが好きだから一緒に遊びたいだけなんだよ」
私がそういうとみんなは優しい笑みを浮かべてくれた。やっぱり、私にはこの3人しかいないんだなと思った瞬間だった。
私とホタルの「恋」の駆け引き くるみXXX @kurumiXXX12
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。私とホタルの「恋」の駆け引きの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます