Episode1:上京

私は今、電車に乗って東京に向かっていく。暖かな春の陽気に囲まれた外の景色を見ながら、私はさっき買ったアイスコーヒーを飲む。

「うお、冷た」

私はコンビニで買ったアイスコーヒーがこんなに冷たかったことに驚いた。けど、私はこれから東京に着くことに胸に期待を込めながらアイスコーヒーを少しずつ飲み続ける。

東京に上京した私は真っ先にカフェに向かった。そこで待っててくれたのは、いつものメンバーだった。

「みんな、久しぶりだね」

私の言葉に誰かが私のところへ駆け込んできた。

「茜ちゃぁぁぁん!」

私に思いっきり抱きついてくる彼女を私は受け止める。

「芽衣、久しぶり」

彼女は東京出身。そして、私の地元の山口県にも家族ぐるみで何度も行ったことがあるほど親しい友人だった。彼女とは東京でも会っていたりしていたけど、こうやってカフェに集まって会うのは久しぶりのことだった。芽衣の抱きつき癖も懐かしいな。

「茜ちゃん、会いたかったよ!」

「うん、私もだよ。でも芽衣、ちょっと苦しい」

私は芽衣を離すと、今度は違う人が私に飛びついてきた。

「茜さん、お久しぶりです! 元気でしたか?」

「うん、元気だよ。梨乃も元気そうでよかった」

「はい!」

彼女は琴音。私と同じ高校に通っていて、私の後輩だ。黒のロングヘアーがよく似合う。けど、その雰囲気とは裏腹に少し幼い感じもあり可愛らしい。

今の梨乃の笑顔は可愛い。今度はまた違う人が私のところへやってくる。

「茜ちゃん、久しぶり! 会いたかったよ!」

「うん、私もだよ」

彼女は文子。私の地元の後輩で、私と一緒に山口から東京に上京してきた。茶色のロングヘアーがよく似合う元気いっぱいの子。彼女もまた私と同じ高校に通っていて、今の聖羅の雰囲気が私は好きだったりする。しっかり者って感じがして、現役女子高生とは思えない大人な雰囲気を持つかわいい子だ。

「本当に久しぶりだね。元気だった?」

「うん、元気だよ。みんなも元気そうでよかった」

私はそういいながら椅子に座るとみんなも私の近くの椅子に座った。私もみんなの顔を一人一人見ていく。やっぱり安心するな。この安心感は大切なものだ。

「それでは茜ちゃん、東京上京に~かんぱーい!」

「「「乾杯」」」

芽衣が音頭を取り、私たちはそれぞれ飲み物を飲む。

「茜ちゃん、東京はどう?」

「うん、楽しいよ。でも、ちょっと疲れちゃうかな」

「確かにそうだよねー」

琴音はアイスコーヒーを飲みながら言う。私はそんなみんなを見てから、自分の鞄からあるものを取り出した。それは小さな箱だ。その箱をテーブルの上に置くとみんなが注目する。

「これはね……みんなにプレゼント」

「えっ!? 何々!?」

文子が嬉しそうにこちらを見る。みんなも興味津々だ。私は箱を開けると、そこには小さなカステラが入っていた。

「わーっ! カステラだ!」

「茜ちゃん、これどうしたの!?」

「私、東京に上京したからそのお祝いにと思って。最寄りの東京駅で買ってきたんだ」

私はそう言いながら箱から一つカステラを取り出して、芽衣に渡す。芽衣はとても嬉しそうにしながらカステラを受け取った。

「ありがとう! 茜ちゃん! でも、なんでカステラなの? あかねだけに?」

「それは……特にないよ」

「えーっ!? なんでないのー!?」

そんなやりとりをしていると、凪が笑いながら言う。

「茜ちゃんらしいね」

「どういうこと? 文子ちゃん?」

「いや、なんでもないよ」

私はカステラを一口食べると、みんなにも渡して食べてもらう。

「やっぱ文英堂のカステラは美味しいね」

「うん、やっぱり東京だとみんなレベルがすごいねー」

すると、琴音が不思議そうに聞いてきた。

「なんで茜ちゃん、急にプレゼントを?」

「えっとね……なんていうか、こうしているといつもの日常って感じがして安心するんだよね。だから、これからも一緒にいてほしいなって思ってさ」

私がそういうと芽衣が笑顔で言う。

「そんなのいいに決まってるじゃん! もう私たちは友達なんだから!」

「そうだね。ありがとう、芽衣ー」

私がお礼を言うと、琴音が今度は私の近くによってきて私の手を握りしめる。

「もちろん! 私たちずっと友達だよ!」

すると、文子もゆっくりと私に近づいて微笑みながら言う。

「そうだよ。私も茜ちゃんとはずっと友達でいたいな」

そして最後ににっこりとした笑顔で私に伝えてくれた。

「はい! みんな仲良しです!」

3人の言葉を聞いていると思わず泣きそうになる。けど、私は泣かない。だって涙よりも笑顔がいいからね!

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