第2話 戦士の日常
公園には子供と親御さん達が複数人いた。車は公園に横付け、いつでも能力を使える、飛び出せる準備をする。
「来たぞ」
切り裂き魔が公園に近づく。フードをかぶりマスクとゴーグルを着け公園内に侵入。そして歩きながら腰のバッグの中からナイフを取り出す。彼の目の前には子供達が遊んでいる、男はターゲットを定めるとそちらに向かってナイフを振り上げ走り出した。切り裂き魔に気が付いた親御さんと子供達は恐怖で悲鳴を上げる。
「襲い掛かったぞ! ユウマ!」
「いきます!」
能力発動、切り裂き魔は走っているがそれ以上先に進めないという奇妙な状態に。
「なんだよっ、これ!?」
俺の能力、ゲームあるあるの「見えない壁があってこれ以上進めない」を使用。見えない壁に阻まれてここから先いけないのかよってことはゲームではよくある。
「確保!」
車から飛び出す。アスラさんは親御さんと子供の安全を確保、俺は切り裂き魔に突撃。奴は俺に向かってナイフを突き出す。
「危ない!」
思わず親御さん達が声を出す。だが奴のナイフは手元から弧を描き飛んで行った。能力を使いナイフを弾き飛ばした。「武器は剣が多い」を発動、一瞬剣を作り出しナイフに当てた。ゲームだと剣を使うキャラが本当に多いよね、人気の武器だ。
「テメエ、なにしっ……ゴハッ!」
手首をつかみ腹部に膝蹴りを入れ、引っ張り体をひねって脇固めを極め相手を制圧。もう片方の手を持ってきて手錠をかける。
「よくやった」
チームが到着、切り裂き魔を連れていく。
「焼肉行くか」
「やった!」
仕事後の食事は格別、しかも焼肉とあっては手加減無用、男子高校生の食欲をお見せしよう! 満腹になり帰宅。部屋に入りお楽しみのゲームの時間。電源を入れ好きなゲームを遊ぶ。やはりゲームはいい、整う。こうしてちょっとだけ普通の人とは違う俺の一日が過ぎていく。次の日は訓練。今日は特別コーチとして鬼平さんが来ている。
「よーし、スライディングの特訓だ」
実際野球をやっている鬼平さん、きれいなスライディングを披露。
「やってみろ」
スライディングをするがその場でお尻を落としているだけの不格好な動きに。前から何度か練習をしているがうまくいかない。鬼平さんのアドバイスを聞きスライディングをするといつもとは違い流れるように滑っていく。なぜスライディングの練習をしているかというと、能力を使うとSPというゲームでいうところのMPを消費する。能力にスライディングがあり、うまくなるほどにSP消費量が減る。現実離れした能力ほどこのSPを大きく消費する。
「うまくなってきた」
能力のスライディングを使う、今までよりかなり消費SPを減らすことに成功。連続で使用すると走るよりも速い、これはいろいろと使いどころがありそうだ。ゲームでも物によるけどスライディングが移動手段ってものもあるからなー。訓練を終え家に帰る。翌日学校へ。
「おはよー」
「おっす」
学校に到着、教室に入っていつもの仲間に挨拶を。友達には恵まれていると思う、人見知りする俺に声をかけてきてくれて友達になった。いまだに能力「ゲーム中はコミュ力高い」を使わないと他人とはうまく話せない。使わなくても自然と話せるのは家族と友達と会社の仲間の二人だけ。ゲームの中なら誰にでも気軽に話しかけられるんだけどね。こちらもSP消費量節約のため現在特訓中だ。チャイムが鳴り授業が始まる。
「人類は進化への一歩を踏み外しました」
今やっているのは人工頭脳失敗の話だな。能力者の存在はあらゆる手を使い隠されている。授業で教えている内容は人工知能に致命的欠陥があったと伝えるだけでやめた本当の理由である能力者の件は公開されていない。そして前時代に戻り連絡や情報を得る手段は電子端末に、それがつい最近、去年の出来事。だから勉強するまでもなくみんなこの件に関しては詳しい、経験したことだからね。今ではもちろん人工頭脳の取り付けはおこなっていない。学年一個下から普通の人間。一年違いでこんなややこしいことに巻き込まれるなんて、ふーむ、運が悪かったな。
「終わります」
今日の学業が終了。宿題等をスクールバッグに入れる。
「帰ろうぜ」
雑談しながら教室から出る。
「おや、あの子は」
前方に一人の女の子。星練雪(ほしねり ゆき)、才色兼備の彼女は学校で男性一番人気といわれている。鋭い目つきから醸し出す雰囲気は少々冷たさがある。別名氷の女王。二つ名通り? 告白する相手はみな振っている、取り付く島もないとか。ブルルッと急にポケットに入れてあったスマホが踊る、誰からだろう。取り出すときに家の鍵が引っ掛かり豪快に飛び出し廊下を滑り彼女の前に。鍵を回収しようと移動すると、彼女が拾ってくれた。
「あ、ありがとう」
「いえ」
一瞬声を震わせお礼を言う。鍵を俺に渡す彼女。
(もう少し自然にできても。何度も一緒に仕事をしているわけだし)
(これでも慣れた方だよ)
小声で会話を交わす。彼女も能力者、言う通り一緒に仕事をすることはある。しかし完全に慣れたというほどではない。じゃあまたと廊下を歩き去っていった。
「あれ、お前にしては反応が薄いな。もしかして仲がいい?」
「んなわけない」
緩い関係だがたまに鋭い時がある。ばれると面倒だ、気を付けないとな。
「噂では相当チャラい彼氏がいるとか」
有名になると色々な噂が流れるようになる、彼女も大変だな。おっとスマホを忘れていた。アスラさんからの連絡、今日は予定していた仕事がなくなったからお休みか。じゃあ友達と遊んで帰ろう、みんなとファミレスへ。
「暇だよなー」
大皿ポテトとドリンクバーで粘る。だらけながらとりとめのない会話。飲んでいたシェイクがズコーという啜り音が出たところでお代わりに行く友達。これもある意味青春だ。
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