あるあるバトラーズ!
保戸火喰
第1話 能力者
「これからどこか行く?」
「悪いけど今日はバイトだから俺はここで」
「そうだったな」
「バイバーイ」
「また明日」
どこでもよく見るありがちな学生達が帰宅する光景。友達と別れ現在バイトに向かっている俺、今氏勇真(いまうじ ゆうま)はゲームが大好きで少々引っ込み思案な一般男子高校生。……表向きは。街の中を歩き職場に到着、看板がないビルの一室に入っていく。仕事の内容は何でも屋、和田亜須螺(わだ あすら)社長と事務の佐藤さんと俺だけの小さなところだ。
「ユウマ、丁度いいところに来てくれた、仕事を頼みたいのだが」
「内容は?」
「切り裂き魔の確保です」
何でも屋は仮の姿、その正体は警察や軍とも協力しあらゆる事件を解決していく国の組織。はいと返事をしてロッカールームで着替える。戦闘服に顔を覆い隠せるマスクとゴーグルを装着。
「準備はいいか? いくぞ」
「いってらっしゃーい」
地下の隠し通路を通り他のビルの地下へ。二人は準備してあった車に乗り込む。運転は国の協力者、車はスモークガラスが張ってあり運転手以外は外から見えない仕様。内部も普通ではない、モニターがいくつかあり様々な電子機器が並んでいる。車が出発、作戦資料を渡され一通り目を通す。目的地はここから距離がある、アスラさんと談笑しながらついつい愚痴を。
「国は厄介なことをしてくれましたね」
「ぱっと見世界は変わっていないが、能力者が現れてしまったな」
20XX年、人類は極小の人口補助頭脳を開発、脳に埋め込みPC環境と同じ情報を脳内に表示することに成功し拡張現実やネットを使える新しい人類が生まれると世界で報道、皆人類の進化に夢を膨らませていた。試験を繰り返し問題はないとし人類全員、日本は15歳以上に補助頭脳を取り付けた。素晴らしい世界を作ることができると思っていた矢先に能力者が生まれ世界が混迷。その能力とはあるある。例えばゲームあるあるの能力者の俺が能力「ゲーム中ではコミュ力が上がる」を使えば普段は話下手の俺でもスムーズに会話をすることができるようになる。情報が集積され共感が強い場合に能力者になると分析されているが詳しくは不明。中には世界を滅ぼすほどの力を持つ者もいるとか。こうして人類は補助頭脳の機能を停止し拡張現実の技術を手放すことに。しかしもう手遅れ、覚醒した人類は補助頭脳を使わなくてもあるあるの能力を使用できてしまう状態に。能力者を国が保護、その後は普通の生活を送ることができるように国が支援をする。俺のように能力を使い仕事をするのは自由。
「能力者は稀というのがせめてもの救いですかね。だから初期の試験テストで発見できなかったようですが」
「実際の数はわからないから怖いところだがな」
問題なのは把握していない能力者がいること。強烈な頭痛が発生後意識を失い目が覚めると能力を入手といった流れ。それだけなため黙っていればわからない。その力を使い隠れて悪さをするやつがいる。不当な扱いを受けるのではと黙っている人もいるだろう。力を持つ者には人間警戒するからね。はあ、とにかくやらかしてくれたものだ。まあ文句は言いつつ賃金はいいし将来これで食べていけそうだから複雑な心境ではある。俺がこの仕事を選んだのは能力がこの仕事向きだからということで誘われたから。お勉強は得意じゃないからというのもちょっとあるけれども。本来ならそのまま普通に生きて普通に働き普通に死んでいこうと考えていたが、せっかく授かった力、世のために使うのも悪くはないと今の仕事をするように。
「どうだ、仕事は慣れたか」
「ええ、おかげさまで」
アスラさんは元軍人の能力者、今回のように危険な仕事の依頼が来るから彼の元で日々鍛えている。軍事格闘技を習っていて今では一般人くらいなら簡単に制圧できるほどに。能力を使えば簡単に倒せるが制限があるからできるだけ使わず勝利したい。単純に肉体が強いほうが戦闘では当然有利だから鍛えているというのもある。現在はアルバイト、正社員になる条件は大学を出ること。得意じゃないとはいえ勉強はちゃんとやっておけというアスラさんからの指示。世の中どうなるかわからないからね、ある日能力者がいなくなって仕事がなくなることがあるかも。大学を出ておくのは大事だな。
「そろそろ着くぞ」
話をやめ深呼吸をして仕事モードに切り替え。現地に到着、作戦開始。車内にある多数のモニターの電源が入る。中心にはターゲットの切り裂き魔が映っている。顔を隠しナイフを使い人々に切りつける。四件の事件を起こしているが狡猾な奴で今まで証拠を残してこなかった。どんな人物かわからなかったが機関は切り裂き魔であろう男が写った写真を入手した。
「どうやって入手したんでしょうね」
「能力を使ったのでは」
しかしその写真だけでは捕まえることはできない。奴に行動させ現場を押さえる必要がある。
「予定通りの動きだ」
毎回公園の子供達を襲う。切り裂き魔の進行方向には公園が三つ、そのどれかに行きそうだ。しかしここでトラブル発生、電車から降りた人々のすさまじい数に目標の男を見失う。現場は混乱、アスラさんは機材を操作、別の現場にいるグループにマイクで指示をする。
「鬼平さん見失った、探してくれ」
「……見つけた、Bー35だ」
居場所を特定、すぐさま監視カメラが動く。すべてのモニターに同じ人物が映し出される、居た、切り裂き魔だ。
「流石です」
鬼平さんは能力者、扱う能力は野球あるある、その凄まじい識別能力からして「坊主の野球少年を後ろから見て誰かわかる」を使ったのではないかな。この能力は識別力が上がる。少年野球を見に行ったことがあるが全員丸坊主に同じ服だから皆同じに見える、それを後ろからなんて無理ゲー。監督やマネージャーはよく見分けがつくよなと。よく組むから何度も見せてもらった能力だ。切り裂き魔を観察、足取りから公園は一つに絞られる。アスラさんが号令、急いで車でその公園へ向かった。奴よりも先に到着した、後は待つだけだ。
あるあるバトラーズ! 保戸火喰 @hotkaku
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。あるあるバトラーズ!の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます