セックスしないと出られない部屋のドアを設計する人

@sunariver

セックスしないと出られない部屋のドアを設計する人

「えーっと、部屋の中に入っている男女二人がセックスをしたら鍵が開くドアを作って欲しい、ということですね。鍵が開いたのを知らせるランプは要ります? あ、どちらでも良いということでしたらとりあえず見積もりには含めさせて頂いて、ま、要らないなとなったら省く形に、しましょうか。はい」

「ドアのデザインは別ラインで進めて頂いているのでそこはスキップするとして……、えー今回セックスをしたら鍵が開くということなんで、セックスしたかどうかを判定するためにまずそちらのセックスの定義をお聞きしていいですか?」

「あ、男性器を女性器に挿入したらセックス、はい、はい、ちなみに挿入する深さは……、とりあえず一番奥まで? 了解です」

「あー、一番奥までっていう条件なんですけど、女性器の一番奥に男性器が触れたらという意味です? それとも男性器の根元まで挿入されたらということですか?」

「はいはい、女性器の一番奥、ですね、はい、はい、そうするとですね、もし男性器が小さくて長さが足りなかった場合、セックスをしても出られなくなっちゃう可能性ありますね。なのでセックスの条件は男性器の根元まで挿入の方がいいかも、あー違う、そっちだと今度は男性器が大きすぎた場合に問題出てきますね」

「んー、そうですよねー。あ、じゃあ、女性器の一番奥に男性器が触れるか、男性器の根元まで挿入された場合のどちらかでセックス完了ということにしましょうか

はい、はい、いえいえ、解決できてよかったです」

「あちなみにこれって、一回で条件達成にします? セックスって普通こう、何度もするものだと思うんですけど、あ、とりあえず一回で。了解ですー。まあここは後からパッと数字は変えられるんで」

「オッケー、です。じゃあ次はこの条件を満たしたかどうかをどうやって検知して判定するかなんですけど、やっぱり一番簡単なのはユーザーさんにセンサーをつけてもらってそれで判定することかなーと。……すみませんそういうのって可能ですか?」

「あ、つまり女性器の奥にセンサーをつけたり、あとは脳にチップとか埋め込んだりみたいなことですね。あ、できるけどなるべく避けたい、色々根回しが面倒になるので、と、はい、了解です」

「な、る、ほ、どぉ…。となると、間接的な判定にはなっちゃいますが、一番スジが良いのは監視カメラの画像解析ですかねー」

「まあ後はベッドの振動のパターンとかで判定する方法とかも多分あるんですけど、ほら、ベッドでするとも限らないですよね。いえ技術的には多分可能なんですけど」

「ただ画像解析となるとこっちもぶっちゃけ結構かかっちゃいますねー。さっきも言ったように部屋のどこでするかも体位も未確定ですし、裸でするとも限らないので考慮するパターンが多くて」

「ええ、ええ、ですよね。我々としてももちろん。ちゃんとセックスをしたのにドアが開かなくてクレームに発展する事態は絶対に避けたいところです」

「え? やっぱりセックスの条件は男性器の射精にしたい? あー、なるほど……、んーーーーー、そうなるとやっぱりどうしても脳波チップ、ですねー。そこは少しそちらに頑張って頂いて。まあそれでも男側が自分で処理しちゃうケースとか色々考慮しないといけないところがあるので一旦考えられるパターンを網羅して……」

「え? 今ならAIとかでできないのか? ですよねー。そうなって来ますよね。ただですね。今のAIって、結局誰かがAIの出した結論が正しいかどうかを検証する必要があるんですよ。つまり今回のケースだとAIが射精判定を出したとして、その判定に責任を持つ人間が必要なんです。実際に男性が射精してないのにドアが開くのはまだいいですけど、射精したのにドアが開かないのはまずいじゃないですか。現実問題そうそう何度も出せるわけじゃないですし」

「あー、んーーー、そうですねーー、いやー、これ、どうしようかなー。あ、いえ、私の立場でこんなこと言っちゃうと私が上から怒られちゃう話なんですけど……」

「あのー、誰か一人、そちらで人員を充ててもらって、人力でチェックするのが一番早くて安いかなーと思います。えーと、つまり監視カメラで部屋の様子をチェックしてもらって、セックスしたなって思ったらボタンでドアを開錠するっていう。これなら複雑な判定ロジックを実装する手間は省けますし、ユーザーさんからのクレームにも柔軟に対応できるので」

「今想定してるユーザーさんって……、はい、そうですよね。どう考えても両片思いなのになっかなかくっつかない若い男女を想定してますよね。であれば監視する時間も長くて数日ですね。となると人件費として考えても今回のシステム開発を進めるよりはかなり安上がりになると思います。今後もっとセックスをしないと出られない部屋が欲しいねってなった時に改めて我々に検討させて頂ければ嬉しいなと」

「いやー、すみません、私としてもこんなこと言っちゃうと本当はダメなんですけど、でもやっぱり御社のために最適な提案をしたいなと思いまして。すみませんちゃぶ台をひっくり返すようなこと言ってしまって、あ、いえいえ」

「あ、はい、では一旦この案は持ち帰って頂くということで、取り急ぎこちらでも監視カメラとモニタリングシステム、あと施錠の遠隔操作システムの見積もりだけ出しておきますね」

「はい、はい、いや、今日はありがとうございました。今後ともよろしくお願いしますー。はい、はいー」

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