第3話:独りでも。それが現実でも

 私も老人の片足をつっこんでるのか。




 最初は落ち込んでいたのに今では副業先やメインの仕事を一年ごとに考えながら選んで楽しんでいる。





 今回は久しぶりに空いた時間で日常を楽しんでみることにした。






 お料理教室に昔は行きたかったのに現代はスーパーでお金の管理をすれば無理に自炊じすいしなくてもいいと知って仕事以外の人間関係は減らしている。






 たまに起業までする友人と話すこともあって比較したこともあったけどさすがにそこまでの力はきり子は使わない。






 ただ起業した友人は旦那だんなが亡くなってすぐに好きなだけ泣いていいと言ってくれたので長続きするよう関係を大切にしている。






 思っていたよりも家庭や生活が苦しい人達はおおぜいいて、分かりあえないと思っていても話をしてくれた人達と出会えた。






 社会や強者がぶつけてくる幸せからの洗脳が解けた先にこれから自分たちが持てる経験をどこで誰とどのように使い、弱い立場にあってもよりそえるかが重要になってくる。






 古い人間の教養きょうようを教えられても『かたよった幸せ』を押し付けられるので自分の人生は自分で決めるしかない。






 今日も仏壇ぶつだんの前で手を合わせる。

 旦那だんなは日本の文化が苦手だった。

 セールスを断れなくて買ってしまった仏壇ぶつだんから旦那だんな解放かいほうさせるためにきり子は働く。







 あまったお金で健康にも気をつけて介護されないように子供たちからも自立する。






 もう恩着おんきせがましいことも言わない。






 改めて思い知った。

 時代に流されるわけにも取り残されるわけにもいかないと。





 できることはまだある。

 きり子は今日も気を引き締めた。






 でも正直つらい。

 だから考えすぎないよう旦那だんな遺影いえいの前で今日からできることで日々ひびを乗り越えることをちかう。






 独りをほこるつもりもない。

 ひとりの人間として生きていく。





 つきつけられる現実とともに。



〈了〉

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主婦タイマー秋月 釣ール @pixixy1O

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