不穏な通学路

 私が最初に違和感に気がついたのは学校前の丁字路であった。


 ある日、やっとのことで学校の前の通りに辿り着き、最後の丁字路で車が通り過ぎるのを待っていた。「早く通り過ぎないかなぁ」と思いながら、ふとカーブミラーを眺めると、そこについているはずの鏡の部分がなくなっていた。「あれ、定期点検なのかな」とだけ思い、その日は終わったのだが、一日空けた日にまた見てもやはりない。流石におかしいなと思って一ヶ月ほど確認を続けてみても鏡が戻った日はなかった。なくなっていたのは鏡の部分だけなのでなんとも不気味なのだが、自分には何もできることがないので仕方なくこのまま見守っている。


 次に違和感があったのはやや大きめの通りであった。部活帰りにすっかり暗くなった通学路で自転車を走らせていると、道ゆく人が皆同じ方向を向いていた。何かあったのかとその方へ目を向けると、ガードレールがひしゃげて歩道に倒れ込んでいた。見るからに車が突っ込んだのだとは思うが、そこには車はおろか、飛び散った破片さえも見えなかったので不思議である。アスファルトが黒かったのや、そもそも周りが暗かったのが関係していると思うが、それにしても片付けが早いなぁと何か変な感じがした。


 それからは自分にも何か恐ろしいものが降りかかって来るのではないかと私も危機感を感じ、しばらくヘルメットを被って登校する日々が続いた。不吉なことばかりでいつか事故に遭うのではないかとヒヤヒヤしながら走っていると、とうとう三日連続で転ぶことがあった。しかも何もないところで…… どれも大きな怪我や事故に繋がらなかったからよかったものの、どうしても“なくなったミラー”と“ひしゃげたガードレール”の存在が頭をよぎる。だが、考えても仕方がないのでこの違和感を無視することにした。


 そこから何日か経った自転車で帰った晩、ついに風邪をひいた。原因は寒暖差と思われるが、タイミングが不気味である。これがじわじわと追い詰めてくるタイプの怪異だとこれ以上は何されるかわからない。


 それに加えて数日前、ついに自転車が壊れた。壊れたと言ってもチェーンが高頻度で外れるようになっただけなのだが、通学に支障が出てきたので修理に出すことにした。お店からは代車を貸し出してもらったものの、どうしても嫌な予感が拭いきれないので電車通学が多めになった。


 結局、ガードレールは撤去されて新しい物の準備がされていたが、カーブミラーは放置のままである。今度警察の方に伝えたほうがよいのであろうか。それとも神社にお祓いにでも行ったほうがよいのか。早く解決されて欲しいものである。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

亡霊エッセイの集会場 布団 @fukkafukano

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ