サイドメニュー未遂

 この間、部活の終わりに仲間と帰ることがあった。その日は大会が午前中に終わったので、みんなで何か食べて行こうという話になり、駅の近くのバーガーキ○グに立ち寄ることとなった。


 ハンバーガーなんて久しぶりに食べるなぁと思いながら外に貼られているメニュー表を眺めるとその値段に驚いた。なんと、セットのほとんどが900円を超えており、単品でも結構な額となっていた。結構な額と言っても500円以上という程度だが、月1200円のお小遣い感覚から言わせると結構なものである。


 「おにぎりがあるからサイドメニューだけにしようかな」と逃避の準備をしていると、後輩のうちの一人から「布団さん、何にしますか?」と純粋で全くの悪意のない質問を浴びせられた。


 ついさっきまでサイドメニューで済ませようと思っていたものの、流石に飲食店に来てサイドメニューしか頼まない先輩を考えると情けない感じがしたので、とりあえず三番目くらいに安いビ○グチキンフィレを指差した。一番でもなく、二番でもなく、三番目に安いというのがなんともチキンなのだが、そういう性分なので仕方あるまい。


 そうすると、後輩は「おぉ、いいっすね。僕もそれにします」と言ってレジへ向かっていった。メニュー前に残された情けない先輩は、今度はセットで買うか、ポテトだけ追加で買うのが安いのか悩んでいる。


 そんなことでたったの100円程しか変わらないし、親からお昼ご飯代ももらっているので自腹ではないのだが、自分のお金でないあまり、使うのに遠慮してしまう。そういうところがやはり格好悪いのだ。そうして結局、バーガー単品だけで注文を終えた。


 仲間の注文も終わって支度も終わり、自前のおにぎりとバーガーを食べながら話しているとサイドメニューの話になった。どうやら「サイドメニューしか頼まないのはお店によくない」というのが話題になったのだが、何故よくないのかは覚えていない。そういった他愛のない話でお昼を終えて、電車で帰った。


 帰りの電車の中で、後輩に言われるまでサイドメニューだけにしようとしていた私は結構危なかったのではと思い、あの時、声をかけてくれた後輩に心の中で感謝を伝えた。そして、次回はセットを頼めたらいいなぁと他力本願でよくわからない祈りも捧げ、電車に揺れた。

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