エピローグ・満月

満月の夜、ついに月影は美月の前に再び現れる。「お前の時間は来た。月へ戻るか、このまま地球で生きるか、選ぶのはお前だ。」


美月は月に戻るべきか、それとも藤原と共に地球で生きるべきか、究極の選択を迫られる。月影は、彼女が本当の自分を取り戻すことが重要だと言うが、藤原との関係が彼女を地球に引き留めていた。


その夜、美月は一人で屋上に立ち、輝く月を見上げながら決断する。藤原のことを想いながら、彼女はそっと涙をこぼす。しかし、心は決まっていた。



満月の夜、美月は藤原に最後の言葉を告げるため、屋上に彼を呼び出した。空には大きく輝く月が静かに二人を照らしている。美月は月を見上げながら、心を決めて藤原に向き合う。


「藤原さん…私は、月から来た存在なのかもしれない。でも、ここで生きてきた時間が本物で、あなたとの時間が何より大切なの。」


藤原は美月の言葉に少し驚きつつも、その瞳を見つめ、静かにうなずいた。彼はゆっくりと近づき、彼女の手を取り、そっと握る。


「君がどこから来たかなんて関係ない。俺が知っているのは、今ここにいる君だ。君と過ごす時間、それが俺にとっても大切なんだ。」


その言葉に、美月の心は一瞬、揺れる。彼女は月影から告げられた運命に従うべきか、それとも自分の心の声に従うべきかで迷っていた。しかし、藤原の温かな手が、彼女を現実に引き戻す。


「月に帰るべきだって、わかっている。でも…」


美月の目から一筋の涙が頬を伝う。しかし次の瞬間、彼女は藤原の目をまっすぐ見つめ、決意を込めた声で続けた。


「私は、あなたと一緒に生きることを選ぶ。ここで、地球で。あなたと一緒に。」


藤原は微笑み、そっと美月を抱きしめる。その温もりに包まれた美月は、初めて心の底から安心感を感じた。そして、二人はゆっくりと見上げる満月を一緒に見つめる。


月の光はどこまでも澄んでいて、まるで二人を優しく見守っているかのようだった。


その夜、二人の間に芽生えた愛は、静かに、そして確かに、月の光の下で永遠に輝き始めた。美月はもう二度と月に戻ることを望まず、藤原と共にこの世界で生きていくと決めた。だが、月はこれからもずっと、彼女たちを照らし続けるだろう。


彼女は月の姫かもしれない。しかし、地上で見つけた愛とともに、新しい人生を選んだのだ。

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鏡花水月 音心みら🫧 @negokoromira

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