十日夜

月影との出会いから数日後、美月は次第に藤原との距離を縮めていく。仕事のパートナーとしてだけでなく、彼との会話が彼女にとって次第に心地よいものとなり、やがて二人の間には微妙な感情が芽生え始める。


ある日、二人は深夜のオフィスでキャンペーンの最終案をまとめていた。外には満月が輝き、部屋の中にもその淡い光が差し込んでいた。藤原はふと窓の外を見ながらつぶやく。


「月って、不思議だよな。いつも見てるのに、なんでこんなに特別な感じがするんだろう。」


美月はその言葉に胸が高鳴った。彼の言葉が、自分の感じていた月への想いと重なるように感じたのだ。


「藤原さん、もし私が…もし私が、あなたと違う世界の人間だったら…どう思う?」


藤原は少し驚いて美月を見つめるが、すぐに笑顔を見せる。「そんなの関係ないさ。君がどこから来たって、今ここにいる君が大事だろう?」


その言葉に、美月は何かがほどけるような安心感を覚えた。彼女は月影に告げられた自分の運命に対して迷いながらも、藤原との時間が大切なものになっていくことを感じ始めていた。



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