第8話
10月20日、全身ヤケドしてますが私は今日も元気です。
いま私は基地のベッドで横になっています。…まあ、この部隊に衛生兵はいませんし、野戦病院もなかったので特別に将校が寝泊まりするところで横になっているだけですが。
先ほどユーリ先輩がやってきて、タウラちゃんは3時間後、グラウンド100周の刑っすよ。と意味深な事をいっていましたが、そろそろその3時間が経とうとしています。
「ミウラさんここっす」
「分かった、私に任せておけ」
「タウラちゃん、入るっすよー」
おや?噂をすればユーリ先輩が来たようです。そしてもう1人誰かいるみたいですね。
うわ、ものすごい美人な方です。ロングの黒髪も、戦場でどうしてあれほど良い状態に保てるのかと不思議なくらい。
あぁ……少し視線を下ろすと、丘くらいあるだろうと思っていた私のそれが絶壁のように感じられて、とても虚しくなりました。
人と話す時は目を見て話す。人として当然だってハッキリわかんだね。
「お前がタウラ下等歩兵だな?」
「は、はい!そうですが…貴女は?」
「私か?私はミウラ特等歩兵だ。サージとは同期だ。よろしく」
「よ、よろしくお願いします!ぅ、いたた」
寝たままですが敬礼しようとしましたが、体中が痛くてうまく行きません。
せっかくサージ先輩に拾っていただいたこの命を、上官に敬礼しなかったなんてくだらない理由で失うわけには行きません。
無理やりでも敬礼しなくては……!
「無理に動くな、傷に響くぞ。……おいユーリ、いつまでここにいるつもりだ?それとも…お前もサージのような趣味を持ってしまったのか?」
「い、いやいやいや!それはあり得ませんから!では失礼します!タウラちゃんは終わったらすぐにグラウンドに来るように」
「は、はい!」
グラウンドに来いって…反射的に「はい」と言ってしまいましたが、このケガでは行けるはずないじゃないですか?
「ではタウラ、これから回復魔法を行使する。お前、まだ『ヒール』の使い方は教わっていないよな?」
「そ、そう、ですね…?」
回復魔法とは、衛生兵だけが使える魔法じゃないんですか?
「そうか、なら丁度いい。いま『ヒール』の使い方を覚えろ」
「え、あの、回復魔法は衛生兵じゃないと使えないんじゃ……」
「ふむ…実は、回復魔法は女性なら誰でも扱えるようになるものなんだ。男性は適性がないと無理だがな」
「そ、そうだったんですか…!」
そういえば『盾』も重装歩兵が使う魔法だと思っていましたが、本当はほとんどの兵士が使えますもんね。
この調子で行くと、まだまだ私でも習得できる魔法がありそうです。
「……とまぁ、『ヒール』の使い方はこんなものだ。何度も使っていけば、1日で使える回数も、質も上がっていく。お前は新兵だからよく怪我もするだろう、『盾』と並行して練習するといい」
「は、はい!ありがとうございました!」
ミウラ先輩の教え方はすごく上手で、すぐに『ヒール』を習得できました。
そしてあれだけ酷かったヤケドも、跡形もなく消えてくれました。
……まぁ、そのせいでこの後ユーリ先輩にきっちりグラウンド100周させられましたけどね。
新米歩兵ちゃんが一人前になる話 みこ丸 @rensouhou
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