第7話

「敵襲!敵襲ー!!」


 10月19日、私にとって2度目の戦闘が起こりました。

 この時の敵将は、前回私たちを撤退に追い込んだネームド、「爆炎の使者」と呼ばれる男でした。



「タウラ下等歩兵は敵魔導士を狙撃してくれ!支援は俺に任せろ!」

「了解です!」


 今度の戦闘ではサージ先輩と共闘することが出来ました。


 まずはあそこの……いまっ!


「や、やった!」

「1人倒しただけだろ!いちいち喜ぶな!まだまだ敵は多いぞ!」


 頑張って倒したのに怒鳴られました。少しくらい褒めてくれてもいいんですよ。

 しかし先輩の言うとおり、敵はまだまだ沢山いました。



 ここで一度戦況を見てみますと、連合王国の魔導士達が私達の基地に攻撃してきた形になっております。

 奇襲だったので、出遅れた私たちは基地の周りに張り巡らした有刺鉄線を突破されています。

 有刺鉄線の次には魔法の地雷が埋めてあります。敵もそのことに気付いているのか、近づいてきません。


 敵は騎兵と歩兵、魔導士という編成で、魔導士は100あとは200ずつと500人もいます。

対する私達は全員が歩兵ですが、装備しているのは剣ではなく銃です。規模は中隊規模なので80人程しかいませんね。


 正直なところ私たちの不利です。しかも相手にはネームドの魔術師、勝ち目はないでしょう。

 ここは遅滞戦闘を……



「ツーロン小隊集合!…これより我らツーロン小隊は、敵ネームドの討伐作戦を敢行する!この作戦が成功した暁には、後続のソンム小隊、ランス小隊、ハランド小隊と共に敵の包囲網を破壊できるはずだ!皆、心してかかれ!!」

「「「ハッ!」」」

「ツーロン小隊、進めェェェ!!」

「「「オーーー!!!」」」


 どうやら私の隊は勇敢にも敵に突撃するようです。この戦いで無様に死なないように、気をつけていきましょうか。

 普通にこんなところで死にたくはありませんし。


「目標は『爆炎の使者』の首ただひとォつッ!雑魚は無視してどんどん進めェ!!」

「「「ウオーー!!!!」」」


 皆さん雄叫びをあげて次々に突っ込んでいきます。私も続かなきゃ。小隊長殿に怒られてしまいますから。



 サージ先輩の後ろについて走ります。

 走りながらの射撃なんて初めてでしたので、狙いをつけるのがとても難しいです。危うく同士討ちしてしまうところでした。


 先輩は手慣れたふうで、歩兵たちを次々にやっつけて道を切り開いてくれています。


 戦場でこれほど頼りになる先輩も他にはいないでしょう。平時ももうちょっとまともであったなら満点だったのですが……。



「タウラちゃん!!」


 先輩が私の名前を呼びました。


直後

 身体中を焼けるような痛みが襲いました。敵の魔導士が放った「イラプション」が私を直撃したのです。


「イヤァァァァ!!!!死にたくない!死にたくない!」


 ジュウジュウと音を立てて着ていた軍服が燃えていきます。肉まで届くのにさほど時間はかからないでしょう。


「ゲホッ、ゲホッ!」


 煙を吸い込んでしまいました。いつぞやに見た歴史の教科書に、生きたまま焼かれている挿絵がありましたが、あの人たちの気持ちがわかった気がします。


「た、タウラ!地面に伏せて転がれ!」


 先輩が何か言っています。きっとバカな私を嘲笑っているのでしょう。

 死にそうになのに助けてくれないのは、私が役立たずの新兵だからなのでしょう。


 あぁ、肉が焦げる匂いがします。

 ごめんなさい、お父様。仇を取ろうと思っていましたが、到底叶いそうにありません。

 どうか不甲斐ない娘を許してください……。


「クソッ!水爆弾を使う!みんな離れろ!」


ドウッ!シュウゥ……


「あ、あれ?…た、助かっ……た?」


「あぁ、タウラちゃんはまだ死なないさ。今はここで休んでな、帰りに拾ってやるよ」




 人生2度目の戦闘…あれ?……で私は右肩から左腿までをヤケドしてしまいました。


 先輩はそういう時に限って近くにいないですもんねと毒突いていたら、私についた火を消化してくれたのはサージ先輩だったようです。


 あの時は痛みと恐怖で混乱していたので分からなかったのですが、先輩は的確なアドバイスをしてくれていたみたいです。私が話を聞ける状態ではないと判断した先輩は、迷わず「水爆弾」を使って助けてくれたそうです。


 「水爆弾」は酸素?というものを取り込むと水を出して爆発する物だそうで、特等歩兵の中でも一部の方にしか支給されない貴重品だとサージ先輩は言ってました。俺はそんな凄い先輩何だぞっ、とも。


 本来なら先輩が自分のために使うはずだったのに、私に使うことになってしまって申し訳ない気持ちです。

 そういえば最初の戦闘でも先輩に迷惑をかけてしまいましたね。私は人に迷惑をかけてばっかりで、ほんとうに自分の未熟さが恥ずかしいです。



 戦闘は結局私たちの勝利に終わりました。私たちツーロン小隊は見事敵将を討ち取ることに成功し、それを皮切りに他の小隊と協力して敵軍を退けたようです。


 こちらの被害が死者2名、負傷者1名なのに対して連合王国側は死者200人超、負傷者100人超と、私たちの完勝でした。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る