第5話「アマビコとくだんの日常」
ある晴れた日の昼下がり、みんなが仕事に出かけていて。アマビコはくだんの面倒を見ながら、留守番をしていた。
アマビコが洗濯物を畳んでいる横で、くだんは、カーペットの上に寝転がって、自分のひづめをしゃぶりながら、眠そうにうとうとしている。
「アマビコしゃん、眠いでちゅ~」
「くだんよ。昼めしはお好み焼きにするから、もう少し待っていてくれ」
「うええん、無理でしゅよぅ~」
くだんは、半べそをかきながらこてんと寝てしまった。
「ああ……仕方がないな。寝ている間に作っておくか」
くだんの体にタオルケットを掛けて、アマビコがそうつぶやいた時、ピンポーンとインターホンが鳴った。
「誰だ?」
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「アマビコ(人の姿)aiイメージイラスト」
https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093087370898969
彼が、ガタイの良い茶髪の人間の男性に変化して、玄関に出てドアの窓から覗いてみる。
ドアチェーンを掛けて、対応をしようとドアを開いた、すると。
目の前には、サラリーマン風の中肉中背の中年男性が、にこやかに立っていた。
その様子にピンと来た、アマビコはドアを閉めようとする。
しかし、男性は足をドアの隙間に無理やり、ねじ込んで来た。
――なんだコイツ――
その嫌なやり方にイラッとする彼に、男性は平然として言った。
「待ってくださいよ、お兄さん。良いお話があるのですが」
「――忙しいから、帰ってくれないか」
「そんなこと言わずに、お兄さん。私を助けると思って!」
「知らんな、足をどけて帰ってくれ」
「またまた~、私には子供が三人いるんです。話だけでも、聴いてください。助けてくださいよ~」
「子供、か? お前に子供がいると。お前には、妻も子供もいない。犬が一匹いるだけだろう」
アマビコは、得意の能力で男性の家族関係を明かして見せた。
「なっ、どこで聞いたんですか! それ……私とは、初対面のはずですよ。占い師か何か知りませんが、口から出まかせを言わないでください」
男性は、思わず身震いした。
「そうだ、おれは占い師だ。さあ、理解したなら帰れ。警察を呼ばれたくないならな。お前に構っている暇は無い」
男性は舌打ちをすると、足をどけて帰るかに見えたが。アマビコの脳裏には、二日後にまた、この家に訪問するこの男の映像が映っていた。
「仕方がないな」
アマビコは、溜め息を吐くと男性の耳元でささやいた。
「いつまでも、こんなことをしていると、“
「なんだって!?」
男性は顔を真っ青にすると、アマビコに心底恐怖して、逃げ帰って行った。
咲子は、十年前に亡くなった男性の母親の名前だった。
「やっと、帰ったか。しつこかったな、今回の奴は」
アマビコは、やれやれと呆れながら、溜め息を吐くと居間に戻った。
居間ではちょうど、くだんが起きていて、汽車のおもちゃで遊んでいた。
「遅かったでちゅね。アマビコしゃん」
「ああ、しつこい人間のセールスマンだった」
「お好み焼きを用意する時間が、なくなってしまったな。ありあわせのチャーハンと、インスタントの玉子スープで良いか?」
「わぁい。チャーハン、大好きでちゅ~」
アマビコは、ふっと柔らかな微笑みを浮かべると台所に入って行った。
アマビエ♂の日常 夢月みつき @ca8000k
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