第4話「ヨゲンノトリと赤ちゃん」
ある晴れた日、ヨゲンノトリが空の散歩をしていると一軒の家から、
彼らが、二階の窓ごしから、家の中を覗くとベビーベッドに可愛らしい赤ちゃんが寝かされていて、すやすやと寝息を立てて眠っていましたが……
赤ちゃんの上には、疫病達が乗っていて赤ちゃんの体内に入ろうと
それを目撃したヨゲンノトリの顔がみるみる、険しくなる。
「赤ちゃんが危ないクアア!」
ヨゲンノトリは、窓を通り抜けて部屋の中に入り、疫病達の注意をこちらに向けようと、必死に鳴いた。
「ギャースギャース!こっちに来い!ハナタレ疫病ども」
黒い羽根をバタつかせ、黒と白の二つの頭で一斉につんざくようなけたたましい、声を疫病に浴びせる。
キキキィ、キィキィ。
疫病達はヨゲンノトリの挑発に乗って、彼らに襲い掛かった。
「クアア、クアアーーー!!」
ヨゲンノトリは大音量で超音波を出し、疫病達は弾け飛んだ。
これだけの戦いが繰り広げられていても、妖怪の声も姿も、視えない人の赤ちゃんは、すやすや眠っている。
「これでよし、クア!」
しかし、ふと赤ちゃんのことが気になったヨゲンノトリは、ベビーベッドの中を覗き込んだ。
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すると、妖怪であるヨゲンノトリの声も姿も視えないはずの人間の赤ちゃんが、ヨゲンノトリを見て、にこーっと笑っていた。
「オレタチを見て笑ってる、そういえば、アニキに聞いたことがあるクア。人間の子は純粋であれば、あるほど。オレタチが視えるって」
「きゃっ、きゃっ」
ヨゲンノトリを見ながら、無邪気に笑っている赤ちゃん。
「……可愛いクア、良かったなぁ、赤ちゃん。そろそろ、オレタチ、家に帰るクア。アニキ達が待ってる」
家から出ようと、ヨゲンノトリが背を向けると、突然赤ちゃんが泣きだした。
「ふええ~、ふえ~」
その泣き声に後ろ髪を引かれる、彼ら。
「また、遊びに来るクア。元気にしててクァ~」
優しい微笑みで、ヨゲンノトリが笑い掛けると、赤ちゃんは彼らの妖術で、眠りに落ちた。
パタパタと、階段をのぼって来る音がする、多分赤ちゃんの声を聞きつけた母親だろう。
「元気で」
ヨゲンノトリは、そう赤ちゃんに伝えると、赤ちゃんのベッドに吊るされたメリーゴーランドに自分の羽根を一本抜いて、括り付けた。
「オレタチが来るまで、疫病が来ても、ダイジョブなよ~に。
その時、後ろから声が聴こえた。
「ヨゲンノトリ」
ヨゲンノトリが振り向くと、アマビエが壁に寄りかかって立っていた。
「アッ、アマビエのアニキ―!迎えに来てくれたんですクア?」
「お疲れ、夕飯だぞ」
ヨゲンノトリとアマビエは、家を後にした。
その帰り道。
「アニキ―、今日の夕メシはなにクア?」
「今日は納豆巻き」
「ヒエ~、なっとう!」
「はは、嘘、サーモンのムニエルだよ」
「クア~、アニキ~」
「あははっ」
夕暮れの住宅街を二人は、笑いながら家に帰って行った。
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