第3話「アマビエの秘密」

 ある日、いつもは誰よりも、早く起きるアマビエが、今日に限って起きて来ないので、神社姫が呼びに行くと、アマビエの布団に超絶イケメンな青年が眠っていた。

 


 ポッと頬を染めて、青年を見下ろす。



「あらん、良い男、じゃなかったん。ちょっとぉん、あなた!アマビエの布団でなにをしてるの!」



 神社姫は、イケメンさんをゆさゆさと、ゆすってみた。



 そのイケメンさんは、眠い目をこすりながら、ゆっくりと起き上がり彼女を見て言った。


「んだよ、うっせえな……朝から」


「そのツンデレな、イケメンボイスは……もしかして」



 イケメンさんは、気怠そうに手鏡を手に取って、顔を映してみる。

 鏡には、長髪で青い肌、青い瞳の不機嫌そうな顔が映っている。




「……ああ、久しぶりだな。これ」


「あなた、アマビエなの?!」


「まあ、そういうことだ。たまに俺が、人間だった頃の姿に変わるんだよな」


「きゃあんっ、アマビエ!いつも、素敵だけど今日はいつにも増してぇん!」

 神社姫がアマビエに飛びついて来た。


「おわっ!?飛びつくんじゃねえ!落ち着けっっ」



「これが、落ち着いていられますかっ!好き~~っっ!!!」

 貞操ていそうの危機を感じたアマビエは、キスを熱烈に迫る彼女の顔を押し戻した。



 アマビコに目隠しをされている、赤ちゃんのくだんは別にして、アマビコ、ヨゲンノトリは、アマビエの姿が変わる事を既に知っているので、二人を生暖かい目で見ていた。




「今回のアマビエ」aiイラスト

 https://kakuyomu.jp/users/ca8000k/news/16818093085901812395




 🔷




 疫病と交戦中のアマビエと神社姫、その仲間達。



「うらあっ! アマビエしんけん!!!」



 両のこぶしに青き闘気を纏い、疫病に目にもとまらぬ連撃を繰り出す。

 掻き消える疫病達、彼はアマビエ清流破せいりゅうはを放ってとどめを刺した。


 消し飛ぶ疫病、アマビエの額からキラキラと汗が飛び散る。

 ビッと、ファイティングポーズを決める。



「きゃあんっ、痺れるん。カッコイイ~~!!!」



 隙あらば、アマビエに抱きつこうとする神社姫。仕事に集中できない。


「戦いに集中しろ、殺られるぞ!」



 アマビエが、厳しい顔で注意してすごんでも……



「良いわぁん、その表情かお!もっと、怒ってえ」


 その時、神社姫の背後に疫病が迫り、神社姫を襲った。


「危ねッ!」


 アマビエが身を挺して神社姫を庇った。



「うあっ!!!」


「きゃあっ、アマビエッ!」



 アマビコが駆け付け、太い腕を振るって鋭い爪で疫病を切り裂いた。

 ガクリと片膝を付き、うなだれるアマビエを背にアマビコは、声を荒げる。



「何をしている、神社姫!アマビエを早く避難させるのだ」


「うんっ!」



 ヨゲンノトリ、くだんと共に疫病を一掃するとアマビコと神社姫はアマビエを連れて家に戻った。






 🔷







 妖怪は、人間のように疫病に掛かって亡くなることはない。傷の回復も人の数倍早い。

 だが、深手を負うと自身で癒す為に数時間、活動停止して死んだように眠るのだ。



 小豆はかり医師が診察に来た後に、神社姫とアマビコ、仲間達は看病をして、その翌日にアマビエは回復をした。



 アマビエが朝早く、目を覚ますと自分の周りで仲間達が眠っていて、傍らで神社姫も眠っていた。

 彼の姿は、いつの間にかいつもの姿に戻っていた。



 気配に気づき、目を覚ます彼女にアマビエは、微笑み言った。


「怪我は無いか?」


「アマビエ、ごめんね」


 アマビエは神社姫の涙を右手でぬぐった。

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