第十話 罰

 タマスは爆発しそうな怒りを抑えながら聖女に報告をする。


 「ごほんっ!んん!...ご指示通り炎の恩寵者ピューラを連れてきました」

 

 「ピューラ!?」


 ずっと気がかりになっていた存在の名前を出され驚きタマスの周りを見るがその姿はどこにもない。

 

 「では、お出ししますね」


 タマスの影が波打ったと思ったら、彼女の影から特徴的な赤い髪の少女がゆっくりと出てくる。


 「ピュ、ピューラ!?」


 出てきたのは間違いなく彼女だった、が気を失っているのか反応がない。


 「ああ、私のの中は空気が薄いから慣れてないと入ったら気を失ってしまうのよ。おーい、起きなさい」


 タマスがぺちぺちとピューラの頬を叩く。


 「ん...?…はっ!あんたよくも!」


 気が付いて起きたピューラがタマスにつかみかかる。

 タマスは僕の方を指さしてピューラに示す。


 「ほらあっちあっち。お目当てのフォル君よ」


 「ピューラ!」


 「ああ!フォル!無事だったのね!」


 ピューラは思いっきり僕に抱き着いてくる。


 「...感動の再開に水を差して悪いが、お前らの処遇と罰について言い渡す」


 二人の様子を見ながら教王が気だるげ層に発言する。


 「....この人だれ?」


 ピューラが彼女からしたら当然の疑問を口にする。

 聖女がその疑問に答える。


 「このお方はこの世に点在するオーベス教教会組織を統括、管理する実質的トップであらせられる教王陛下ですよピューラさん。ちなみに私は聖女と呼ばれているスピルと申します」


 「...え、え?」


 ピューラは困惑している。

 いきなり普段なら雲の上の人物がいきなり2人も目の前に現れたのだ、困惑するのも無理もない。


 教王はピューラの困惑を意に介さず話を進める。


 「では処遇についてだが、フォルお前は裁断機構に所属し我々のに協力してもらう。」


 「え?汚点ってあの神へ至るためのあれですか?」


 「そうだ我々はその中の一つをここ最近断定した、その払拭作業に協力してもらいたい。」


 「その汚点とは何なのですか?」


 僕たちの神に文句を言う目的へ至るための難業の一つ。はっきり言って当てもなく探し続ける気だったけど早くもわかるとは。


 「教えるのは後だ。その前に...タマス」


 教王が名を呼んだ瞬間タマスが動きピューラを床に押さえつける。


 「っ!いきなりなを…」


 教王様は続ける。


 「そしてピューラお前には罰を受けてもらう」


 「な、なんでよ?」


 「お前らが来る前に幹部連中と話し合った結果、炎の恩寵は主による最大の秘跡だ。

  しかし、異端者の処罰には例外はあってはならない。

  そこでだ、炎の恩寵者にはありとあらゆる苦痛に耐えるという罰をもってその罪を雪がせ、そのうえで我々の管理下に置くことに決定した。」


 「そ、そんなの嫌よ!ふざけないで!私に理不尽な罪を背負わせて勝手に罰しないで!」


 ピューラが抵抗しようとするがタマスは押さえつける手に息がうまくできなくなるほどの力を入る。


 「グッ...!」


 「ダメだ。我々は主の威光を汚す者、陥れる者を許さない。覚悟しておけ、これからお前に与える苦痛は常人なら死は確実、それに耐えきってこその恩寵者、耐えきれなかったらそれまでだ」


 理不尽この上ない台詞を言い終えると教王様はタマスに地下のへ連れていくよう指示する。

 僕はその事態の性急さ、教王様のその威光の護持者たる威圧感に押され何も発言できなかった。

 タマスにより気絶させられたピューラが鎖で拘束され再び影へと収容されていく。

 タマスと教王は部屋の外へと向かい始める。

 あぁ、だめだ。こんなの理不尽すぎる。

 僕は意を決して教王様を呼び留める。


 「あの!待って下さい!」


 「なんだ?寵愛者よ、お前はこの者の罰が終わるまで聖女とともに待機だ」


  立ち止まりこちらに振り返った教王様に最初の気だるげさは感じない


 「ピューラの罰は僕が受けます!」


 僕の発言にタマスはありえないという顔をし、聖女様は口を開けぽかんとしている。

 教王様は 「戯言を…」とつぶやいた。


 「冗談ではありません、僕が彼女の罪を贖罪します」


 「それになんの価値がある?」


 「貴方がに利益があります。

  あなたたちは汚点を解決しに行くんですよね?汚点はの解決はきっと困難なもののはず。

  ピューラの力は絶対役に立ちます、その力が僕が罪を代わりに負うことでリスクなしに得ることができます」


 「ほぼ確実に死ぬのだぞ?」


 「僕は寵愛者なんでしょ?どうせあの神々に生かされます」


 そう僕はどうせ死ねない、ならそれを最大限利用してやろうじゃないか、それに、ピューラにはできるだけ理不尽な思いをしてほしくない。


 教王様は少し笑みを浮かべて僕に問うてくる


 「覚悟は決まっているか?」


 「........はい」


 僕の返事を聞いた教王様はタマスに指示しピューラを聖女様へと預け、僕にタマスについていくよう指示し部屋からでてどこかへ向かっていった。

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