第九話 謁見
客室に寝かされたフォルと違いピューラは大聖堂の地下牢で目を覚ましていた―――
「ここからだしてよ!...早く出せここを燃やすわよ!?」
目を覚ましたピューラはいつまでたっても誰も姿を現さないので牢の外へ叫んでいた。
ここはどこなの?早くあの女をもう一回燃やしてやりたいのに...
「ガキはよく叫ぶわね。」
通路の奥から憎き女の声が聞こえてくる。
「主はどうしてこんな子に炎の恩寵を授けられたのかしら。」
そうつぶやきタマスはピューラが叫ぶ牢の前で立ち止まる。
「お前は!よくもフォルを!燃やしてやる!!」
ピューラがタマスを燃やそうとした瞬間足元から棒が射出されのどを強打する。
「グッ...ガッ!」
「無駄無駄、いくらあなたが見えている私を燃やそうと私の
「ゴホッ、ケホッ、嘘を言うな私は確かにフォルが冷たくなっていくのを感じたんだ!」
「本当だって。彼は
「それならここからだしてフォルに合わせろ!」
「はいはい、そう騒がない。あなたはいま異端審問にかけられているの。今、教王様と幹部の方々があなたの処遇について議論されてるわ結果によって死刑よ?」
「は?あの時も思ったけどなんで私が異端者なのよ」
「貴方がフォル君を利用して得たお金で生活を送っていたからよ。直接的でないにしてもあなたは異端者が得た恩恵を受けていた、それだけでも異端認定なのよ」
「そんなの理不尽じゃない!それだけで死刑なんて…」
「当たり前じゃない、主は不純を許さない、その行いをした者、その恩恵を受けた者そのすべてが生きいてはいけない
ピューラは理不尽を当たり前と断言する目の前の狂信者の、オーベス教の異常性を再確認していた。
こんな世界にした神をあがめる奴らが正常なはずがなかった...。
すると通路の奥からタマスのもとへ一人の騎士が駆け寄ってくる。
「タマス様、聖女様からの伝達」
「なんだって?」
「寵愛者が目を覚まし教王陛下と謁見を開始、それに伴い炎の恩寵者の処遇も決定するので謁見の間へただちに連れてくるように。とのことです。」
騎士の報告を聞いてタマスはめんどくさそうにため息をつく。
「はぁ、みんな人使いが荒いのよね。了解、すぐ向かいます」
タマスが返事をするとピューラの牢のカギ開け中へ入ってくる。
「何をするつもり?」
「移動中に暴れられても困るからね。あなたを私の影にしまうのよ」
タマスはピューラの肩に手を置く。
するとピューラの体が沈み始める。
「は?どうなってるの?なんで?」
「いまあなたの影と私の影は重なっている状態。ならばあなたは私の影の中にいるのと同義。
安心してすぐ出すから」
「うわっ、なんか中生暖かいし気持ち悪い!。ねぇ暴れないから普通に移動させてよ!」
「ダーメ♡」
タマスは最大限の猫なで声でピューラをあおる。
「クッソやっぱあんたむかつく!燃え…」
ピューラは唱え終える前に影へと沈んでしまう。
「さ、速く私も向かおーっと」
タマスはあの夜の時とは違い徒歩で謁見の間へと向かった。
◇
少し前フォルは―――
僕は目の前の大扉が開かれ荘厳な光景を目の当たりにしていた。
扉の奥は大広間になっており、中央には赤い絨毯が敷かれ、左右には木製の長椅子が置かれている。大きな階段の先にある高い位置には玉座がありまさに想像する謁見をする場所であった。
しかし、予想と違ったのは玉座が
しかも大勢の人はおらず扉に一番近い右の長椅子に一人男が座っているだけであった。
フォルが困惑していると聖女スピルが男へ話しかける。
「
「あいつらならささっと返した。ひと段落したとはいえまだまだ仕事は山積み、しかも遠方の地でまた大規模な戦争が起きたらしい...はぁ、また戦死者の埋葬を手配しなければならない。仕事が増えるばかりだ。」
聖女の質問に答えるのは修道服を着た20代くらいの白髪の男性だった。
この人が教王様?どこにでもいそうな修道士にしか見えないぞ…?
「ん?ああ、お前がフォルか。」
はなしかけられたので礼儀正しく返事をする。
「はい!お会いでき光栄です」
「そんなに礼儀正しくせずともよい、今はもうオフだ、この謁見も公式のものではない。」
教王?はあしらう。
なんか軽い人だなとフォルが思っていると、大扉が再び開き誰かが入ってくる。
「お待たせしました、炎の恩寵者を連れてきました」
淑女モードのタマスが入ってきた。
フォルは自分を貫いた人物だからか近寄ってくるタマスを警戒し身構えた。
「フォル君こんにちわ、この前は胸貫いちゃってごめんね」
タマスは開口一番に謝罪をしてきた。
「ま、まぁ僕を狙ったわけじゃないから恨んでませんけど。でもピューラを殺そうとしたことは許しませんよ?」
フォルは警戒しながらも謝罪の一部を受け入れる。
タマスはピューラのことが挙げられたのに一瞬不機嫌になったがすぐに「いいことを思いついた」と言わんばかりの顔をしてあることを提案する。
「まぁ、いちおう貫いたことは許されたわけだし、お姉さんと仲直りの
タマスは両腕を広げ「カモン」とフォルが抱き着いてくるのを待機する。
が、フォルは警戒を解かずむしろ一歩下がる。
場に冷たい空気が流れる。
すると聖女と教王が発言する。
「一度自分を殺した相手とハグしろとか無理でしょう。相変わらずの能天気ですね」
「ハハハ、お姉さん(笑)って、猫かぶりすぎだろ」
聖女は無表情で、教王は高笑いしながらタマスの行動に突っ込みを入れる。
フォルからは引かれ、二人からは突っ込みを入れられタマスはその場で笑顔のまま額に青筋を浮かべ立ち尽くすのであった――――。
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