友重くん

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「リコーダーケツに刺してるとこ好きな女の子に見られた話する？」

友重に「失恋した」と伝えると、そんな面白エピソードのタイトルが返ってきた。

「何故そんな事態になるんだ」

「いやぁ、やっぱ、一つ上の想いというか、秘めたる激情みたいなさ。そういうの表現したいじゃんか」

「一生秘めておけ」

「そのつもりだったんだけど、可能なシチュエーションになっちゃったからね。もう爆発だよ、愛が」

「お前のは愛じゃなくて劣情だよ。しかも極めて特殊なタイプだ」

「果たして劣情なき愛などあるだろうか。所詮人間は動物。欲望に支配された獣よ。貴様だって、女とねんごろになりたいから求愛したのだろう」

「それはそうだが……」

「ならば俺と変わりあるまい。ただ取った手段が異なるだけだ」

「一緒にするな。根本が違う」

「しかし結果は同じ。お互い玉砕。寂しいお一人様の誕生だ」

「……お前と話していると、なにかこう、言いようのない苛立ちが湧き上がってくる」

「おいおい八つ当たりはよしてくれよ。女がいない同士、仲良くしようじゃないか。なぁ」

「……」

肩に回された手を払いのけ距離を取る。生理的嫌悪が著しい。

「……お前、その変態行為を見られた後どうなったんだ」

だが、どれだけ嫌がっても顛末は気になるもので、俺は後退りをしながらそう聞いたのだった。

「精神科へ通院した後強制転校。そうして、晴れて貴様と学友になれたわけだが、学校が変わって俺は喜んでいるよ。なにせ、生まれてはじめて友達ができたんだからな」

「友達などいたのかお前に」

「またまた。貴様と俺は親友じゃないか」

「……」

「誰が親友だ」と言いかけてやめた。何を言っても奴には通じないのだ。だから、ケツにリコーダーを刺すなどという真似ができる。

友重とは今後の付き合い方を考えねばならない。俺はそう思った。