終
自室への戻り道、まだ夜には完全にはなっていなかった。電線とか道路標識とかが、薄暗い空にあった。街を見渡しながら歩いていて、わたしはなぜか変に上機嫌だった。
・・・
とりあえず来た銭湯をあがって、休憩所で座った。かなり昔ながらな銭湯で、エアコンもあるけど扇風機もある。このあと配信があるので、その前になんとなく来た。
なんとなくアイスを食べたけど、やっぱり甘すぎて好きじゃなかった。何口かだけ食べて捨てた。もともとアイスは好きじゃないし、全部食べられないのは初めからわかっていて買ったのだ。それで捨てた。
いつもいる二人の若いほうの人が、なんとなくテレビのほうを向いている。その人は手元になんにも無い。飲んだり食べたりもしていない。
わたしの格好はだらしがなかったけど、ここでは気にならない。
わたしも並んで座ってテレビを眺めたけど、面白くない。
その人は何にも興味なさそうに、ダラっと座っている。何も会話が無いので、わたしは、
「御代子です。わたしの名前。御代子」
どうしてか、わたしはそんなことを口走った。よほど機嫌が良かったんだろう。
その人は思いのほか落ち着いていた。
「御代子?」
と繰り返して、しばらく思いを巡らせてから、「なんか古風な名前だな」と言った。
その言い方は、でもあんまり嫌ったらしくは感じなかった。古風と言われて、悪くはなかったのだ。
(終)
オンラインガール 白象作品 @hakuzou
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