空の下の僕

@Ardashir

もう少し幸せに生きれたろうに。

空が綺麗だ。死ぬには良い日だ。

そう思った。昼下がりの家の中。

服とズボン。綺麗なのがいいな。

靴を履いた。鍵は閉めなかった。

ぬるめの風。そうでもないかな。

歩いていく。どんどんどんどん。

何処へかな。少なくとも近場か。

自分の足音。耳を澄ませて聞く。

うーんとね。やっぱり自然にだ。

それのせい。色々と思い出すな。

小学校の頃。まあ良くはないな。

みんな純粋。だから結構怖くて。

痛かったな。空もまだ濁ってた。

中学校の頃。当然良くはないな。

みんな灰色。馴染めなかったな。

苦しかった。空は少し濁ってた。

高校生の今。良いはずもないか。

みんな大人。僕は雲みたいでね。

少しは楽だ。空だけは綺麗だし。

足を止める。このビル綺麗だな。

入口に格子。少し崩れた壁の穴。

汚濁が無い。嘘だな少しはある。

近くには川。ああ気持ち悪すぎ。

でもやっぱ。このビル綺麗だな。

近くには草。ああ見たくもない。

一回考える。このビル綺麗だな。

空も見るか。うんうん綺麗だな。

ここが良い。格子を掴んで登る。

意外と大変。体は軽いんだけど。

着地いいね。十点満点で完璧だ。

やっぱ九点。土がついちゃった。

顔だけ出す。よしよし中も綺麗。

階段がある。結構苦手なんだよ。

歩いていく。どんどんどんどん。

何処へかな。いや屋上だろうよ。

自分の足音。清澄に響いていく。

小学生の頃。外で殴られ泣いた。

嫌いだった。眩く見てくる空が。

見守る様に。僕を包み守る様に。

中学生の頃。押し倒してやった。

やっぱ嫌い。眩く見てくる空が。

躾ける様に。僕に怒り叱る様に。

高校生の今。特に何も無いけど。

嫌いなんだ。眩く見てくる空が。

捕える様に。僕を見逃さぬ様に。

足を止める。息が荒くなってる。

だから苦手。嫌いじゃないけど。

外へと出る。ぬるい風がなでる。

うんいいね。空が綺麗なままだ。

五階くらい。きっと死ねるよね。

端に立とう。つま先が宙に浮く。

分かってる。僕は美化してるよ。

分かってる。本当は綺麗なんだ。

分かってる。自分が汚濁だって。

僕はただね。僕が特別であってほしかったんだ。

皆と違う色。馴染めない黒や白や灰なんかの色じゃない。

少しでいい。明るくて暖かくて眩い色でいたかった。

ああきっともう少し幸せに生きれたろうに。

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