第3話

私たちがハルに船を造るように依頼をしてから2週間ほどが過ぎた。


その間ホンジョウはハルの話を聞きながら船を造るのにどれだけの材料が必要かということや、市場に出回っている船の材料となる物品の相場や流通量などを調査したり、何やら古い文献を漁ったりと忙しい日々を過ごしていた。


私といえば、用心棒として名を貸している面々たちに島を出ることを伝えに行った後は特にやるべきことはなく、森に向かって狩りを行ったり、日課である鍛錬に励むなど、これまで通りの日々を送っていた。


今日もまた屋敷の傍で鍛錬をしていたのだが、ちょうど昼を回ったあたりでホンジョウが私に用事があってこちらへと訪ねてきたので、キリの良いところで鍛錬を切り上げると、彼に付き添って遠出をすることになった。


そして今、私は彼と共に馬車に揺られている。


「ハル君が言っていた天蓋石と蒼穹核の確保が思ったよりも難航していてね。市場に出回っているものは全て確保したけれど、希少さゆえにそれだけでは足りなかったんだ。」


「蒼穹核はともかくとして、天蓋石まで足りないのか。」


「量が量だからね。蒼穹核よりは市場に出回るとはいえ、ハル君の言っていただけの天蓋石を集めるのは一筋縄じゃいかないさ。」


「お前が言うならよほどのことだろうな。」


「そういうわけで、2か月で規定量を集めきるのは厳しそうだったから、足りない分は僕たちで集めるしかなさそうなんだ。」


「集める?2人でか?」


「さすがに二人では無理だ。純度の高い天蓋石というのは空の頂に近い場所にしか見つからないし、そういった場所には化生の類がわんさかいる。君が化生を相手取る間に僕が天蓋石を運ぶとしても満足がいくだけの量を持ち帰ることはできない。」


「ならどうするんだ?」


「ハル君の話では重要なのは天蓋石自体ではなく、天蓋石に蓄積されたエネルギーらしい。それを取り出すことが出来れば人員を割かずに必要な分を持ち帰れるらしいけれど、詳しいことは僕も分からないんだが...。」


そう言うとホンジョウはポーチから一枚の封を取り出した。


「この紹介状の受取人に任せればなんとかなるそうだ。」


「何とかなるって言ってもよ、それができたら天蓋石は今頃市場に溢れかえっているだろうさ。」


「全くもって同意だね。荒唐無稽極まりない話だと僕も思ったけれど...。」


彼は考え込むような顔つきで今度はポーチからこぶし大の宝石のようなものを取り出した。


「証拠を見せられては僕もハル君の言うとおりにするべきだと納得する他になかったよ。」


そう言うとホンジョウはその宝石を私に手渡した。


まるで空という存在そのものを閉じ込めたのではないかと思わせるほどにその宝石は青かった。


「これは...蒼穹核、なのか...?」


蒼穹核を目にした機会はさほど多くはないものの、その宝石はその色合いを覗けば蒼穹核に似ているように見えた。


「ご明察。これは蒼穹核の中に天蓋石の持つエネルギーを閉じ込めた宝玉だ。受取人殿はこれを作ることが出来るようだ。」


「...。仮にそんなとんでもないことが出来るとして天蓋石の採掘なんていう危険極まりない目的のために受取人とやらは同行してもらえるのか?」


「さぁ?」


「さぁってお前な...。」


「まぁ、何とかするとも。交渉は僕の得意分野だ。」


自信満々にホンジョウはそう言った。


私は呆れながらも、なら任せるとだけ口にした。

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聖剣王シリーズ べっ紅飴 @nyaru_hotepu

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