15歳で職業(ジョブ)が与えられる世界 2

@okosamalunch

15歳で職業(ジョブ)が与えられる世界 2

今日は年に1度の儀式の日だ。

15歳になった者が強制的に受けさせられる、未来を決める儀式。

それは「職業(ジョブ)」を神様から授けられるという不思議な儀式。


「私は『お嫁さん』が欲しいかな~? なんてね!」


幼馴染のアルレが少し恥ずかしそうにそんな事を言っている。


「そんな職業って聞いた事もないけど?」


とりあえずとぼけながら返答しておく。

俺の『お嫁さん』なのかな?と期待しながら。


……ちょっと良い所に就職出来そうな職業がもらえたら告白しちゃおうかな? 無理かな?





そんな事を考えながら二人で歩いてたら教会に到着した。


教会の周囲には沢山の人が居る。

受ける15歳の子供の親や、良い職業が貰えた子供が居たらスカウトしようとしている人達。

お祭り感覚で見に来ている人も居るみたいだ。

まぁ実際にお祭りみたいなものだし。屋台も出ているから、帰りに何か買おうかな?



集合の声が聞こえたので、急いで教会の入り口に向かった。

ここの階段で、一人一人を呼び、神父さんがその人の職業を神様に聞くらしい。

そして神様からの返答を大きな声で発表する。


今年は全部で23人だってさ。

名前順らしい。最初は幼馴染のアルレみたいだ。


アルレが階段に行くと、神父さんが何やらムニャムニャ言い出した。

するとアルレの頭がうっすらと輝き出した!

その光を神父さんが見てる。


「この娘、アルレの職業は『聖女』! 聖女です!!」


聖女だって?!

女の子が欲しい職業ランキングの上位の職業じゃないか!

まぁこのランキングって僕たちの街の子供達内で決めてるヤツだけどさ。

それでも凄い有名な職業じゃないか!


来ている大人達もざわざわしてる。

大事になりそうだな。


アルレは僕の所に来ようとしているけど、周囲に人が沢山集まってきて無理みたい。


そんな状態でも儀式は進んでいく。


「この娘、エリアの職業は『縫製』! 縫製です!」

「この子、ゴードンの職業は『会計』! 会計です!」

「この娘、タミンの職業は『鍛冶師』! 鍛冶師です!」


次々に発表される職業。

本人は当然ながら、周囲の大人も感心したり落胆したりしてる。

もうすぐ僕の番になる。ドキドキしてきた!!


「マージ、前に!」


とうとう僕の番が来た!


めっちゃドキドキしながら前に出る。


神父さんが何か言ってるが、全然頭に入ってこない!

ドキドキで変になりそう!


「この子、マージの職業は『ゴミ拾い』! ゴミ拾いです!」


………………ゴ、ゴミ拾い?

何それ! それって職業?! 

聞いた事も無いし、それが何の役に立つの?!


周りを見ると、僕を哀れんだような目、バカにするような目、目目目……。


何だよ! 僕だって貰いたくて貰った訳じゃないんだ! やめてよ、そんな目で見るのは!



見られるのが嫌で逃げ出そうとした時、それは起こった。


視界が、というよりも居る場所全てに霧がかかったような感じになったんだ。


そしてそこに浮いている一人の男性。

その瞬間、何故かは分からないけど、それが神様だって感じたんだ。

周りを見ると、誰もが正面を見て驚いている。

自分の前だけじゃなく、全員の前に居るみたいだ。


『私はこの世界の神であるレンダー』


ゆっくりと落ち着いた声が頭に響いてくる。

大きくもないけど、小さくもない声。耳で聞こえるんじゃなくて、頭に直接響いているみたい。


『過去、弱く簡単に絶滅しそうだった人類に、対抗する術として「職業」を与えてきた』


教会で神父さんから教えられた事のある話だ。


『人類だけではなく、獣にも恩恵を与えてきた』


賢い獣とか居るけど、そういう事だったのか!

神様がそうしてたんだね!


『しかし、その恩恵に対して不平不満を言うのは人類のみだった』


えっ?! そうなの?!


『獣だろうとモンスターだろうと知能はある。どの種族も恩恵に対して不平不満を考えなかった。人類を除けばな』


『人類は与えられた「職業」で繁栄をし、ここまで数を増やした。なのに不平不満を言う。

 そんなに優劣を付けたいのか。他者と比べたいのか』


胸が痛くなった。

確かに僕も「就職に有利な職業欲しいな」とか「アルレと釣り合うような職業欲しい!」とか「変な職業なんか与えないでよ!」とか考えてた……。




『もはや人類の不平不満は聞き飽きた。よって今まで与えてきた恩恵である「職業」は全て回収する。

 これから未来永劫与える事もない。私が人類の前に現れる事も無いだろう……』


それだけを告げて世界は元に戻った。


人類は、借りた力で発展した事、借りていた職業で差別し優劣を付けていた事、借りていた職業に依存していた事、借りていた職業は無くならない物だという勘違いを理解し、絶望した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

15歳で職業(ジョブ)が与えられる世界 2 @okosamalunch

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ