第3話 約束の地
夜が明け、ジョージとルークは再び歩き出した。カンザスまでの距離は残りわずかだが、これまでの旅は決して簡単なものではなかった。嵐や盗賊、荒野での過酷な生活が二人に重くのしかかっていたが、目の前の大平原が徐々にカンザスの境界線を示すものだと感じさせた。
「ルーク、もう少しだぞ。」ジョージは疲れた表情ながらも、少しの笑みを浮かべて言った。
ルークは肩で息をしながらも、その言葉に勇気づけられた。長い道のりを乗り越え、ようやく目的地にたどり着けるという希望が彼の足を前に進めた。
午後になると、遠くに小さな町が見えてきた。カンザス州の田舎町で、ルークが届けられるべき場所だった。ジョージは立ち止まり、町をじっと見つめた。
「ここで俺たちの旅も終わりだ、ルーク。無事に着いたな。」
ルークもその言葉に応えるように、少し安堵の息をついた。しかし、彼の心にはまだ旅の終わりに対する複雑な感情があった。ジョージとの日々は過酷であったが、同時に彼にとってかけがえのない経験でもあった。彼はこのままジョージと別れることが名残惜しかった。
「ジョージさん、ここまでありがとうございました。」
ジョージは笑ってルークの頭を軽く叩いた。「礼なんていらないさ。お前はよく頑張った。さぁ、最後の牛たちを届けに行こう。」
二人は牛を連れて町に入ると、待っていた受け取り手に無事に牛を引き渡した。仕事は完了し、ジョージとルークは旅の終わりを静かに迎えた。だが、その瞬間、ジョージの顔が少し曇った。
「さて、ルーク。これからお前のことだが……」
ルークはジョージの言葉に耳を傾けたが、その先は予想していなかったものだった。ジョージは一通の手紙を取り出し、それをルークに手渡した。
「これはお前のお父さんから預かったものだ。読んでみろ。」
ルークは手紙を受け取り、震える手でそれを開いた。そこには、ルークの父親からの別れの言葉が書かれていた。彼はもう戻らない、ルークをジョージに託す、という内容だった。彼の父は戦争で命を落とし、その事実をジョージはルークに伝えるべきかどうか悩んでいた。
「お前のお父さんは……勇敢な人だった。だが、俺にお前を任せてくれた。」
ルークは涙をこらえ、黙ってジョージの言葉を聞いていた。突然の事実に戸惑いながらも、彼は理解しようとしていた。
「これからお前はどうする?」ジョージは優しい目でルークを見つめた。
ルークはしばらく黙ったまま考えた後、ゆっくりと口を開いた。「ジョージさん、俺も一緒に旅を続けたいです。もっと強くなりたい。お父さんのように。」
ジョージは驚いたが、すぐに微笑んだ。「そうか。だったら一緒に行こう。これからの道は決して楽じゃないが、お前なら乗り越えられる。」
こうして、ルークはジョージと共に新たな旅へと踏み出す決心をした。荒野での試練は終わったが、彼の成長はまだ始まったばかりだった。
その日の夕方、二人は町の酒場に立ち寄り、久しぶりに温かい食事をとった。ジョージは静かに酒を飲みながら、これからの旅のことを考えていた。カウボーイとしての仕事は続くが、ルークとの旅はどんなものになるのだろうか。彼にとって、ルークはただの同行者ではなく、弟のような存在になりつつあった。
「これから俺たちはどこへ行くんですか?」ルークは少しの不安と期待を込めて尋ねた。
ジョージは空を見上げ、広がる星空を見つめた。「さぁな、ルーク。この広い大地がどこへ導いてくれるかは、俺たち次第だ。」
ルークも同じように空を見上げた。夜空に輝く無数の星たちは、これからの道のりがまだまだ続くことを示しているかのようだった。
「でも、もう怖くないです。ジョージさんと一緒なら、どんな困難だって乗り越えられる気がします。」
ジョージは無言でうなずき、空気が冷たくなり始めた夜の風を感じた。荒野での過酷な旅路を思い返しながら、彼は心の中でルークの成長を確信していた。彼のこれからの人生は、強く、そして自立したものになるだろう。
「よし、明日からは新しい仕事だ。次はもっと大きな牛の群れを扱うことになるかもしれんぞ。」
「本当ですか?それはすごい!」ルークの目が輝いた。
こうして、ジョージとルークは新たな冒険への一歩を踏み出す。カンザスの大地を離れ、彼らの旅はまだまだ続くのだ。
テキサスの道と約束 にゃーQ @inkyasennin
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