違いと弊害

白鷺(楓賢)

本編

精神障害にはさまざまな種類があり、その中でも双極性障害と境界性パーソナリティ障害(BPD)はよく混同されることがありますが、実際には異なる特徴と弊害を持っています。どちらも日常生活に大きな影響を及ぼす厳しい障害ですが、それぞれ異なるパターンで感情や行動が不安定になります。このエッセイでは、両者の違いと、それが生活にどのような弊害をもたらすかについて考察していきます。


### 双極性障害とは

双極性障害は、気分の極端な変動が特徴です。これは躁状態(ハイの状態)と抑うつ状態(ローの状態)が周期的に訪れるもので、感情の波が大きく変動します。躁状態では、異常なほどのエネルギー、過剰な自信、無謀な行動が見られる一方、抑うつ状態では極度の悲しみや無気力が襲います。これらの状態の移り変わりは予測がつかないことが多く、生活のリズムや人間関係、仕事に大きな影響を及ぼします。


### 境界性パーソナリティ障害とは

一方で、境界性パーソナリティ障害(BPD)は、感情が非常に不安定で、人間関係や自己イメージ、衝動的な行動に困難を抱える障害です。BPDでは、特に対人関係において感情が激しく変動し、相手に対する理想化と失望感の間を揺れ動くことがあります。また、見捨てられることへの強い恐怖や自己のアイデンティティの不確かさから、過度な依存や急激な反発を見せることがあります。


### 違いの本質

これらの障害の大きな違いは、感情の変動の「周期」と「対人関係」への影響です。双極性障害の感情の変動は内因性で、気分の波が時間の経過とともに変わるのに対し、BPDの感情変動は主に対人関係や外的な出来事に強く依存します。双極性障害の患者は、気分の波が自らの意思とは関係なく訪れることが多いのですが、BPDの場合は、特に対人関係でのトラブルや見捨てられることへの恐怖が感情の急激な変動を引き起こすことが多いです。


また、双極性障害では、躁状態と抑うつ状態の期間がそれぞれ数週間から数ヶ月続くことがありますが、BPDの感情変動は1日のうちに何度も起こりうるため、即座に気分が切り替わることが特徴的です。BPDの感情の激しさは、周囲の人々にとって非常に負担となることが多く、特に近しい人間関係において大きな摩擦を引き起こします。


### 生活への弊害

どちらの障害も、日常生活に深刻な影響をもたらします。双極性障害では、躁状態での無謀な行動や金銭問題、社会的なトラブルが発生しやすく、逆に抑うつ状態では仕事や家庭生活に支障をきたすことが多いです。このような感情の波の間でバランスを取ることが難しく、安定した生活を維持することが困難になります。


BPDの患者は、特に人間関係において大きな弊害を感じることが多いです。極端な依存や衝突が繰り返されることで、家族や友人との関係が破綻することがしばしばあります。さらに、自己のアイデンティティが不安定なため、何を信じるべきか、どう生きるべきかが分からなくなり、日々の生活に対する方向性を見失うことも多いです。


### 結論

双極性障害と境界性パーソナリティ障害は、どちらも非常に困難な障害であり、感情の不安定さが個人と周囲に深刻な影響を与えます。それぞれの障害は異なるメカニズムで感情の波を引き起こしますが、その弊害は生活全般にわたって深刻です。違いを理解することは、適切な治療やサポートを受けるために重要です。これらの障害と向き合いながら、自分自身を理解し、少しでも穏やかな生活を取り戻すためには、医療的なケアと周囲の理解が欠かせません。

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